製造現場の生産性を向上させるには、プロセスの改善が不可欠です。ただ、プロセスの改善といわれても、「具体的に何をすればよいのかわからない」という企業経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、製造現場におけるプロセス改善の目的や手法、生産性を向上させる手法などを解説します。
製造現場のプロセス改善とは
製造現場における「プロセス」とは、業務を遂行するにあたっての流れや手順などを指します。それを踏まえ「プロセス改善」とは、従来の業務プロセスを見直し、改善を進めることであり、最終的には生産性の向上やコストの削減などを目的とします。
製造現場では、日々さまざまな業務プロセスが発生しています。絶対的に必要なプロセスがある一方で、あまり意味のない工程や無駄が生じているプロセスも中にはあります。プロセスに無駄が生じていると、余計なコストも発生してしまいます。無駄に時間を費やしてしまうため、生産性の低下にもつながります。このような現状で発生している課題を抽出し、適切に見直しと改善を進めることで、生産性の向上を実現できるのです。
製造現場のプロセス改善手法
製造現場における主なプロセス改善手法としては、「5S」による効率化や動作・工程の改善などが挙げられます。以下、それぞれの改善手法について詳しく見ていきましょう。
5Sを意識した改善
5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」を指します。生産の効率化や職場環境の整備には、この5Sがよく用いられています。
「整理」は、現場で必要なものと不要なものを取捨選択することです。仕事に必要ないもの、関わりのないものを排除し、作業しやすい環境を整えます。
「整頓」は、モノの所定位置を決めることです。製造現場では、さまざまな工具や機器を使用しますが、その都度置き場所が変わると作業効率を低下させてしまいます。あらかじめ置き場所を決めておけば、いちいち探し回ることがなくなり、スムーズに作業へ取りかかれるでしょう。
「清掃」は、現場を掃除してキレイな状態に保つことです。機械が汚れていると、故障の予兆を察知できません。また、足元が散らかっていると、小さな部品などを落としてしまったとき、探すのに時間がかかってしまいます。快適に作業を行うためにも、こまめな清掃が求められます。
「清潔」は、働きやすい職場環境が保たれている状態を意味します。整理整頓はもちろん、こまめに清掃を行うことにより、快適で働きやすく、生産性向上に寄与できる環境の維持が可能です。
最後の「しつけ」は、働きやすい職場環境を維持するため、従業員へ指導や教育を行うことです。上層部や管理者だけが5Sを意識しても、業務プロセスは改善しません。現場の従業員に周知徹底することで実現できます。
動作の改善
従業員の動きに無駄があると、生産性を低下させてしまいます。「業務に不要な動きをしていないか」「手待ちが発生していないか」「属人化している作業はないか」といった部分をチェックします。
そもそも、その作業自体が不要であるケースも考えられます。習慣化してしまい、誰も疑問を抱かず形骸的に行われている作業かもしれません。このような作業を省けば、業務の効率化を進められるでしょう。
工程の改善
生産プロセスの工程を見直し、必要に応じて改善すれば、生産性の向上が見込めます。そのために、まずはボトルネックとなっている工程を抽出しましょう。ひとつでもボトルネックになっている工程があると、ほかの工程が遅延してしまうおそれがあります。
ボトルネックな工程があると、1つの製品を生産する時間が長くなってしまいます。生産性を向上させるには、ボトルネックを発見し、製品1つあたりの製造にかかる時間を短縮しなくてはなりません。具体的には、IFSなどが提供する生産管理ソリューションを導入し、生産プロセスの改善を図る方法が考えられます。
製造現場で生産性を下げる原因
製造現場の生産性を下げる主な原因として、人手不足が挙げられます。また、業務が標準化されていなかったり、作業でミスが発生したりといった原因で、生産性が低下してしまうケースも少なくありません。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
人手不足
人手不足が原因で、生産ラインの遅延が発生するケースは珍しくありません。特に物流やメーカーにおいては、人手不足による生産ラインの遅延がよく発生します。
人手不足になってしまう原因としては、製造現場に対するネガティブなイメージが考えられます。いまだに工場のような製造現場に対しては、3K(きつい・汚い・危険)のイメージを抱く方が少なくありません。ネガティブなイメージにより人材をなかなか確保できないのは、製造業における大きな課題といえるでしょう。
また、少子高齢化に伴う労働力の減少も、人手不足に陥る原因のひとつです。人手が足りなくなれば、業務に十分なリソースを割けません。その結果、1人の従業員にかかる負担が大きくなり、不満を感じた従業員が離職し、さらに負担が増大するという悪循環に陥ることも考えられます。
標準化がされていない
どの従業員が作業しても、同じような成果を出せるガイドラインを「標準化」と呼びます。作業の標準化ができていないと、新人とベテランとのあいだで作業スピードやクオリティに差が生じ、作業が属人化してしまう原因となります。
特定の人しかできなかったり、特定の人だけが速く作業できたりするなどの状況では、作業スピードにも品質にもムラが生まれます。その結果、担当者が不在の場合、対応できなくなってしまうリスクもあるのです。また、万一ベテラン従業員が離職したとき、生産性が大幅に低下してしまうおそれもあるため、このようなリスクを回避するうえでも作業の標準化が必要です。
標準化を実現するには、現状を正確に把握しなくてはなりません。現場の声もきちんと聞き取り、そのうえで何を標準化するのかを決めましょう。次に、作業手順をマニュアル化します。マニュアル化するときは、初めて読む人でもわかりやすく、嚙み砕いた内容にするのがポイントです。
そのほか、イレギュラーな事態が発生したときのことも考え、トラブルへの対応マニュアルも整備しておきましょう。考えられるトラブルを明文化し、適切な対処方法を記載しておけば、イレギュラーな事態が発生してもスムーズに対処できます。
作業ミスの発生
作業ミスの発生が、生産性の低下を招くケースも少なくありません。ミスが発生すると、場合によっては生産ラインを停止する必要があります。とりわけ大量生産をしている現場であれば、数分ラインがストップしただけでも、相当な損失が発生すると考えられます。
作業ミスを完全になくすことは難しいものの、作業の標準化を進めることで対処は可能です。各々が好き勝手に作業していると、ミスを誘発する可能性が高まりますが、適切に標準化された作業であればミスを低減できるでしょう。
可能であれば、作業をよりシンプルにするのも有効です。ミスが起きるのは、作業が複雑だったり、難しかったりするからです。作業そのものをシンプルにできれば、ミスの削減につながるはずです。
また、適切な人材教育も求められます。ミスが発生しないような正しい作業手法をレクチャーし、スキルのベースアップを図りましょう。このような教育や指導は、一度行ったくらいではあまり意味がありません。定期的に教育を行い、身につけさせることが大切です。
その際は、座学だけでなく、必要に応じてトレーニングも実施しましょう。実際に同じ環境や工程で作業のトレーニングを行えば、練度を高められます。作業におけるミスが少なくなるだけでなく、作業精度の向上やスピードアップも実現できるでしょう。
ミスの規模によっては、部分的なラインの停止だけでなく、工場全体の生産がストップしてしまう事態も考えられます。このようなリスクを少しでも軽減するため、徹底して作業ミスの防止に努めましょう。
まとめ
製造現場の生産性向上を図るには、業務プロセスの改善が欠かせません。具体的な手法としては、5S活動や動作・工程の改善などが代表的です。人手不足や作業ミスの発生、作業の標準化ができていないなど、生産性を低下させてしまう原因は多々あります。今回お伝えした内容を踏まえ、これらの改善に取り組み、生産性の向上を実現しましょう。