多店舗経営を実現するために欠かせない「チェーンオペレーション」。本部への集中化と各店舗での標準化を実施することで、効率的かつ利益率の高い店舗経営を目指せます。本記事ではこのチェーンオペレーションについて解説するとともに成功する多店舗経営のための3Sについて解説します。
チェーンオペレーションとは?
多店舗経営のための方法論を記した概念を「チェーンストア理論」と呼び、それを実現するための具体的な経営手法がチェーンオペレーションです。この経営手法には、以下のような大きな3つの特徴があります。
- 仕入業務を本部へ集中化する
- 販売は店舗が、全体の機能は本部が担当する
- 店舗運営の標準化を図る
多店舗展開を実行する中でまず考えるべきことは「仕入れを本部に集中して有利な条件で商品・原材料を仕入れる」ことです。小売業・飲食業において、提供する商品の販売価格に直接影響する要素が仕入価格です。つまり、品質を保ちながら仕入価格をできる限り抑えられれば販売価格に反映して競合他社よりも安く商品を提供でき、かつ利益率の向上も望めます。では、仕入先との価格交渉を成功させるポイントは何か?答えは「大量仕入」です。
商品・原材料というのは基本的に、購入点数が多いほどディスカウントが適用されます。しかし店舗ごとに仕入れを行っていると、仕入商品の絶対数が減ってしまうことから、価格交渉すらできず、販売価格の低減や利益率向上といった取り組みは実現できません。そのため、仕入業務を本部に集中化することで仕入の絶対数を増やし、有利な条件で商品・原材料が仕入れられるようになります。また、店舗ごとの商品品質が一定にするという狙いもあります。
チェーンオペレーションのメリット
チェーンオペレーションで多店舗経営を目指すメリットは、仕入価格の低減だけではありません。販売を店舗に、それ以外の機能を本部にと分担することで、経営効率化を図ることが可能になります。経営や業務を店舗ごとに実施すると、本部での経営情報統合が難しくデータ分析にのっとった経営戦略が立てられなくなります。また、店舗のオペレーションが煩雑になるだけでなく、各店舗における経営の手腕に差が出ることから売上の一極化が起き、事業全体で見た際の売上低下に繋がる可能性が高いでしょう。
店舗運営の標準化もさまざまなメリットを生み出します。まず、「ブランド価値の画一化」です。多店舗経営を成功させるにあたり欠かせないことは、消費者がどの店舗に訪れても同じ商品を購入でき、同じサービスを受けられることです。
たとえば、ファミリーレストランの中でいつも同じ系列店を利用している人は、同じ食べ物・同じ味・同じサービスを期待して来店します。つまり、一定の品質を求めているのです。そうして消費者のニーズに応えるためには、ブランド価値の画一化を図り、どの店舗においても同品質の商品・サービスが提供できるよう、店舗経営の標準化に努めなければいけません。
標準化の中には事務作業や研修教育なども含まれており、店舗・サービスだけでなく「人材の質の画一化」も重要です。
チェーン店舗の分類
チェーンオペレーションによって展開した多店舗のことを、「チェーン店舗」と呼びます。これには以下のような3つの分類があります。
1. レギュラーチェーン(コーポレートチェーン)
1つの企業が各地に直営店を出店し、それらの店舗経営を本部で集中的に管理するという典型的なチェーン店舗です。主にスーパーマーケット、専門店、飲食店などで多いチェーンオペレーションです。
店舗経営を本部が集中管理するため、大量仕入が可能になり仕入価格を低減し、かつ調達活動が行いやすくなります。高い購買力を持つことで価格交渉を有利に進められ、薄利多売ビジネスの確立も可能です。
2. フランチャイズチェーン(フランチャイズ契約)
優れた商品・営業手法を持つ企業(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)を募集し、加盟店に地域内で一定の販売権を与えて組織化し、加盟店を直営店と同じように本部が集中管理するチェーンオペレーションです。主にコンビニエンスストア、飲食業見られます。
フランチャイズチェーンでは、加盟店は資本的には独立しているものの、本部に対して一定の契約料やロイヤリティを支払うのが特徴です。一般的に「スーパーバイザー(監督者)」による徹底した経営指導が行われ、加盟店は本部の方針・指導に従うことになります。
本部企業がフランチャイズチェーンを展開するメリットは、直接出資するのは加盟店であり、多額の資本を投下せずに短期間で市場を拡大できる点です。コンビニエンスストアではフランチャイズ率が9割を超えています。
3. ボランタリーチェーン(任意連鎖店)
フランチャイズチェーンでは経営の独立性は維持しているものの、本部統制が厳しく店舗としての独自性を発揮できないという難点があります。そこで、経営の統制力を維持しながら店舗としての独自性を発揮できるチェーンオペレーション、ボランタリーチェーンです。
これは、中小の小売事業者が経営の独立性を維持しながら、共同で仕入や販売促進活動を行うことによってスケールメリットを追求することを目的にした組織です。アパレル店や食料品店などによく見られます。
ボランタリーチェーンでは店舗としての独自性を保てるため、加盟店ごとのブランドを確立することが可能です。一方で、本部統制が緩いため組織としての統一的な活動が行いづらいというのがデメリットとなります。
チェーンオペレーション成功の3原則(3S)
チェーンオペレーションを成功させるために欠かせないとされている3つの原則を、それぞれの頭文字を取って「3S」と呼びます。それが、「Standardization(標準化)」「Simplification(単純化)」「Specialization(専門家)」の3つです。
1. 「Standardization(標準化)」
チェーンオペレーションで多店舗経営するにあたり、どの店舗でも同じような結果が出るように共通点を見出し作業を統一することを「Standardization(標準化)」といいます。これにより、商品や原材料の仕入、生産、在庫、販売まで一定のサイクルを作り、店舗ごとの管理差を無くしてブランド価値の画一化などを図ります。
2. 「Simplification(単純化)」
作業を簡潔にした、誰もが無理なく一度で作業内容を理解できるようにすることを「Simplification(単純化)」といいます。ブランド価値の画一化、教育コストの最適化などを実現するのは、複雑な作業を細分化し、1つ1つの作業を簡素化することが必要になります。店舗では正社員だけでなくパート・アルバイトを雇うことも多いため、役職の違いはあっても同じように作業ができるようにしなければいけません。
3. 「Specialization(専門化)」
3つめの原則は、店舗で取り扱っている商品に対して、そこで働く誰もが理解を深めて専門家として販売活動にあたることです。これを「Specialization(専門家)」と言います。もちろん、専門知識といっても一般に理解できる知識が基本です。簡単な情報でも徹底した「Specialization(専門家)」が店舗でのサービス品質を大きく向上させます。
いかがでしょうか?多店舗経営を成功に導くためには優れたチェーンオペレーションが必要になります。この機会にチェーンオペレーションを見直し、より効率化したチェーンオペレーションを目指してみてはいかがでしょうか?