現在、世界中でデジタル変革の必要性が指摘されており、日本でも様々な企業がデジタル変革による作業の効率化に取り組んでいる状況です。デジタルコンテンツのニーズが高まる中、放送業界でもテクノロジーを活用した効率的なコンテンツ作りが求められます。そこで、今回はマイクロソフトの放送業界向け戦略についてまとめました。
メディア放送業界はコンテンツワークフローをクラウドへ移行
以前はセキュリティのリスクや規制の問題からクラウドサービスの導入を避けていた企業が少なくありませんでした。しかし、最近では戦略的投資という観点からクラウドサービスを利用する企業が増えつつあります。
メディア・放送業界でも実際にクラウドサービスを利用したコンテンツ作りが始まっており、今後はさらにクラウドサービスを利用する企業の増加が加速していくものとみられています。
そのような中、映像コンテンツ製作のワークフローをクラウドに移行していくことが目下の大きな課題といえるでしょう。
放送業界のデジタル変革の4つの柱とは
実際、メディア・放送業界で起こりつつあるデジタル変革とはどのようなものなのでしょうか。
世界的なITソリューション企業であるマイクロソフトの例を見てみましょう。マイクロソフトのデジタル変革には、主に4つの柱があります。
1.リーチ・関連性・収益性の向上
マイクロソフトでは、ライブ配信やオンデマンド配信によって世界中のオーディエンスおよび複数のプラットフォームにコンテンツを届け、顧客へのリーチを追求することを課題としています。
さらに、ソーシャルメディアやソーシャルチャネルを通し、製作側とオーディエンスが繋がれる仕組みづくりを進めるほか、360°ビデオや仮想現実といった体験型コンテンツを提供することで、顧客エンゲージメントの強化に取り組んでいます。
このように新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの離反防止を図り、最終的にはコンテンツの収益化を目指していきます。
2.デジタルフィードバックループのクローズ
デジタルフィードバックループとは、デジタル変革を実現するためのプロセスのことです。
具体的には、AIでユーザーの使用状況をプロファイリングし、オーディエンスの好みなどを把握します。さらにレコメンド情報の提供やキュレーションなどを行い、コンテンツ体験をよりパーソナライズ化していきます。
また、オーディエンスに関する洞察結果を基に一人ひとりの関心を推測し、ターゲットを絞って広告を設定します。
オーディエンスのニーズを反映させたコンテンツ作りができれば、製作にかかる投資の無駄を省くことも可能です。
そしてこれらのループを回していくことで、デジタル変革に繋げていきます。
3.創造力とコラボレーションを実現
新しく魅力的なコンテンツを製作するためには、製作チームのメンバー同士、また外部の共同作成者とのコミュニケーションを促進し、チームの創造力を高めることが重要です。
そのためには、時間や場所に捉われずに働けるモバイルワークを実現するとともに、セマンティックグラフを使いながら関連のあるコンテンツや人、会話などを見つけ、新たなコンテンツ作りに活かしていく必要があります。
また、マイクロソフトではデータ探索機能やデータ可視化ツールを使ってチームメンバーのワークスタイルを分析し、メンバーがより働きやすい仕組みづくりを推進しています。
4.映像コンテンツ作成業務を最適化
業務効率を最適化することも、デジタル変革の領域の一つです。
例えば、AIを使って関連性が高いコンテンツにインデックスを付けることで、製作側が求めているコンテンツを素早く見つけ出せるようにするほか、クラウドサービスを利用して製作側のニーズと製作インフラとをマッチングさせます。
さらに複数のチャネルでコンテンツを配信・販売するとともに、配信・販売のスケジュール管理を自動化することによって、コンテンツを最大限に活用し、オーディエンスに提供することができるのです。
マイクロソフトではコンテンツ製作の全フローをAzureでサポート
Microsoft Azure Media Serviceは、メディア向けのクラウドプラットフォームサービスであり、映像コンテンツ製作の全ワークフローをカバーしています。
具体的には、動画アップロード、ライブインジェスト、編集・後処理、レンダリング・FX、ストレージインデックス作成検索、デジタルサプライチェーン、分析とエンゲージメント、ライブ・オンデマンド配信などです。これらの全てをMicrosoft Azure Media Service でサポートすることが可能なのです。
まとめ
異業種によるコンテンツ配信への新規参入が活発化している今、既存のメディアが生き残っていくためには従来型ビジネスモデルのデジタル変革が欠かせません。顧客の行動データを活用したコンテンツのパーソナライズ化に取り組むだけでなく、製作に関わる全てのワークフローをクラウドに移行して作業効率を高め、製作から消費までにかかるスパンを短縮していく必要もあります。マイクロソフトのクラウドサービスは、既存の放送業界と新たなメディア企業との公平な競争を実現するのに有効な手段といえるでしょう。