小売業

チェーンストア理論とは?

本記事では「チェーンストア理論」について紹介します。

チェーンストア理論について「多店舗経営のための手法」と認識している方も多いでしょう。しかし実際には、小売業において単に組織を巨大にするための経営手法ではありません。また、マニュアル化と規格化を駆使して店舗的・組織的に同じつくりの店舗を、全国に展開することだけがチェーンストア理論ではないことを事前にお伝えしておきます。この機会に、チェーンストア理論の本質を知り自社ビジネスへの取り入れを検討してみてください。

チェーンストア理論とは?

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チェーンストア理論とは?

チェーンストア理論は「10店舗以上の多店舗経営を本部主導で効率的に運営するための手法」を指します。その中心となる考え方が「集中化」および「標準化」です。

多店舗展開を実施する際に、商品の仕入を本社が一括で行えば、仕入れる商品数の絶対数を増やすことができます。つまり、1店舗あたりに仕入れる商品数が1日100点の場合、10店舗なら1日1,000点の商品を仕入れられます。こうすると、商品仕入におけるボリュームを増やせるため、メーカーや卸業者との価格交渉を有利に進めることができ、低コストでの仕入れが可能になります。仕入価格が安くなれば商品を競合店舗よりも安く提供でき、事業利益も高くなります。これが仕入れの集中化です。

集中化のメリットはこれだけではありません。店舗で使うレジ、棚、ショーケース、家具、カンバンなどもすべてまとめて発注し、同一の仕入先から購入できるため仕入商品以外のコスト削減にも繋がります。

そして仕入れの集中化を可能にするためには、商品構成や店舗のデザイン、オペレーションなどがすべて標準化されている必要があります。これらの要素が店舗ごとに異なっていると、店舗ごとの仕入れが必要になるため、ボリュームメリットを引き出すことができます。つまり、標準化は集中化を実施するために欠かせない取り組みなのです。

また、店舗ごとの組織構成や接客マニュアルなども標準化することで、効率的に質の高いサービスを提供できます。

チェーンストア理論の歴史

米国で100年以上の歴史をかけて成長していたチェーンストア理論が日本に出現したのは、1960年代のことでした。この時代はキューバ危機や米ケネディ大統領の暗殺、東京オリンピック開催など激動の時代でもあります。

当時日本では、生活水準の向上に伴って大型スーパーの業態が普及しはじめました。しかし、当時の日本は以前に比べて豊かになったとはいえ、米国等の列強諸国に比べるとまだ貧しさも残り、商品価格はメーカーや卸業者が一方的に決めていたため市場は硬直状態にありました。こうした当時の小売市場に危機感に対して「革命を起こさないといけない」と行動を起こしたのが経営コンサルタントの第一人者、渥美俊一氏(故人)です。

渥美俊一氏は1952年に東京大学法学部を卒業後、読売新聞社に入社し経営技術担当記者として長年報道に携わります。そして1962年、米国のチェーンストア理論を正確に学ぶための、日本で唯一の教育機構である「ペガサスクラブ」を設立します。そのコンサルティング企業が日本リテイリングセンターです。

当時、30代の若手経営者だったダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、ジャスコ(現イオングループ)の西川俊男氏、イズミヤの和田満治氏など、日本の小売業を代表するそうそうたるメンバーが渥美俊一氏の指導を受け、自社経営を通じてチェーンストア理論の確立に尽力しました。

各社経営者が目指したのは米国を代表する大型スーパーマーケットの「ウォルマート」のような業態です。ウォルマートは代表的なチェーンストア企業であり、現在では50兆円という売上高を誇っています。ウォルマートは圧倒的な購買力により、メーカーに対して強気の価格交渉を実現し、驚くほどの安価商品が店舗に並んでいます。

ウォルマートの経営手法には批判もあるものの、圧倒的に安価な商品を提供することで、低所得者層の生活水準向上に寄与した事実もあります。日本においても同じように、大型店舗を展開して、圧倒的な調達力を持ち、低価格商品を提供するというのが各社の思想でした。

チェーンストア理論の絶対神話が崩れた1990年代

日本の小売業から絶対的な信頼を得ていたチェーンストア理論は、徐々に衰退の道を辿っていきます。1980年代後半にはバブル経済がはじけ、1990年代以降は20年間にわたってデフレ経済が続きます。その結果として消費者の購買意欲が減退し、貯蓄志向が高まりました。それを売りにしたディスカウントストアやドラッグストア、利便性を中心に据えたコンビニエンスストアといった新興小売事業が、事業を拡大していきます。

一方、総合スーパーやスーパーマーケットなどの小売業界は、外的環境の変化と大規模な小売店舗法の廃止に伴う外資小売業(ウォルマートやテスコなど)の日本上陸、楽天やAmazonに代表されるECサイト企業の発展もあり、チェーンストア理論に対する信頼はすっかりと下がってしまいました。

チェーンストア理論「ハイブリッドモデル」の登場

チェーンストア理論は以前に比べて影を潜めがちですが、その考え方自体が間違っていたわけではありません。むしろ日本市場に根付いたと言っても良いのかもしれません。集中化と標準化がもたらすメリットはやはり大きいですし、企業の利益向上に貢献してくれます。2010年代に入り、さらに別の変化が起きました。チェーンストア理論における「ハイブリッドモデル」の登場です。

2010年代以降はアベノミクス効果もあり、日本経済が徐々にデフレ経済から脱却します。その影響で低下価格消費が徐々に変化し、消費者の購買意欲も回復してきました。なおかつ、消費者ニーズはデフレ経済時のような低価格一辺倒ではなく、低価格高品質、高価格超高品質などニーズが多様化していきます。

そうした中でチェーンストア理論の良さと言える「仕組み化」の部分による効率性をキープしながら、本部権限の一部を店舗に移譲するハイブリッドな経営手法が確立されてきています。それが、チェーンストア理論に基づいた個店経営です。

今までのチェーンストア理論と個店経営は対の関係にあるのではなく、チェーンストア理論の進化系が個店経営だと考えられるようになっています。つまり、チェーンストア理論という土台(仕組み化された経営)の上に店舗があり、商圏に最も近いところにいる店長・部門主任・従業員・パートタイマーなどの人が価格や品ぞろえやサービスなどの権限を一部引き受けることにより、顧客視点の付加価値提案が生まれ、その結果として顧客エンゲージメントが強化されます。

こうしてハイブリッド化が浸透したことで、チェーンストア理論におけるハイブリッド理論が注目されるようにもなっています。

チェーンストア理論を実践するために必要なシステム

チェーンストア理論を正しく、かつ効果を生むように実践するためには優れた戦略とそれを実現する人材、さらにはそれらを全て支える情報システムが必要不可欠です。多店舗経営の場合、当然のことながら本部から物理的に離れた場所で店舗経営を行っています。刻々と変化する市場に対して本部の戦略が店舗経営を大きく左右する現代社会に置いてオペレーションや情報共有を徹底することが必須となっています。そのためには専門特化されたシステムが必要不可欠であり、システムの良し悪しが経営を左右すると言っても過言ではありません。これを機会にそのようなシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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