建築・建設業界においてもDXに取り組む企業が増えています。DXへの取り組みにより、建築・建設業界が抱えているさまざまな課題の解決につながり、多くのメリットも得られます。本記事では、建築・建設業界におけるDXの概要や、取り組むメリット、ポイントなどを解説します。
建築・建設業界におけるDXとは?
建築・建設業界におけるDXとは、デジタル技術の積極的な活用による、業務プロセスやビジネスの変革を指します。建築・建設業界は、新たな機械や技術の導入により、業務の効率化を進めてきました。一方、DXは業務プロセスだけでなく仕事の取り組み方そのものを変革し、建築・建設業界ならではの課題解決を目指します。
建築・建設業界は慢性的な人手不足に陥っており、職人の高齢化も進んでいます。少子高齢化に伴う労働人口の減少にも歯止めがきかず、この先はますます人材の獲得が難しくなるかもしれません。しかも、建築・建設業界は3K(きつい・汚い・危険)のイメージも根強く、より一層人材の獲得が難しくなると考えられます。
DXへの取り組みにより、これらの課題を解決できる可能性があります。現在、建築・建設業界にDXが広がりつつあるのは、このような理由のためです。
建築DX・建設DXを推進するメリット
建築・建設DXの推進により、職人の技術を容易に継承しやすくなるメリットを得られます。また、過労や人手不足の解消につながるほか、業務効率化に伴う生産性の向上も期待できます。
技術の継承が簡単になる
建築・建設業界は職人の高齢化が進んでいます。ベテランの職人が次々と職場を去る一方で、技術の継承が思うように進まず、技術力の低下に頭を悩ませる企業も少なくありません。
現在では、ITやデジタル技術が発達し、技術の継承がしやすくなりました。たとえば、データ化したノウハウをICTで職人と共有する、ベテラン職人の動きをAIに学ばせ、分析したデータを可視化して伝える、といったことが可能です。
省人化して過労を減らす
少子高齢化に伴う労働人口の減少や、定着した3Kのイメージなどにより、建築・建設業界は慢性的な人手不足に陥っています。そのため、個々の職人にのしかかる負担が大きくなりやすいという課題があります。
DXを進めれば、このような課題も解決できます。たとえば、ドローンを用いれば高所や危険なエリアの進捗確認、検査などができ、職人の重労働やリスクの軽減が可能です。また、デジタル技術で重機の遠隔操作が可能になれば、離れた場所から重機を操作でき、現場の省人化を実現できます。
業務効率化で生産性も上がる
建築・建設DXにより業務効率化が可能です。たとえば、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)を導入すれば、建物の3次元データを作成でき、2次元の図面と照らし合わせることで工事対象となる物件について、より理解が深まります。
また、工事の各工程における情報を一元管理できるシステムを導入すれば、必要なときにデータを取得でき、スピーディーな共有も可能です。情報共有の手間が省けるため業務効率もアップし、生産性も高まります。
建築・建設DX推進のポイント
建築・建設DXを推進するには、複数のデジタル技術やシステムの導入が欠かせません。また、働き方改革を2024年までに終える、現場とのギャップを作らないのもDXを成功へ導くポイントです。
複数のデジタル技術の導入
ITやデジタル技術の導入は、建築・建設DXの実現に欠かせません。ただ、DX化に役立つデジタル技術はいくつもあり、それらを複合的に組みあわせて活用することでビジネスに変革をもたらせます。
DX化に役立つサービスのひとつがクラウドシステムです。クラウドシステムの導入により、クラウド上で管理しているさまざまな情報へスピーディーにアクセスできます。遠隔地にある工事現場の作業進捗状況などをオンラインで管理できるほか、関係者間で共有もできます。
また、IoTの導入で設備や機械の遠隔操作が可能となり、5G技術の導入で迅速かつ快適にコミュニケーションをとれる環境が整います。これらの技術を複合的に活用すれば、離れた場所から若手とコミュニケーションをとりつつ、ベテランが機械を操作するといったことができ、今までにはなかった人材の育成体制が整います。
働き方改革を2024年までに終える
2024年4月から、時間外労働の上限が適用されます。2024年4月以降は、これまでのような長時間労働が難しくなるため、適用が始まるまでに働き方改革を実現しなくてはなりません。
DXに取り組み、業務の効率化や作業の自動化などを進めれば、長時間労働の解消につながります。時間外労働の上限を無視してしまうと罰則の対象にもなるため、今からでもDXに取り組み、併せて働き方改革も実現しましょう。
現場とのギャップを作らない
DXは、組織の上層部だけで取り組んでも成功しません。実際に、デジタル技術やシステムを業務で利用するのは現場の職人であるため、上層部や内勤スタッフとのあいだにギャップがあると成功が遠のいてしまいます。
現場の働き方も大きく変化する可能性があるため、事前にしっかりと説明し、理解を求める必要があります。DX化の目的やメリットを丁寧に説明し、理解を求めましょう。
実際に導入するシステムやツールを、現場の職人が問題なく利用できるかどうかも重要なポイントです。優れた機能を有するシステムやツールでも、現場が使いにくいとDX化を阻害してしまうため、事前に職人へヒアリングする、試用するなどの工夫が求められます。
建築・建設現場で活用できるDXの例
近年では、建築や建設現場にドローンを導入するケースが増えました。また、インターネット環境さえあれば利用できるクラウドサービスや、遠隔地から機械の操作ができるICTも代表的です。
ドローン
ドローンは、戸建て住宅の屋根や高層建築物の外壁など、高所の点検に役立ちます。ドローンが撮影した画像や映像は地上からモニタリングできるため、わざわざ職人が危険な高所へ赴く必要がありません。
通常、高所の点検では足場を架設し、そのうえで職人が点検を行います。一方、ドローンを用いれば上空から撮影できるため、上記のような手間がかかりません。効率よく点検作業を遂行でき、職人の安全も確保できます。
クラウドサービスの利用
クラウドサービスは、インターネット環境とスマートフォン、タブレット端末などがあれば利用できます。遠隔地から作業の進捗や、現場の状況などをリアルタイムで把握できるのがメリットです。
さまざまな情報をスピーディーに共有できるのも魅力です。たとえば、図面や仕様書のデジタルデータをクラウドで管理していれば、手元になくてもクラウドへアクセスしすぐ閲覧できます。従来のように、現場監督や職人が分厚い図面や仕様書、マニュアルなどを持ち歩く必要もなくなります。
ICTの活用
ICTとは、Information and Communication Technologyの略であり、日本語では情報通信技術と訳されます。インターネットで人同士をつなぐ技術であり、医療分野におけるオンライン診療やテレワークなどで活用されています。
ICTの導入により、遠隔地から現場の設備や機械を操作できます。離れた場所からモニターを通じてオペレーターが重機を操作する、といったことが可能です。
ICTによる重機の遠隔操作により、危険地帯における無人化施工も可能となりました。実際、自然災害の復旧工事など、職人の安全性が確保できない地域での作業において、ICT技術を用いた重機の遠隔操作は重宝されています。
まとめ
建築・建設DXへの取り組みにより、技術の継承がしやすくなるほか、重労働の軽減や人手不足の解消などさまざまなメリットが得られます。DX推進の際には、複数の技術を組みあわせて活用する、現場とのギャップを埋めるなどのポイントを意識しつつ、取り組みを進めていきましょう。