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新型コロナ感染者情報・ワクチン接種管理を効率化するIT施策とは?

新型コロナウイルス感染者の情報管理は、手動作業からデジタル化への移行が強く求められています。本記事では、新型コロナウイルス感染者情報・ワクチン接種管理を効率化するIT施策について紹介していきます。IT施策を行うことで、業務負担の軽減につながるでしょう。

新型コロナ感染者情報・ワクチン接種管理を効率化するIT施策とは?

新型コロナウイルス感染者の管理方法とは

現在、新型コロナウイルス感染者について、医療機関から保健所、各保健所から自治体へのいずれの報告は、FAX主体で行われています。

デジタル化の未発達で、「情報管理と報告に時間がかかり、新規コロナ感染者数の迅速な公表が行われていない」「重複や漏れなどの集計ミスが生じやすい」という弊害が指摘されています。

「HER-SYS」を導入

HER-SYS(Health Center Real-time Information-sharing System)とは、厚労省が開発・導入した、新型コロナウイルス感染者等の情報を把握・管理するシステムのことです。

保健所、自治体、医療機関等の関係者の間で新型コロナウイルス感染者等の情報(症状・行動歴・状態変化等)を電子データにて一元管理・共有します。業務負担の軽減や情報共有の迅速化を目的として導入されました。

「HER-SYS」の課題

長年FAX主体の手動作業で行われてきたため、医療機関でHER-SYSを導入・運用するには人員確保も労働時間の確保も未だ不十分な状態です。

また、陽性と判断された新型コロナウイルス感染者を適切に報告しないことも問題になっていると言われています。保健所、自治体、医療機関等の関係者間で、オペレーションを含めた新型コロナウイルス感染者情報を一元管理することが強く求められています。

新型コロナウイルス感染者情報・ワクチン接種管理業務を効率化するIT施策

HER-SYSの普及と促進には、まず保健所や医療機関等でのIT化が不可欠です。新型コロナウイルス感染者・ワクチン接種管理業務を効率化する有望なIT施策として、OCRとRPAを紹介いたします。

OCR

OCR(Optical Character Recognition/Reader)とは、手書きや印刷等により紙媒体に記載された文字をスキャンして読みとり、デジタルの文字コードに変換する技術です。

OCRの導入で情報のペーパーレス化を促進することで、物理的な保管スペースを縮小できます。また、新型コロナウイルス感染者の各種情報の一元管理・情報検索の迅速化、データの再利用促進を図ることができるでしょう。

RPA

RPA(Robotic Process Automation)とは、人間がコンピューターで行う定型作業を、24時間365日、自動化して処理してくれるロボットのことです。パソコンにインストールされたソフトにより、一連の作業工程を記憶して操作を代行します。

人間が行うとミスが生じやすいようなルール化された定型作業や、パソコン上で操作が完結する業務を、一定のスピードでミスなしに代行できるでしょう。

RPA管理ツール「UiPath Orchestrator」の主な機能5つ

RPA自動化には、スケジューリングや実行ログ等、ロボット管理が欠かせません。そのために有用なのがRPA管理ツール「UiPath Orchestrator」です。主な5つの機能を紹介します。

1:ワークフロー管理

RPA管理ツールがなければ、手動でワークフローのコピーを個別配布する必要があります。しかし、ツールを導入することで作成したワークフローを登録後、複数のロボットへ一斉配信できるので、手動での個別配布作業が不要になります。

また、RPA管理ツールにより、どのワークフローでどのバージョンが使用されているか把握し、古いバージョンのワークフローの利用を制限できます。バージョンの一元管理が可能であるため便利です。

2:ログイン情報のアセット管理

RPA管理ツールがない場合、ログイン情報の管理が脆弱です。ログイン情報の変更の度にワークフロー内の該当記述を発見し、手動での修正作業が必要になります。

RPA管理ツールにより、ログイン情報をアセットとして設定することで、ロボット作業実行時にアセットにアクセスしてログイン情報を取得し、各種システムへの自動ログインが可能になります。これにより、機密性の高いパスワード等、ログイン情報を安全に一元管理できます。

3:ロボットのパフォーマンス管理

RPA管理ツールがなければ、各ロボットの作業が正常に稼働しているか、正常に終了したか等を手動で把握する必要があります。また、エラー発生や野良ロボットの発生も手動で防止しなければなりません。

RPA管理ツールにより、ロボットの稼働状況やエラーの発生状況、各ロボットの優先度、実行プロセス等、全てのロボット作業を一元管理できるでしょう。野良ロボットの発生を防止し、エラー発生時の原因分析もできます。

4:ロボットのスケジュール実行

RPA管理ツールが導入されていないと、ロボット作業のスケジュール作成や稼働を手動で行わなければならず、スケジュール作成のミスや稼働の忘れ等、ヒューマンエラーが生じる可能性があります。

RPA管理ツールにより、各ロボット作業のスケジュール作成や稼働も自動的に行うことができるため、スケジュール作成のミスを防止できるでしょう。夜間や日祝の作業も含めた24時間365日の稼働が可能になります。

5:ロボットの実行履歴管理

RPA管理ツールがなければ、ロボット作業の実行ログを各PC端末のローカルフォルダから全て手動でコピーして収集しなければなりません。

RPA管理ツールにより、全てのロボット作業の実行ログの一元管理が可能になります。各ロボット作業の実行履歴の確認や複数のログの一括ダウンロードも可能になり、監査でログの提出が求められた際にも迅速に提出することができるでしょう。

ITで新型コロナウイルス情報管理を効率化できること4つ

情報のペーパーレス化や自動化は、保健所や医療機関等にて、HER-SYSを始めとするITによる情報管理につながります。ITでの新型コロナウイルス情報管理の効率化について、4つ紹介します。

1:入力作業

OCRを活用することで、予診票やワクチン接種券等、手書きや印刷による紙媒体に記載された情報をスキャンし、デジタルの文字コードに変換できるため、読み取りが容易になります。

また、RPAを活用することで、これまで手動で入力作業を行ってきた新型コロナウイルス感染者に関する各種情報を、パソコンのソフトで作業工程を記憶させることが可能です。ロボットに代行させて24時間365日、自動的に入力できるでしょう。

2:電子カルテ情報の収集

RPAを活用することで、入力作業に限らず、新型コロナウイルス感染者に関する各種情報(症状・行動歴・状態変化・電子カルテ・ワクチン接種履歴等)を収集する作業をロボットに代行させ、自動化することができます。

収集した情報をHER-SYSに登録する作業も、パソコンにインストールしたRPAソフトに作業工程を記憶させることで、電子情報を一元管理できるでしょう。

3:入力結果のPDF化

HER-SYSに登録された各種電子データをPDFに変換する作業も、パソコン上のソフトに一連の作業工程を記憶させ、ロボットに代行させ自動化することができます。

手動でPDFに変換する作業が不要になり、夜間でもロボット作業を行えるため、関係者の業務負担の軽減につながります。新型コロナウイルス感染者の氏名やデータの取り違い等のヒューマンエラーの防止にもつながるでしょう。

4:情報を関係者にメールで送る

RPAを活用することで、関係者のメールアドレスの一元管理が可能です。PDFデータを該当する関係者にメール送信する作業を、ロボットで自動化して代行できるため、関係者間の情報共有が迅速かつ容易になります。

ロボットでの代行作業は夜間や日祝も含めて24時間365日自動で行えるため、関係者間の迅速な情報共有と業務負担の軽減につながります。

RPAを活かした新型コロナウイルス情報管理の実例

入力作業、電子カルテの収集、PDFデータの作成と関係者へのメール送信等、RPAは新型コロナウイルス感染者の情報管理における、あらゆる作業のロボットによる代行自動化に有用です。

既に具体的にRPAを導入・運用している機関があります。その具体的な事例として、信州大学医学部付属病院と神奈川県三浦市の事例を紹介します。

信州大学医学部付属病院

信州大学医学部付属病院ではUiPath社のRPAプラットフォームである「UiPath」が導入されています。HER-SYSに係る入力作業、電子カルテの情報収集作業、入力結果をPDF化して関係者にメール送信する作業の自動化が実現しています。

入力作業は検査した患者の数だけ必要となり、手動作業で1件あたり約3分以上要していたことが、RPAによりワンクリックで対応することが可能になりました。

神奈川県三浦市

神奈川県三浦市では、新型コロナウイルスのワクチン接種に関する業務の迅速化のため、株式会社NTTデータによる「スマート自治体プラットフォームNaNaTsu(R)」を用いています。また、株式会社Blueshipによる技術支援が実施されています。

接種券・予診票の標準フォーマット、予防接種システムへの登録に係るRPAシナリオの導入を図っており、RPAによる自動化と事務効率80%削減を目指しています。

まとめ

OCRやRPAの導入は、新型コロナウイルス感染者の情報管理に有用です。また、UiPathやOrchestrator等のRPA管理ツールの導入により、ワークフローやログイン情報等も一元管理できます。あらゆるシステム作業のロボットでの代行・自動化が可能になるでしょう。

RPA管理ツールでは、ワークフロー作成担当者とロボット運用担当者の役割分担に応じた対応ができます。また、ロボット運用による全自動化等、自治体向けの様々な配信サービスも充実しているため、ぜひ導入されてみてはいかがでしょうか。

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