スマートビルディングとは、IoTを活用してオフィスビルの利便性向上や企業活動の効率化などを実現する先進施設です。今日では、多くの有名企業も導入を検討しており、今注目を集めています。そこで本記事では、その基礎知識やメリット・デメリットなどについて解説します。
スマートビルディングとは
スマートビルディングとは、IoTの活用により効率的・効果的な管理が可能となるオフィスや商業施設のことです。
センサーと各設備をネットワークで接続し、照明や空調をAIで適切に管理したり、ビルの利用者やオフィスで働く人々の行動データを収集・分析してリアルタイムで可視化したりできます。これにより、施設利用時の利便性や企業活動の効率性向上を実現します。
2019年には、日本マイクロソフトが「Smart Buildings & Spaces(スマートビルディング&スペース)」という施策を発表したり、スマートシティ構想と連動したスマートビルディングが建設されたりするなど、企業による取り組みが本格化しつつあります。
スマートビルディングを支える「BEMS」
スマートビルディングは、「BEMS」というシステムによって支えられています。BEMSは「Building Energy Management System」を略したもので、ビルエネルギー管理システムと訳され、ビル用に最適化されたエネルギー管理システムを指します。
建物内データの調査・分析、管理システムの一元管理、制御システムの自動化などにより、電力使用量などを適切に管理するために使用されます。スマートビルディングでは、BEMSと大量のIoT機器を連携させることで、より高度な管理・運用が可能となります。
スマートビルディング市場の成長率
スマートビルディング市場は世界的に成長しています。CISCOやIBMといった世界的大企業がシステムを開発しており、Microsoftはスマートビルディングに関するオンラインセミナーなども積極的に行い、普及に貢献しています。
その市場規模は2020年の663億米ドルから年平均成長率10.5%を持続し、2025年には1089億米ドルにも及ぶと予測されており、今勢いのある市場と言えるでしょう。
スマートビルディングのメリット
スマートビルディングを導入する具体的なメリットはどのような点でしょうか。ここでは具体例を挙げつつ、導入のメリットについて解説します。
エネルギー管理による省エネ
1つ目のメリットとして「エネルギー管理による省エネ」が挙げられます。手動で明かりや空調を最適に管理するには限界があります。しかしスマートビルディングではそうした管理も、自動化・一元化できるため、より効率的にエネルギー使用の最適化が可能です。
空調を例に見ていきましょう。オフィス内には数々の部屋がありますが、それらの部屋が均等に使用されているわけではありません。多くの人が常時使用する部屋もあれば、週間に1度しか使用しないという部屋もあるでしょう。
それらの部屋の空調管理を同じように行っていると無駄が発生します。かといって、毎回人の手で機器のオン・オフや温度管理を行うには手間がかかりすぎます。センサーで人の動きや温度、湿度などを把握することで、それぞれの部屋に適した空調が実現でき、電気料金の削減へつながるのです。
空調以外にも照明や各種機器を同じように管理できるため、ビルの規模によっては大幅なコスト削減につながります。
業務効率化
2つ目のメリットとして「業務効率化」が挙げられます。スマートビルディングでは、オフィス内で働いている従業員の勤務状況も管理可能です。
例えば、顔認証システムを導入する場合を見ていきましょう。顔認証により出社記録を取り、自動的に社内業務システムにログインできます。自分の席に座ってパソコンを開けば、当日自分が行うべきタスクがすぐに表示され、さらに会議の時間になったら該当する従業員に対し通知することも可能です。
従来までは、手動でタイムカードを押し、タスクの管理や社内通知なども人が行う必要がありました。IoTを活用したシステムを導入することで、これらの業務から従業員も解放され、日々の負担が軽減されます。また、快適なオフィス空間を実現することで、従業員の満足度が高まり、パフォーマンス向上が期待できます。これらの効果によって、企業全体としての業務効率アップへつながることとも、IoT活用の大きな魅力と言えるでしょう。
セキュリティ向上
3つ目のメリットとして「セキュリティ向上」が挙げられます。企業におけるセキュリティ対策の重要性は年々高まっており、情報漏えいや機密情報の保護などを怠ると、社会的信用を失墜させかねません。
スマートビルディングでは防犯カメラの運用や入退室管理はもちろん、各デスクの端末も管理できるため、施設内にいる人員の不審な行動まで検出可能です。これにより、なりすましによる攻撃や不審者の新入などを防止できます。
セキュリティ上の問題が発生した場合、当該部署の人の配置や動きを分析することで、警備員の的確な配置も可能です。インシデントへの対処もより迅速・適切化できるのです。
スマートビルディングのデメリット
多くのメリットがあるスマートビルディングですが、デメリットもあります。ここでは主な2つのデメリットについて解説します。
セキュリティの不安
1つ目のデメリットは「セキュリティへの不安」です。メリットの項目でもセキュリティを挙げましたが、別の側面ではデメリットになり得るのです。
多くの機器や設備をネットワークで接続するスマートビルディングでは、アナログのシステムに比べてサイバー攻撃を受けた際の影響も大きくなることが予想されるため、よりリスクが高くなることは否めません。
こうした弱点を補完するためには、システムの設計段階からサイバー攻撃を想定し、課題や注意点を抽出して共有したり、運用開始後も常に最新のセキュリティシステムにアップデートしたりするなどの継続的な対策が必要です。
トラブル発生による損害
2つ目のデメリットは「トラブル発生による損害」です。スマートビルディングは高度にシステム化されている分、管理システムや制御装置に不具合が発生した場合、その影響は多岐に渡る恐れがあります。
同様に、電気の供給が止まった場合には、連動しているIoT機器が作動しなくなり、「ビル全体の空調が調節できない」「入出管理がうまく作動しない」などのトラブルが予想され、場合によってはより大きな損害まで発生する恐れすらあります。
こういったトラブルを避けるためには、予備電源の準備や機器の多重化を図るともに、緊急時対応のマニュアル化、定期的なメンテナンス実施などの対策が必要です。
スマートビルディングを叶えるAVNETのビルオートメーションソリューション
スマートビルディングを実現するサービスとして、AVNETがビルオートメーションソリューションを提供しています。
AVNETは、さまざまなビルオートメーションの設計やシステム構築に数十年の実績と歴史があります。ホーム/ビルオートメーション分野に関しての専門性の高いノウハウが蓄積されているため、スマートビルディングの利用も適切に支援してくれます。
「EnOcean」「KNX®」「Thread」「LonWorks」「BACnet」など、多数のホーム/ビルオートメーションで活用されているデバイスへの活用や、管理用アプリケーションの構築、セキュリティ分野・ネットワーク分野でのサポートなどにも対応しているため、包括的なスマートビルディング活用支援が受けられます。
まとめ
スマートビルディングにはIoT機器によるエネルギー利用の最適化や業務効率化、セキュリティの向上などといったメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。特にデメリットに対しては適切な対策を施した上で利用することが重要です。スマートビルディング利用を始める際には、AVNETが提供するビルオートメーションソリューションが大きく役立つでしょう。