輸送業では、慢性的な人手不足により、業務効率化が急務となっています。輸配送管理システム(TMS)を導入することで、輸配送業務の効率化が可能です。そこで本記事では、輸配送管理システム(TMS)の概要や機能のほか、導入によって得られる利点について詳しく解説していきます。
輸配送管理システム(TMS)とは
輸配送管理システムとは、製品が物流センターから出荷された後、届け先までの輸配送を統括的に管理するシステムです。「Transport Management System(トランスポート・マネジメント・システム)」の頭文字を取ってTMSとも呼ばれます。導入の目的は、配送計画や進捗管理、積付や運賃計算といった業務をシステム管理することです。
物流コストの大半を占めるのは輸送費です。公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「2019年度 物流コスト調査報告書」によると、全業種における物流コストの構成比は輸送費が58.2%、保管費が15.8%、その他(包装費、荷役費、物流管理費)が26.0%となっています。したがって、業務改善のためには、配車計画や運行管理といった輸配送業務をいかに効率化するかが重要です。そこで、有効な手段として注目されているのが輸配送管理業務のシステム化です。
輸配送管理システム(TMS)が必要とされる背景
輸配送管理システム導入が必要とされる背景には、物流業界が抱えている大きな問題があります。それは深刻な人材不足と就業者の高齢化の2つです。
物流業界は、調達から製造、在庫管理、配送、販売、消費というサプライチェーンを構成する重要な要素であり、恒久的な需要が見込まれる業界と言われています。しかし、業界全体が慢性的な人材不足と就業者の高齢化という問題を抱えているため、需要に対応できる人的リソースがありません。そのため、長時間労働も課題となっており、業務効率化による就労環境の改善が求められています。物流業界が抱える慢性的な人材不足と就業者の高齢化という問題を解決するためには、輸配送管理システム(TMS)の導入が必須といえるでしょう。
輸配送管理システム(TMS)の機能
輸配送管理をシステム化するメリットは、さまざまな業務をITシステムで管理することで情報を可視化できる点にあります。業務フローが見えることで、業務構造全体を俯瞰的に把握できるため、事業の統合戦略の構築が可能です。具体的に輸配送管理システム(TMS)が、どのような機能をもっているのかを解説します。
配送計画機能
配送計画の最適化は最も重要視される機能のひとつです。配送先が多くなればなるほど人の手による計画の設計は困難になり、配送管理業務の負担が増加するでしょう。配送先の組み合わせや交通状況によって適切なルートが変わるため、配送計画の最適解を導くのは困難です。
輸配送管理システム(TMS)を利用すれば、最適な輸配送コースを自動的に作成してくれます。車両とドライバー、積載量と配送先、配送時刻と道路交通状況など、さまざまな条件をシステムに入力するだけで、最小の労力で最大のリターンを得られるルート選択が可能になります。このような無数の選択肢の中から最適解を導くといった作業は、ITシステムの最も得意とする分野といえます。
進捗管理機能
最適な配送計画が立案されても、予期せぬ交通事故などのトラブルに巻き込まれ、配送計画にズレが生じることも考えられます。そのため、配送中の車両に関する情報をスマートフォンやタブレットといったデジタルデバイスと連携させて管理することで、車両の位置情報や運転状況などをリアルタイムに取得する機能も重要です。この進捗管理機能によってフレキシブルな対応が可能になります。また、こうした情報からフィードバックを得ることで、配送計画のさらなる精度向上にもつながります。この機能は、動きや状態を管理するという点で「動態管理機能」、もしくは車両に関する情報を管理するという点で「車両管理機能」とも呼ばれます。
運輸管理機能
配送運賃は一般的に、地域間の運賃表、運送時間、運送距離という3つのパターンで計算されます。従来は、知識と経験豊富な従業員や、表計算ソフトの操作に長けた人物が行う業務でした。しかし、それでは業務の属人化が起こり、従業員が退職や休職した場合に対応が困難になります。
こうした運賃管理や請求管理の最適化はITシステムの得意分野です。運賃計算を行う「運賃管理機能」や、請求・入金の管理を行う「請求管理機能」といった運輸管理機能を活用することで、運輸管理業務の効率は大幅に向上するでしょう。
積付計画機能
配送を効率的に行うためには、配送ルート、配送時間、荷物の上積・下積制約、重量制約、混載制約など、さまざまな条件を考慮した積付計画が必須です。配送ルートから逆算し、安全性と荷物の降ろしやすさも考えて積む必要があります。積付計画機能を活用することによって、必要な車両台数や最適な積み方を自動で計算できるため、効率的な積付計画の立案が可能です。積付計画は多くの時間と手間を必要とし、またこの作業次第で配送効率が大きく変わる重要な業務です。したがって、積付計画機能を備えたシステムの導入で、業務効率の大幅な改善が期待できます。
クラウド型の輸配送管理システムが主流
ITシステムを構築するプラットフォームは「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。オンプレミス型とは、自社にサーバーやネットワーク機器を設置してシステムを運用・管理する形態です。クラウド型とは、ベンダーが提供するシステムをインターネット経由で利用する仕組みで「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の頭文字を取ってSaaSと呼ばれます。
輸配送管理システム(TMS)は、クラウド型のSaaSが主流です。SaaSは月額課金制のサブスクリプションモデルが多く、オンプレミスと比較すると導入・維持にかかるコストを大幅に削減できるというメリットがあります。また、インターネット環境さえあれば申し込み後、カスタマイズを行えば、すぐに導入できるというのも大きな利点でしょう。輸配送管理のシステム化は物流戦略のカギとなる重要な要素です。したがって、自社の事業戦略に合ったシステムの選択と導入が求められます。
まとめ
物流業界は需要の拡大に反して慢性的な人材不足などの課題が多く、業務効率化が急務となっています。そこで重要となるのが輸配送管理システム(TMS)の導入です。TMSは物流業務の効率化と生産性の最大化に貢献し、業界が抱えている問題解決の一助となるでしょう。ぜひ、今回の記事を参考にして自社の事業戦略に活用してください。