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DX白書2021とは? 日米比較調査からDXの今後を考える

企業がDXを推進するにあたり、日本企業の現状や課題を認識することは非常に重要です。そして、それにはIPAが公表した「DX白書2021」が参考になるでしょう。この記事では本レポートに基づき、要点となるDX戦略や人材、技術についてポイントをまとめてご紹介します。

DX白書2021とは? 日米比較調査からDXの今後を考える

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DX白書2021とは

「DX白書2021」とは、2021年10月に経済産業省配下のIPA(情報処理推進機構)が公表した、DX推進に関するレポートです。具体的には以下の4部で構成され、日米の企業におけるDXの考え方や取組状況を把握できます。

  • 第1部「総論」
  • 第2部「DX戦略の策定と推進」
  • 第3部「デジタル時代の人材」
  • 第4部「DXを支える手法と技術」

(引用元:https://www.ipa.go.jp/files/000093699.pdf

DXへの取組状況やDX戦略のポイント、人材、技術といった要点を押さえることで、DX推進の課題や自社の方針なども見えてくるでしょう。

DX白書『第2部1章 DXへの取組状況』のポイント

DX白書2021の第2部1章では、「DXへの取組状況」の調査結果として、日米企業のDXに関する「取組状況」「取組時期」「取組による成果」などが紹介されています。たとえば、日本企業では米国に比べてDX化が遅れており、業種別では製造業で大きな差が開いています。米国企業に比べて日本企業のDXが遅れている原因としては、主に「組織間の協調がうまくいっていないこと」や「IT人材が不足していること」などが考えられます。

DX白書『第2部2~5章 DX戦略の策定と推進』のポイント

第2部1章に引き続き、2章から5章までは「DX戦略の策定と推進」の本題についてくわしく紹介されています。

1.DX戦略の全体像と立案のポイント

DX戦略の出発点は、DXに取り組む目的やビジョンを明確化することです。そして、外部環境の変化による影響を考慮しながら、取組領域や実行プロセスを策定し実行します。その際、人材やITシステム、データといった経営資源の活用が鍵となるでしょう。そして、これら一連のサイクルをトライ&エラーで早く回すことで、成功の可能性が高まります。

2.DX推進プロセス

DX戦略にあたっては、自社が目指すビジョンを達成するために、外部環境の変化を察知し、ビジネスへの影響に鑑みて取組領域を定めることが不可欠です。とくに「パンデミック」や「技術の発展」といった外部環境の変化を機会として捉えている企業は、日米で認識の差が大きく広がっています。DXを進めるためには、社会の課題を解決に導く「新たな価値創出」と、既存事業の見直しによる「生産性向上」「働き方改革」を並行してアプローチしていくことがポイントです。

3.組織的なDX推進

4章では、DXを組織的に進めることの重要性について解説されています。経営者やIT部門、事業部門の協調が「十分にできている」と回答した企業は、米国企業で全体の40.4%だったのに対し、日本企業ではわずか5.8%にとどまり、社内での協調体制について整っていない状況がうかがえます。DXによる目標を達成するためには、経営層やIT部門、事業部門などが一丸となり、現状に対する危機意識やDX推進の指針などの認識をしっかり合わせる必要があるでしょう。

4.評価とガバナンス

DXは、ただ単にデジタル化を目指すものではありません。DX推進の評価項目として「顧客体験価値(CX:カスタマーエクスペリエンス)」、つまり顧客が価値を感じたかどうかの指標を設定することが大切です。また、それに応じて人材や投資などのリソース配分を最適化することも求められるでしょう。

このDX推進におけるKPIの見直しについて、どのくらいの頻度でリソース配分を改善しているか調べたところ、多くの米国企業では毎週~毎月、あるいは四半期に一度という高い頻度で行っています。しかし、一方の日本企業では、そのような高頻度で行っている企業は1割以下にとどまるのが現状です。

DX白書『第3部 デジタル時代の人材』のポイント

第3部では、企業にとって重要な人材リソースに注目し、DX推進において必要な要素や取組などが紹介されています。

1.企業変革を推進するリーダーの考え方・スキル

企業がDXによって変革を進めるためには、人材も重要な要素です。そこで、DX推進のリーダーにはどのようなマインドやスキルが必要か、求められる資質についての調査結果を見ると、米国では「顧客志向」が最も重視され、その後ろに「業績志向」「変化志向」と続いています。一方、日本企業では約半数が「リーダーシップ」を重んじ、次点で「実行力」「コミュニケーション能力」となっています。このように、日米で求めるリーダー像は異なっていることが見て取れるでしょう。

2.企業変革を推進する人材の確保状況

DX推進には、リーダーとなる人材確保が不可欠です。しかし、日本企業で「量」に過不足がないと回答したのは15.6%(米国では43.6%)、「質」については14.8%(米国では47.2%)にとどまり、自己評価が低くなっています。つまり、米国と比べて深刻な人材不足に陥っていることがわかるでしょう。日本企業は、DX推進に必要な人材の要件を明確化し、スキル評価や処遇といった社内のマネジメント体制を整備することが急務と考えられます。

3.社員の学び直し

DX推進を担う社員には、スキルの習得が求められます。DX白書ではIoTやAI、各種BIツールなど、データサイエンス領域にまつわる「学び直し」の実施方針の状況についても調査結果を公表しています。それによると、米国では全社員または選抜した社員を対象に行っているものの、日本企業では「実施も検討もしていない」との回答が46.9%にものぼり、認識の差が明らかです。日本企業は早急に学び直しの機会を検討し、提供する重要性が高まっています。

4.ITリテラシー向上に向けた企業の取組

社員の学び直しという枠組みにおいては、昨今「ITリテラシー向上を目的にした取組」の重要性も高まっています。IT部門のみならず、「変革を担う人材すべて」や「ITシステムを活用する事業部門」がテクノロジーを理解し、それを活用して業務することを重視している企業は、日米ともに多くなっています。

しかし、この取組においても日本企業は米国企業に比べ、なかなか進んでいないのが現状です。DX推進のプロセスでは、IT部門といった専門部隊だけではなく、事業部門なども巻き込んで最新のデジタル技術を理解すべく、施策実施を図る必要があるでしょう。

DX白書『第4部 DXを支える手法と技術』のポイント

第4部では、企業のDX推進にあたり必要な手法や最新テクノロジーについて、2つのポイントに分けて紹介されています。

1.DX実現に必要な開発手法・開発技術

目まぐるしく変わるビジネス環境では、柔軟かつ迅速に対応できるITシステムなしでは取り残されてしまいます。そのため、日本企業は経営側のニーズも採り入れ、マイクロサービスやコンテナ、AIなどのITシステムを早急に検討し、構築する必要があるでしょう。

その際、製品やサービスのユーザーが抱える真の問題を探り、最適な解決方法を導く「デザイン思考」や、少人数のチームで開発・適用を短期間で繰り返しながら開発する「アジャイル」などの手法も併せて活用すると、より高い効果が得られます。これらも組織横断的に連携しながら進めていくことが大切です。

2.データ利活用

近年では予測不能な外部環境に対応するため、データの利活用による経営手法に注目が集まっています。たとえば米国企業では、データ分析を主導する専門的な役職や、組織横断的にDXを進める役職の新設といった動きも見られます。しかし、日本企業では「適切な情報を必要なタイミングで取り出せない」など、データの整理や管理面でも課題が山積しているのです。米国との差は広がる一方で、現状のままでは貴重なデータをビジネスに活かすことは困難でしょう。そこで、データ利活用についてビジョンを明確化し、データ管理システムの整備を組織的に進めていくことが求められています。

まとめ

「DX白書2021」は、IPAがまとめたDX推進に関するレポートで、日米企業の比較調査結果から、日本企業におけるDXの取組状況や課題を確認できるのが特長です。

日本企業が抱える課題としては、組織間の協調性や人材不足が挙げられるでしょう。そこで、効果的なDXのためには、まずDX戦略を明確化し、適切な人材を確保したり、ビジネスニーズに合わせたITシステムやデータの利活用を進めたりすることが重要です。本記事を参考に、ぜひ自社の取組に活かしてみてください。

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