当記事では顧客満足度の定義について確認したのち、顧客満足度を測る指標や調査方法、顧客満足度を高めるためのポイントについて解説します。顧客満足度についてより深く理解したい方や、よりよい顧客体験を提供したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
顧客満足度(CS)の定義とは
「顧客満足度」とは、企業が提供する商品・サービスに対し、顧客がどの程度満足したかを示す数値です。英語では「CS(Customer Satisfaction)」と表現されるため、顧客満足度=CSと呼ばれることもあります。
顧客満足度が重要とされる理由は、企業のマーケティングおよびサービスの展開を左右する要素であるからです。
顧客が商品・サービスに満足したかどうかはあくまで主観的なものであり、目に見えるものでもないので、曖昧なものに感じるかもしれません。しかし適切なマーケティングを行うためには、顧客からのリアクションは極めて重要な指針となります。
近年、市場の拡大や技術の向上により、他社と比較して商品の品質で大きく差をつけるのは困難な世の中になってきました。こうした状況下で企業が利益を上げ続けるためには、「顧客が本当に望んでいるもの」を理解し提供する、適切なマーケティングが不可欠です。
また、顧客のリピート率を増やし、長期的な関係を築くためにも、やはり顧客満足度は意識しておく必要があるでしょう。
顧客満足度はどのように調査する?
顧客満足度をマーケティングに活用するためには、顧客の声を可視化する必要があります。企業が行う顧客満足度を調査する手法として、以下のような方法が一般的です。
アンケート調査
最もメジャーな調査方法で、紙やメール、アンケートツールなどを用いて実施します。気軽に回答できるよう、5~10段階評価で答えられる質問が一般的です。
直感的に答えやすいこともあり、顧客の事前期待と利用後の満足度の差が色濃く反映される傾向にあります。統計上は400以上のサンプルがあれば、信頼に足る数値といえるでしょう。
インタビュー形式
アンケート調査よりもさらに細かい顧客のレスポンスや心理、態度を収集したいときは、口頭でのインタビューという手法がとられることもあります。
質問も複雑かつ臨機応変にすることができるほか、顧客と直接向き合うことで細かな情報を得ることも可能です。ただし、インタビュアーの技量が重要なうえ、1件ごとに時間がかかるので大量のデータを集めるには向きません。
専門リサーチ会社へ依頼
上記の調査方法を自社で行うのではなく、専門のリサーチ会社へ依頼することも一つの手段です。情報収集を専門とする会社なので、自社で行うよりも質の高い調査が期待できます。
ただし「具体的に明らかにしたいこと」をより明確にしないと、外部委託では有意な結果が得られないケースもあります。相応の費用もかかるので、慎重に検討しましょう。
いずれの調査方法を選ぶにしても、質問をするだけでは意味がありません。顧客から得られたフィードバックを分析し、商品・サービスに反映できるような社内体制を整えることも重要です。
顧客満足度を測る代表的な3つ指標と計算方法
上記のような満足度調査を行うにしても、どのような質問を行い、どのように集めたデータを数値に落とし込めばよいのでしょうか。
つぎに、顧客満足度を測定する際に利用される指標を3つご紹介します。
1.NPS (Net Promoter Score)
「NPS」とは近年登場した顧客満足度を測る指標「Net Promoter Score」の略称で、顧客ロイヤリティ(顧客が企業の商品・サービスに感じる信頼や愛着信)を数値化したものです。
NPSでは、顧客に対して「この商品を家族や知人にどれくらいオススメしたいか」というように他者も関係した質問をし、0~10点の11段階評価をしてもらいます。評価点が0~6点を批判者、7〜8 点を中立者、9〜10 点を推奨者とし、「推奨者の割合(%)−批判者の割合(%)」がNPSのスコアとなります。
このスコアによって、今後も顧客が継続して商品・サービスを利用してくれるかどうかが可視化されます。また、顧客からの推薦によって見込める新規顧客を、ある程度具体的な数値として予測することも可能です。
2.CSI(Customer Satisfaction Index)
「CSI」とは「Customer Satisfaction Index」の略称で、アメリカをはじめとした約30ヵ国で政府機関などから提供されている顧客満足度の指標です。1994年にアメリカのミシガン大学が構築した算出式をベースとし、現在でも複数の業種で、毎年25万人以上の顧客に対して調査が行われています。
CSIの算出式は、顧客が商品・サービスにどの程度期待感を持っていたか、またサービスを受けたあとの不満感や、企業への信頼度などに関連する質問をいくつか行ったうえで数値化し、その平均値をとるというものです。
3.JCSI(Japanese Customer Satisfaction)
「JCSI」とは、上記のCSIをベースに経済産業省や各企業によって開発された、日本版の顧客満足度調査です。JCSIでは「顧客満足度=顧客が感じた価値−事前期待価値」という計算式をもとに、顧客満足度を測ります。
「顧客が感じた価値」「事前期待価値」については、次の6つの指標を点数化することで算出します。
- 顧客期待(利用者が事前に持っている企業・ブランドへの印象や期待)
- 知覚品質(実際にサービスを利用した際に感じる、品質への評価)
- 知覚価値(サービスの品質と価格とを比較して、利用者が抱く納得感)
- 顧客満足(サービスを利用して感じた満足の度合い)
- 推奨意向(サービスを他者に肯定的に伝えるかどうか)
- ロイヤルティ(今後も継続してサービスを使い続けるかどうか)
これらの指標は商品・サービスを問わず、多くの業種で共通するため、業界をまたいで比較・分析をすることができるのも特徴の一つです。
顧客満足度を向上させるためには?
ここまで、顧客満足度がどうして重視されるのか、また顧客満足度を測る指標についてご紹介しました。
続いては、顧客満足度を向上させるために企業ができること、日ごろから心がけるべきことについて解説します。
自社にとっての顧客を明確にする
顧客満足度の向上には、まず自社にとっての「顧客」を明確化することが大切です。自社商品やサービス、顧客の購買履歴やSNSでの行動履歴など、どのような層を顧客としてターゲットにするかをはっきりとさせましょう。
顧客を明確に設定して初めて、顧客満足度について考えることもできますし、アプローチの方法も見えてきます。
また、顧客満足度に対しての考えを社内で共有しておくことも重要です。どのような商品・サービスが顧客満足につながるのか、これを組織全体で共有しておくことで一貫性が生まれ、ぶれることなく商品・サービスの提供ができるのです。
顧客の心情を把握し、顧客の期待を理解する
定義をはっきりとさせたら、次に顧客の行動原理を把握し、どの程度の商品・サービスを期待しているのかを理解する必要があります。
顧客満足度を向上させるためには、利益優先の考えや、企業側の一方的な「満足してくれるだろう」という考えでは、なかなかうまく事が運びません。この顧客の期待値を測る際に、先ほどご紹介したようなアンケートやインタビューなどの調査が有効になるのです。
なお、顧客満足度調査を行うときに気を付けなければいけないことがあります。それは、ロイヤリティの高い顧客の意見ばかりを重視しすぎないという点です。
一般にロイヤリティの高い顧客=自社にとって有難い存在なので、こういった人たちの意見を重視しがちです。ただしロイヤリティの高い顧客というのは大抵、全顧客のうちで2割程度のことがほとんどです。
また、企業への信頼度が高いゆえに企業寄りの意見が集まり、本当に欲しいフラットな意見を得られないこともしばしばあります。
顧客満足度調査を行うときは、ロイヤリティの高い顧客だけでなく、そうでない顧客まで満遍なく対象として実行することが大切です。
顧客の期待を越える
近年では、顧客優先の商品・サービスはもはや当たり前といえます。しかし、複数の企業が参入し切磋琢磨している中、他社と比較して商品の質で大きく差をつけるのは困難です。
そのため、商品価値以外の部分でいかに顧客に満足してもらうか、という取り組みや工夫が強く求められています。
とはいえ、そういった取り組みもすでに多くの企業が実践しているため、顧客の期待値の水準が非常に高まっているのも困難に拍車をかけます。
期待に応えるだけのサービスでは、もはや簡単に顧客満足を与えることはできません。顧客の期待値を超えることを考えましょう。
よりよい顧客体験を与えるためにも、顧客のニーズを正確に汲み取り、従業員の接客・対応や店舗、服装など、細部までこだわっていく必要があるのです。顧客の期待を上回るサービスを提供することで、顧客の満足度を高めることができます。
顧客との接点を大切にする
顧客と直接接する機会はもちろんのこと、メールやSNSなどオンライン上であっても、顧客と接する場を大切にしましょう。企業にできる工夫は、どのような媒体で顧客がサービスを受けたとしても、同じような体験が得られる環境を整えることです。
また、いつも商品・サービスを利用してくれる顧客に対しては、手厚く対応することも重要です。
利用頻度が高い顧客というのは、商品や企業そのものに対してよいイメージを持っていることが多く、口コミによる宣伝効果も見込めるからです。よりよいサービスを心掛け、イメージの向上にも努めましょう。
ここまで顧客満足度を向上させるための考え方を解説してきましたが、顧客満足度をただ向上させればいいというわけでもありません。
結局は利益につながらなければ意味がないからです。そのため、採算度外視で顧客満足度の向上に努めるのは間違いです。顧客満足度の向上に取り組んだことで、どれだけの効果が生まれたのかもしっかりと分析しましょう。
まとめ
顧客満足度を向上させるためには、自社にとっての顧客を明確化し、最適なアプローチをかけることが大切です。
最適なアプローチ方法を知るためには、顧客が何を期待しているのか調査することが不可欠です。顧客のニーズを正しく把握し、自社の商品・サービスにどのような形で反映させていくかが、顧客満足度を高める鍵となるでしょう。