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ラストワンマイルとは? 物流・交通それぞれの課題や対策を紹介

顧客に商品やサービスを届ける最後の区間となる「ラストワンマイル」の改善に取り組むことは重要な課題です。この記事では、ラストワンマイルの概要、物流業界や交通業界におけるラストワンマイルの課題について解説した上で、それらを解消する方法について紹介します。

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ラストワンマイルとは

ラストワンマイルは、直訳すれば「最後の1マイル(約1.6キロメートル)」という意味です。元々は通信業界で使用されていた言葉で、企業や消費者に通信環境を接続するための最後の区間のことを指します。現在は通信業界に留まらず、物流や交通業界で多く使用される用語です。特に物理的な距離を意味するのではなく、お客様に商品やサービスが届くまでの最後の接点を指します。

例えば宅配やテイクアウトを提供するサービスは、消費者のラストワンマイルへのニーズに対応した業態です。ネット通販大手では、送料無料や翌日配達などの配送サービスを充実させたり、自社の物流サービスを構築したりすることで、ラストワンマイルを縮めるようにサービスを強化しています。一方で、倉庫管理や商品の発送は自動化が進んでいるにもかかわらず、ラストワンマイルは人力での配送に頼っているのが現状です。

ラストワンマイルの主な課題

ラストワンマイルは特に物流や交通など、日常的に人や物の移動に関わる公共性の高い業界において、差し迫った課題を抱えています。物流業界と交通業界それぞれにおけるラストワンマイルの主な課題について解説します。

物流業界のラストワンマイル

物流におけるラストワンマイルは、最寄りの集配事業所から配達先までのことを指し、顧客と接点を持つところです。ネット通販の利用が一般的になり、ネットショップは年々増加しています。とりわけ新型コロナウイルス感染拡大の影響によってライフスタイルの変化が加速し、店舗で商品を購入するよりネットで注文して自宅や勤め先に配送を頼む方が便利だと考える方も増えています。以上の要因によって物流業界で浮上しているラストワンマイルの主な課題は3点あります。

まず、配送貨物の取扱量が増加したことです。送料無料や当日配達など、消費者ニーズに合わせた物流サービスの競争によって、消費者は宅配で手軽に商品を注文するようになり、好きな時に荷物を受け取れるようにもなりました。お中元やお歳暮などの繁忙期だけでなく、時季を問わず宅配荷物が増加しているのです。

次に、ドライバー不足と高齢化が挙げられます。宅配貨物の取扱量が急増しているにもかかわらず、ドライバーの人員不足が深刻化しています。配送料無料などのサービス拡充で利益率が低下したことにより、仕事量に見合った配送料金になっていないなどの理由が考えられます。若手の人材不足によりドライバーの高齢化も進んでいるのです。

3点目は労働環境の悪化です。再配達率の増加が宅配業界で大きな問題となっています。国土交通省が2021年10月に実施した調査では、宅配便の再配達率は約11.9%と高い水準で推移しています。少ない人員のドライバーで同じ荷物を何度も配送することになり、生産効率が低下するほか、長時間勤務につながるなど労働環境の悪化を招くのです。

交通業界のラストワンマイル

交通業界におけるラストワンマイルは、最寄りの鉄道駅やバス停から、最終目的地である自宅までの区間を指します。観光地であれば、目的の観光地まで観光客を移動させる最後の交通手段が該当します。交通業界におけるラストワンマイルの主な課題は、以下の3点が挙げられます。

まずは観光地における足の確保です。最寄りの駅や船着き場などから、観光地や宿泊先などの目的地に到着するまで、場合によってはタクシーを利用するしかないことがあります。バスなどの公共交通機関が整備されていなければ、観光客は交通に便利な観光地の方を選ぶかもしれません。観光客を誘致するにはラストワンマイルの整備は必須です。

次に、過疎化や高齢化が進む地域の交通インフラ確保が挙げられます。三大都市圏や中核都市は別にして、交通機関のインフラが十分整備されていない地域は少なくありません。地方ほど人口減少と少子高齢化も進んでおり、近年では高齢者ドライバーの免許返納も推進されているため、地方の交通インフラ確保は喫緊の課題です。

3点目は、地方に限らず都市部でも公共交通の維持が困難なことです。人口減少と高齢化を背景に、通勤・通学する世代の利用者が減少しているため、公共交通機関の経営が苦しくなっています。また、バス業界では運転手の人手不足も問題となっているのです。住民にとっても、移動の足が確保できないと生活の利便性が悪くなるため、ラストワンマイルの確保が欠かせません。

ラストワンマイルの問題を解消するための方法

物流業界や交通業界において課題となっているラストワンマイルは、どのような方法で解決すればよいのでしょうか。ここでは具体的な解決方法として、「輸配送管理システム」「最新テクノロジーの利用」「シェアリングエコノミー」を紹介します。

輸配送管理システム

輸配送管理システム(TMS:Transport Management System)は、物流管理をトータルに管理するツールです。配車や配送計画、荷物の集配状況、進捗管理、費用計算、請求書管理など、あらゆる物流業務を総合的に効率化します。TMSを導入することにより、人員の適切な配置や、配車の積載率、荷物の集配状況などを把握し、それぞれのフェーズで最適化できます。これまではベテランスタッフの経験や勘に頼っていた配送ルートの効率化や、積載効率を向上させる積み込み方法などを誰でも行えるように標準化できるのです。

これによって車両費・燃費のコスト削減につながり、物流コストの大半を占める人件費や配送コストを削減し、無駄のない運行が可能になります。近年、小口配送や請負が急増している物流業界は人員管理業務も複雑化しています。TMSは日報作成などアナログな業務をデジタル化するため、業務の効率化を図れるのです。

最新テクノロジーの利用

ラストワンマイルの解決策として、AIやIoTなどの最新テクノロジーを活用した技術の導入も始まっています。具体例としては、自動運転車や配送ロボ、電動キックボード、ドローン配達、自転車シェアなどです。大手物流会社では、大手IT企業と共同開発した次世代宅配サービスの実用化に向けた取り組みが進められています。保管ボックスを設置した専用電気自動車がAIで最適化した配送ルートを通り、事前に指定した時間と場所に届けるまで自動化されます。10分単位で時間指定ができるなど、人間のドライバーより正確な時間での配達が可能です。

交通業界においては、地方の観光客や高齢者の生活の足として、自動運転車や自動運転タクシーの導入が検討されています。欧米で人気が高い電動キックボードは、規制緩和やルール作りを前提としての実証実験が行われています。自転車シェアリングサービスは、ICカードやスマートフォンによる認証システムによって気軽に他の人と自転車をシェアできるシステムです。

シェアリングエコノミー

民泊サービスなどで注目を集めているシェアリングエコノミーは、モノや場所、スキルなどを基本的に個人間で取引するサービスです。利用者側は仲介業者を通さないため、仲介手数料がかからず、低料金でモノやスキルなどを手に入れるというメリットがあります。提供者側のメリットとしては、空き時間や遊休資産、活用していないスキルを有効活用し、マネタイズできる点が挙げられます。

シェアリングエコノミーの経済規模は今後も成長すると予測されています。特にラストワンマイルの分野においては、登録した配達員が空き時間を活用して荷物を届ける配送クラウドソーシングや、自動車を共同使用するカーシェアリングなどのサービス導入が進められています。これらは、物流業界や交通業界における人手不足の解決策として注目されているのです。

まとめ

ラストワンマイルは、物流業界ではモノやサービスを届ける顧客との接点となり、交通業界では移動の目的を完了させる役割を持ちます。物流業界では「取扱量の増加」「ドライバー不足」「労働環境の悪化」、交通業界では「観光地の足の確保」「地方の交通インフラ整備」といった課題があります。解決策としては、輸配送管理システムや最新テクノロジーの活用、シェアリングエコノミーなどが考えられるでしょう。

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