働き方改革が進むにしたがい、従業員満足度に重きを置く企業が増えています。しかし漠然としたイメージしかなく、アンケートを実施して集計するだけで終わっている場合も少なくありません。
本記事では、従業員満足度の概要やメリット、調査方法から、高めるための具体的な施策まで詳しくご紹介します。
従業員満足度とは
従業員満足度は英語で「Employee Satisfaction(ES)」と呼ばれ、1920年代にアメリカの管理学者ロバート・ホポックが提唱した概念です。その名の通り、職場環境や人間関係、福利厚生や給与などについて、従業員がどの程度満足感を抱いているかを示す指標です。
厚生労働省が平成27年度の調査をもとにまとめた資料によると、従業員満足度と顧客満足度両方に重きを置く企業は、顧客満足度のみに重きを置く企業より、売上高や営業利益率が増加していました。つまり、利益を求めるだけでなく従業員を大切にする企業は、モチベーションや生産性が向上し、結果につながることが裏付けられたのです。
さらに、人材確保についても前者が後者より「量・質ともに確保できている」と答えた割合が高くなっています。最近は少子高齢化が進み労働人口が減っているため、優秀な社員が離職してしまうと匹敵する人材もなかなか見つかりません。そういう意味において従業員満足度は、企業の存亡すら左右する重要な指標と言えるでしょう。
従業員満足度を高めるメリット
では、従業員満足度を向上させるで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3点についてくわしくご紹介します。
生産性向上
正当に評価されるため従業員満足度の高い職場では、従業員が主体的に仕事に取り組みます。それにより生産性も向上し、企業の業績アップにもつながるでしょう。
また、積極的に意見を出し合える風通しのよい職場では、従業員同士のコミュニケーションも活発です。そのため社内の課題解決や新規事業の提案も出やすく、組織のイノベーションも期待できます。
人材定着
福利厚生や職場環境が整った企業では離職率が低く、優秀な人材が定着しやすくなります。また、働きやすい企業は社員からの紹介での採用も多くなるため、就職情報誌掲載費などの採用費用や新入社員の教育費用などを削減できます。
顧客満足度改善
従業員満足度が高いと、余計なストレスなく仕事に集中できるため、商品やサービスの質も向上します。
また、愛社精神が育まれ「自社の商品やサービスを好きになってほしい」という気持ちも芽生えるため、結果的に顧客満足度の改善にもつながります。
従業員満足度を調査する方法
従業員満足度の調査は、主にアンケートによって行われます。企業によって、設問の数は数十問から百問超にいたるまでさまざまで、内容も仕事内容や職場環境、上司や処遇についてなど多岐にわたります。
従業員満足度の調査に当たっては、目的や対象者、回答方法やスケジュールを事前に明確にしておく必要があります。
「従業員満足度が重要」という認識ばかりが一人歩きして、調査を行うこと自体が目的化している企業も少なくありません。しかし、従業員満足度調査は「離職の原因究明」や「職場環境の問題点を探る」など、目的がはっきりしていてこそ、効果的に活用できます。目的によっては正社員のみに対象を絞ったほうがよい場合もありますし、または非正規労働者も含めて全体を調査したほうがよいこともあるでしょう。
調査方法は紙かWebどちらも可能です。どちらにしても匿名性が確保されていると、マイナス面も含め正直に答えやすくなり、より実態に即した効果的な調査になるでしょう。調査をした後も、誰が結果を分析してどのような形で知らせるのか、スケジュールも含めて決めておくようにしてください。
従業員満足度の調査は、結果を分析して職場の課題を洗い出し、改善することを目的に行うものです。くれぐれも調査して終わりにならないよう、調査結果を誰がどのように施策に落とし込むかについても、あらかじめ道筋をつけておくようにしましょう。
従業員満足度に関係する要素
主にアンケートで調査される従業員満足度ですが、それはどのような要素で構成されているのでしょうか。主なものは以下の4つです。
企業ビジョンへの共感
企業のビジョンは従業員が働くモチベーションを保つために非常に重要です。目先の利益や売上目標ばかりが掲げられ、数字に追われるような働き方だと、従業員は疲弊するばかりで満足感は得られないでしょう。
一方、自社の商品やサービスは社会にどう役立たせていけるのか、目指すべき将来のビジョンをはっきり示していれば、従業員は企業に所属していることに誇りを持てます。そして数年後、数十年後の未来を見据えながら、能動的に業務に取り組めるでしょう。
マネジメントへの納得感
また、上司のマネジメント能力も重要な要素です。上司の指示内容や評価、フィードバックに納得がいっているかは、従業員満足度に大きく影響します。
部下の意見を聞かない高圧的な上司はもちろんいけませんが、部下に任せっきりで放置する態度もよくありません。部下と適切にコミュニケーションを取り、ある程度裁量を与えながら、必要な時に適宜アドバイスを行うことが重要です。そうすると従業員の承認感が高まり、満足度も向上するでしょう。
仕事の貢献度や影響度
自分の仕事が社会や企業に役立っているという実感も、従業員満足度を左右します。例えば接客や営業など、相手の反応や成果が分かりやすいものは満足感が得やすいですが、管理業務や事務といったルーティーンワークは達成感が得にくい傾向があります。そのため、ミスがないことが当然という業務でも、適切に評価が受けられる制度や職場環境づくりが大切です。
職場の環境や人間関係
職場は多くの時間を費やす場所なので、快適な環境でなければ従業員満足度も低下してしまいます。特に最近はワークライフバランスが重視されているため、有給休暇やリフレッシュ休暇など福利厚生を充実させ、活用を促すようにしましょう。
また人間関係が悪くても、職場で過ごす時間が居心地の悪いものになってしまいます。モラハラやセクハラなどハラスメントをなくすのはもちろんのこと、上司と部下、同僚間で忌憚なく意見を言い合えて相互連携が取りやすい、オープンで風通しのよい雰囲気づくりが大切です。
従業員満足度を高めるための取り組み例
では、企業は従業員満足度を高めるため、実際にどのような取り組みを行えるのでしょうか。以下の提案をヒントにしてみてください。
コミュニケーション改善の仕組みをつくる
コミュニケーションが活発な職場は従業員満足度が高い傾向がありますが、日々の業務の中では関わる人が限られており、コロナ禍もあって交流の機会はさらに減っています。
そこで、社内SNSやチャットを導入して気軽にやり取りができる仕組みを作ったり、他部署やチームとの食事会などで交流の場を作ったりして、コミュニケーションを改善する工夫を行えます。他部署・チームとの交流は新たなビジネスが生まれるきっかけにもなるでしょう。また、普段の人間関係に縛られない、気軽な相談相手ができる点でもメリットがあります。
福利厚生を充実させる
従業員の暮らしや将来設計に直結する、福利厚生を充実させることも重要です。住宅手当などの各種手当や有給休暇に加え、女性が出産後も働けるように産休・育休を取得しやすい職場づくりを進められます。
また、資格取得などキャリアアップに対するサポートや、人間ドック費用補助やジムやマッサージ機、休憩スペースの設置など健康に対する支援なども考慮できます。どんな福利厚生があればありがたいのか、従業員の意見も聞きながら導入を検討しましょう。
働き方・評価方法を見直す
従業員が働きがいを感じられるよう、働き方や評価方法を適宜見直すことも大切です。働き方に関しては、ワークライフバランスに配慮し、育児・介護中の従業員でも無理なく働き続けられるように時短勤務や在宅勤務を選択できるようにします。制度をつくるだけでなく、他の従業員の理解を得やすいように、余裕のある人材配置や業務配分も求められるでしょう。
また評価に関しても、従業員が正当に評価されていると感じられる、公平性が担保された制度を整えなければなりません。成果などを数値化し客観的な評価をする人事評価システムの導入や、面談やヒアリングの実施、部下が上司を評価する制度の導入など、現在多くの企業が直属の上司からの評価のみに頼らない工夫を行えます。
また、社内で年功序列や男女間格差など、旧態依然とした慣習が残っているのであれば、それをなくしていく取り組みも必要でしょう。
まとめ
従業員満足度は優秀な人材の確保や生産性向上につながるため、結局は企業の利益にも直結します。「Microsoft Viva」は、従業員の福利厚生の充実や学習支援を行う、Microsoftの新しいサービスです。従業員満足度を高めるためにも役立つツールなので、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。