新規事業化において、新規事業を立ち上げる際に必要な業務の流れや特徴、事業を立ち上げる際に発生する課題やその特徴、新規事業化を成功させるために役立つフレームワークや成功の要因など、成功のポイントについて紹介しています。
新規事業立ち上げの流れ
新規事業の立ち上げを行う際には、最初に事業を立ち上げる目標を設定してから、事業の構想を練り事業計画を策定します。事業立ち上げから10年以上先までの大きな目標や、1年単位の短期的な目標を掲げて計画を策定することが、事業の成功につながります。新規事業立ち上げでは、顧客のニーズを元に、自社の強みを活かした事業にすることが大切です。
事業の運営には、必要な予算をまかなう資金を準備しなければなりません。そのため、投資額の計算や資金回収のシミュレーションもしっかりと行い、投資回収の計画も策定します。次に、新規事業を実施するプロジェクトチームの選定が必要です。チームメンバーは社内からやる気のある社員を集め、適任者など人員の補充が必要な場合には外部からもスカウトして人材を採用、確保します。
事業計画を策定し、資金とチームメンバーを揃えたら、次は新規事業の目標を設定します。売上高や顧客数など、数値で明確にわかる「定量目標」、期日を定める「期日目標」、社員やチームメンバーの気持ちを表す「勘定目標」、定量目標達成時の社内外の状態を想定する「状態目標」の4つから考えると適切な目標設定が可能です。また、万が一新規事業の成果が出なかった場合の備えとして、撤退基準を決めておく必要もあります。
最終的には、これまでに決定した内容から新規事業の実行計画を作ります。いつ、何を実行するか誰が実行するかなど、具体的な計画を立てることでプロジェクトメンバーが動きやすくなり、事業を成功に近づけることが可能です。
新規事業化をする際の課題
新規事業化をする際には、注意しなければならない課題もあります。新規事業化を阻む3つの関門や深刻な人材不足への対応などは、とくに気をつけなければならない課題です。
新規事業化を阻む3つの関門
新規事業化には、「魔の川(Devil River)」「死の谷(Valley of Death)」「ダーウィンの海(Darwinian Sea)」の3つの関門があるといわれています。事業化の過程に生じるこの3つの関門をそれぞれクリアしていくことが新規事業化の成功につながります。
魔の川
魔の川とは、商品開発の段階で生じる関門のことです。多様化した現代の生活形態から顧客のニーズも複雑になり、ただ新しい技術が組み込まれただけの製品では市場に受け入れられなくなってきています。自社のアイディアや研究を活かして市場のニーズに適した商品を開発できた場合に、この段階が超えられます。実際には、この商品開発の段階が乗り越えられないために事業化が終了するケースも少なくありません。
死の谷
死の谷は、商品化が決まり開発と事業化を行なう段階で発生する関門です。商品の試作品を製造し完成品まで作り上げて生産ラインを整え、完成した商品を販売するルートを準備する必要があります。この段階では多くの資金が投入されることもあり、商品の完成・事業化までを乗り越えるのはかなり難しいといえます。
ダーウィンの海
ダーウィンの海は、事業化が進み市場に出た製品・サービスの規模を広げて定着させる段階の関門です。この段階では、競合に勝てず市場で埋もれてしまうことがないように、市場や顧客のニーズに対応するため改良を続けていく必要があります。
深刻な人材不足
深刻な人材不足も新規事業化の大きな課題のひとつです。2017年度の「中小企業白書」では、新規事業化の課題のなかでも「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」が一番の問題となっています。人材不足は、中小企業に対して行われた調査の回答からは、販路開拓やコストの負担といったほかのさまざまな課題と比較して、より多くの企業から注目されていることがわかります。
新規事業の立ち上げでは、一般的に中堅クラスの社員がプロジェクトリーダーとなり、優秀な若手社員からチームメンバーが選出されます。リーダーとなる社員やチームメンバーの社員はすでに多くの業務を抱えていることも多いため、その場合、通常業務と新規事業に関する業務の両方に取り組まなければなりません。
新規事業では企業に前例のない業務をゼロから作り上げていかなければならないので、事業に関係する技術やノウハウを持つ人材が必要です。商品開発、製作、事業化など、新規事業の関門を越えられるチームメンバーを構成するためには、多くの企業で人材が不足している状態といえます。さらに日本は、今後少子高齢化が進むことが予想されているため、将来的により人材が確保できなくなる恐れがあります。
新規事業化を成功に導くコツ
新規事業化を成功に導くためには、「4P・4C分析」や「成功する要因」を確認してから取り組むことが大切です。企業目線と顧客目線両方からのデータ分析、新規事業化の成功要因をおさえてから効率よく行なうことで、新規事業を成功させやすくなります。
4P・4C分析
4P・4C分析とは、マーケティング上の基本的なフレームワークのひとつです。企業視点で行なう分析が4P、顧客視点で行なう分析は4Cで、この2つを組み合わせたものは「マーケティングミックス」と呼ばれています。
4P
4Pとは、アメリカの「E.J.マッカーシー」がマーケティング戦略のフレームワークとして考えだしたものです。企業視線の「製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)」の4つを示しています。「製品」は、製品の特徴、ブランド展開の方法、製品の保証体制、製品のパッケージデザインなどを消費者のニーズに合わせて決定します。「価格」は、商品のコストを基準に、他社との比較も考慮して消費者が納得する金額に決めます。
また、プロモーションはチラシやSNSなどさまざまな手法を用いた広告といった販売促進のこと、「流通」が製品やサービスを手に入れる方法のことです。実店舗以外に、経費を抑えるウェブのみで販売するケースもあります。
4C
企業視線で考えられた4Pの4つの項目を、消費者視線に置き換えたものが4Cです。「顧客価値(Customer Value)、顧客コスト(Customer Cost)、コミュニケーション(Communication)、利便性(Convenience)」の4項目があります。顧客が商品を手に入れたときに感じる感情・満足度などを表すのが「顧客価値」、「顧客コスト」は消費者が製品購入に積極的になる価格帯で、購入後の顧客に行なうアフターサービスなどを示す「コミュニケーション」、顧客の利便性を優先させた商品の流通方法が「顧客利便性」です。4つの項目それぞれが企業視線と逆の消費者目線での考え方なので、両方のフレームワークを組み合わせると、分析結果に消費者のニーズを反映できてより効果的に活用できます。
成功する要因を学ぶ
新規事業化を成功させる要因には、競合の少ない市場への参入、市場ニーズへの対応力、目的とターゲットの明確化、製造・販売のシステム構築などが挙げられます。新規事業立ち上げを競合が少ない市場へ参入する場合、製造した製品がほかに埋もれにくくなるため、競合が多い市場よりも成功率が高くなります。今後の需要がある市場かどうかを予測して実行すると、将来性のある事業への参入が可能です。
市場のニーズは時代の流れによって変化します。成長している市場に参入、今後の需要に合わせて対応できる力もつけておくことが大切です。新規事業立ち上げ時には、その目的とターゲットを明確にしておくと、目指すべき市場を発見しやすくなり参入後のマーケティング施策が立てやすいなどのメリットがあります。さらに、新規事業参入を成功させるためには、事業立ち上げ後の製品・サービスの流通方法や、市場に合わせて製品を改良する方法など、新規事業を運営していく仕組みの構築が必要です。
まとめ
新規事業化を行う際に生じる課題には、「3つの関門」や「深刻な人材不足」などがあります。新規事業化の課題を解決し、結果を成功に導くためには、「マーケティングミックス」などを活用し、成功の要因をおさえて事業化を進めることが大切です。