フィンテックは既存の金融サービスをIT技術を用いて変革を行ったり、新たなサービスを創出したりする役割を持ちます。
本記事では、フィンテックの概要や関連サービス、注目されているテクノロジーの種類をまとめ、今後の動向や将来性を解説します。
FinTech(フィンテック)とは
FinTech(フィンテック)とは、金融のFinance(ファイナンス)と技術のTechnology(テクノロジー)を合わせた言葉です。銀行や証券などの金融サービスにIT技術を用いて変革をもたらす動きの総称であり、近年身近になったスマートフォン決済などもその一例です。フィンテックは2000年代前半あたりからアメリカで使われており、金融機関に向けたサービスを提供するITベンダーなどがフィンテック企業として台頭していました。
近年では、AIやクラウドサービスなどの新しいシステムと既存ビジネスを掛け合わせることで、新たな価値を生み出す動きが活発化しています。
フィンテックが拡大する背景
フィンテックが拡大した背景には、大きく分けて2つの要因があります。ひとつは「情報通信技術(ICT)」の進化です。モバイルネットワークである「3G」のサービスが2001年に始まり、その後スマートフォンの普及もフィンテックの拡大に大きな役割を果たしました。
次に、「金融サービスの分権化」です。金融機関を介さずに取引可能な仮想通貨「ビットコイン」を皮切りに金融サービスの分権化が進み、これまで金融サービスの中心であった銀行や証券会社以外の企業が参入できるようになったことも、フィンテックが拡大する要因です。
フィンテックに関連する10のサービス
近年、フィンテックに関連するサービスは増え続けており、それはお金の管理や支払いに関するものだけでなく、資産運用などのサービスも含まれます。以下で関連する10のサービスを紹介します。
- キャッシュレス決済
クレジットカード決済やQRコード決済など、紙幣や硬貨などの現金を使わない決済手段を指します。情報技術を活用したフィンテックならではのサービスです。 - 仮想通貨(暗号資産)
基本的にインターネット上で取引を行う、実体のない仮想の通貨のことです。専門の取引所で円やドル、ユーロなどと交換し入手できます。フィンテックで用いられる「ブロックチェーン」という技術が活用されています。 - インターネットバンキング
インターネット上にある銀行口座で、店舗に出向かなくても預金や振込などの手続きが行えるサービスです。ポータルサイトで、時間や場所に関係なく利用できるのがメリットです。 - クラウドファンディング
インターネット上で個人から資金を集め、事業やプロジェクト達成を図る仕組みです。その目的は幅広く、商品開発から社会支援活動まで多岐に渡ります。購入方式・寄付方式・融資方式・投資方式の4つの方法があります。 - ソーシャルレンディング
クラウドファンディングの融資方式に当てはまり、資金調達をしたい法人と資産運用を目的とする個人投資家をマッチングするオンラインのサービスです。審査などの様々な手続きを担います。 - PFM(個人資産管理)
個人の資産を管理するソフトウェアの総称であり、PCやスマートフォンで行う家計簿管理もその一例です。銀行口座やクレジットカードと連携できるサービスもあります。 - クラウド会計ソフト
企業で利用される会計処理に特化したソフトウェアです。請求書などの紙ベースで行っていた業務の効率化およびペーパーレス化が実現できます。 - ロボアドバイザー
投資や資産運用のための分析ツールが搭載されたサービスです。資産運用に関するアドバイスや売買の自動化などのサービスが受けられます。初心者でも始めやすいサービスとして利用されています。 - 金融情報
テクノロジーを利用して、金融に関する膨大なデータやニュースを収集・分析することもフィンテックの一部です。経済情報や物価指数などの情報を経営に役立てられます。 - 送金
個人の間で送金ができるサービスもフィンテックの一部です。例えば、同じ決済システムを利用することで、1円単位でも簡単に送金できます。
フィンテックで注目されるテクノロジー
フィンテックで注目されているテクノロジーにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「ブロックチェーン」「ビッグデータ・AI・IoT」「タッチレス決済」の三つに分けて解説します。
ブロックチェーン
ブロックチェーン技術とは、ネットワーク上にあるPCなどの端末同士を、中央管理体を介さずに直接接続して情報を管理する技術です。取引記録等の情報は暗号技術を用いて分散的に処理・記録され、「ビットコイン」などの仮想通貨取引に用いられています。
取引履歴は接続された端末間で共有され、データの破壊もしくは改ざん等は非常に困難です。そのため、不正取引が起こりにくいことが特徴です。また、中央管理体を持たずに端末同士で管理されるため、コストを低減できます。
ビッグデータ・AI・IoT
ビッグデータとは膨大で多種多様なデータ群のことです。高い生成頻度や正確性を持ち、高価値であるという特徴があります。これらのデータを収集・蓄積・分析することで大きな成果を得られますが、人間の手では全体の把握が極めて困難です。
そこで、AIの特徴である解析機能を利用することで、ビッグデータの有効活用が実現できます。また、IoT(モノのインターネット)技術を用いて身の回りのあらゆるデータを収集・蓄積することで、多くの分野でデータの利活用が期待されます。
タッチレス(非接触)決済
タッチレス(非接触)決済とは、決済端末にICカードおよびスマートフォンなどをかざすことで、決済が完了するシステムです。無線通信による電子決済であり、その名の通り何も触れずに決済できることが特徴です。
現金を持ち歩かずに済み、金銭の受け渡しも行われないため、決済手続きが効率化します。代表的なものに、ICチップが搭載された電子マネーやクレジットカードがあります。
フィンテックのこれから
近年、急成長を遂げているフィンテックについて、今後の動向を踏まえた将来性について解説します。
フィンテックの市場規模と将来性
株式会社矢野経済研究所が行った国内フィンテック市場に関する調査では、2018年度の市場規模が2,145億円であり、2022年度の予測は1兆2,102億円にまで拡大するとされています。
また、フィンテックに関連するサービス別にみてみると、PFM(個人資産管理)に分類される家計簿アプリなどの資産管理システムの分野は、継続性の観点からこれからも拡大していくと考えられています。また、ソーシャルレンディングに加え、AIスコアを用いるサービスの登場により、融資分野でもさらに拡大が見込まれています。
フィンテック時代に向けて
急成長を遂げ、これからも拡大していくとみられるフィンテックですが、日本ではまだまだ課題が山積みです。
そこには、あらゆる情報のデジタル化やデータ利活用のためのインフラ整備、さらには、新たな技術およびサービスに対応した法整備などが含まれます。
フィンテックが経済や社会全体に与える影響はこれから本格化すると考えられています。来たるフィンテック時代に向けて、世界の動向を把握しつつ、官民が一体となり課題に対応することが重要です。
まとめ
フィンテックは、既存の金融サービスの利便性向上や、新たな金融サービスの創出に大きな成果をもたらします。PMF(個人資産管理)を始めとする、あらゆる技術を駆使した金融サービスが拡大しています。フィンテックの導入は、今後の金融業界の成長において重要なポイントになることが見込まれるため、時代の潮流に即した技術や体制の確立に備えましょう。