不動産に関する用語として知られる「ファシリティマネジメント(FM)」ですが、これを実現するために新たな建築ワークフローとなる「ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)」を活用すべきだと言われています。ビルや店舗などの施設をどのように管理すれば良いのかを悩む不動産経営者は少なくありませんが、その解決策のひとつとして挙げられるのが、FMにBIMを活用することです。
この記事では、なぜFMにBIM活用が求められるようになったのかという背景や、BIMの具体的な活用法などを詳しく解説します。
FMとBIMとは
まずは、ファシリティマネジメント(FM)と、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)という2つの単語についてご紹介します。ファシリティマネジメント(FM)とは
国際的な商品の品質基準を定める組織・ISO(国際標準化機構)によると、ファシリティマネジメントは「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」と定めています。
ファシリティ(facility)とは「施設」や「設備」のことを指しますが、ファシリティマネジメントという考え方においてはそれだけでなく、土地や建物、設備や環境を含めたあらゆる要素を複合的に管理・運用(マネジメント)することを指します。
BIMとは
続いては、BIMについてです。BIMとは「Building Information Modeling(ビルディングインフォメーションモデリング)」のことをいいます。コンピューターを使って実際の建物と同じ立体モデルを再現し、実際の建物の設計・工事、管理に活用できるのが特徴です。
3D(立体モデル)の建物データの中には、どのような建材を使っているのかという情報や、設備機器の種類やメーカーやなどのデータベースも統合可能です。そのため、建物に関するあらゆる情報を詰め込むことができます。
また、BIMと「3D CAD」は同じ意味でとらえられることもありますが、3D CADは2次元の図面から3Dモデルを立ち上げる方式、BIMの立体モデルは最初から3Dで設計するのが異なる点です。
政府が後押しするFMへのBIM活用
建物の管理や設計に役立つBIMですが、実は政府がFMへのBIM活用を政策的に後押ししているのです。具体的にどのような政策を推し進めているのか、詳しい内容を見てみましょう。「成長戦略フォローアップ」に盛り込まれたBIM
設計や施工、その後の建物の維持管理などに役立つBIMですが、政府は国策としてBIMを推進しています。
すでに諸外国では土木や建築関連の現場でBIMを活用しており、この世界的な流れに日本は出遅れています。BIMは設計から施工、維持管理を含めた一連の流れでシームレスに活用できるのがメリットにも関わらず、日本では各工程で個別に利用されているのみです。連携が取れていないため一貫した情報共有が行われにくく、BIM本来のメリットを活用しきれていません。
そこで2019年(令和元年)閣議決定された「成長戦略フォローアップ」において、政府はBIMの戦略的導入を打ち出しました。さらに翌年の2020年には「2023年度までに小規模を除いた全ての公共事業で、BIMを活用していく」という方針が示されたのです。
これを受け、国土交通省が「建築BIM推進会議」を発足させるなど、土木・建築におけるBIM活用が国を挙げて進められることになりました。
ライフサイクル全体を通したBIM活用へ
国を挙げたBIM活用について、BIMをFM領域で活用することが求められています。国土交通省による「建築BIM推進会議」では、BIM活用の具体策を検討したり、例を示したりして、実際の現場でどのような活用をすべきなのかを提言しています。
BIMは設計・施工だけに活用するのではなく、建設後の維持管理はもちろん、建物を設計する前の計画段階を含めた建物のライフサイクル全般への活用が求められており、BIM活用はまさにFMを実現できる手法と言えるでしょう。
また、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)も政府と同様にBIM活用を勧めており、2019年には「ファシリティマネジメントのためのBIMガイドライン」を刊行し、BIMに対する具体的な活用法を紹介しています。
FMにおけるBIM活用はどのように行われるのか
ではFMにおけるBIMの活用について、実際にはどのような方法をもって何ができるのか、具体的な活用法をご紹介します。BIMデータのFMへの橋渡し
まずはBIMからFMへ、どのようにデータを引き継ぐかを解説します。BIMデータの引き渡し方法として、建設業者からクライアントに建物のデータとなるBIM情報を渡してもらいます。ここで重要なのが「建設」という工程だけでなく、FM全体に活用できるBIMかどうかという点です。
建物は建設を終えた後数十年にわたってメンテナンスを行う必要があります。そこで建物の部材となるメーカーや種類などを盛り込んだBIMデータがあれば、メンテナンスの適切な時期を知るといった活用も可能です。そのため、これらの工程で一貫して活用できるBIMデータかどうかという要件定義が必要です。
次に、FMアプリケーションへの取り込みについてです。BIMデータはFMに使えるようにして取り込む必要がありますが、「Archibus BIM to FM」システムを例に挙げると、BIMソフト「Revit」内から直接BIMの情報にアクセスしたり連携したりできます。
BIM活用でできるようになること
BIMデータをFMに向けてどのように活用できるのか、先ほどご紹介したFMシステム「Archibus BIM to FM」を例に解説します。
まず施設の維持管理についてです。
施設の維持管理には保全業務のスケジューリングから計画作成、施設の現況を調査するとともに、設備システムや通信インフラの管理まで、幅広い業務があります。Archibus BIM to FMでは、効率良く計画を進められるようスケジューリングしたり、メンテナンスにかかるコストの予測を行ったりできます。
次に、建物や家具をはじめとする資産管理・運用する方法についてです。資産の台帳をデータ化すると資産状況を俯瞰で見ることができ、資産計画が立てやすくなるほか、処分(減価償却)のサイクルを可視化できます。
またリース期限の管理をはじめ、複雑な設備システム管理も可能です。例えば通常のビルだけでなく、生産設備のプラントや工場など設備が分かれているものの場合、それぞれ独立した管理と関係性を持たせた管理を可能にします。どの設備を優先的に調べてメンテナンスするべきかがわかり、手間をかけません。
施設の運営や、施設を利用するユーザー管理にも活用できます。例えば、建物をどの事業部が利用したかの利用履歴や空きスペースの把握、スペース利用の無駄を省いてコストダウンさせるなどの活用法があります。
さらに社員や職員などの人員配置についても、建物内のどこで・誰が業務にあたっているのかを把握でき、正確な情報をスピーディーに共有できるメリットもあるでしょう。
そしてもうひとつ重要なのが、環境問題や持続可能性(SDGs)への対応です。
企業は環境を保護しながら自社の収益を高めることを求められています。そのためにArchibus BIM to FMでは、リアルタイムでのコストのデータを取得したり、効率的なエネルギー管理が可能だったり、環境問題・SDGsのどちらにも対応できます。
まとめ
建築・土木の分野で、国を挙げて推進されているFMにおけるBIMの活用。これを実現するには、すべての工程でBIMデータをFMに活用できるシステム「Archibus BIM to FM」がおすすめです。
BIM情報を活用して業務の効率化やコスト削減を図るのはもちろん、スタッフや施主などすべての工程に関わる人に情報共有し、建物の適切な維持・運営ができるようになります。Archibus BIM to FMのように、竣工前から完成後までのあらゆる事柄を検討できるシステムを取り入れることで、生産性向上にもつながるでしょう。
建築物の効率的な維持・管理のためにArchibus BIM to FMを導入してみてはいかがでしょうか。