自動車業界で注目されるトレンドにCASEがあります。この記事ではCASEとは何なのか、その背景や今後の展望にまで触れています。自動車業界の未来を担うと言われるCASEを知れば、もっと突きつめたくなるかもしれません。
CASEとは
CASEは、近年自動車業界で重要視されているトレンドの1つです。現代の自動車技術はCASEを基軸に発展していると言っても過言ではなく、業界内で最も重要視されている言葉でしょう。
これは、「Connected」「Autonomous」「Shared &Service」「Electric」の4つの頭文字から取った言葉で、以下のような意味合いがあります。
Connected(コネクテッド)
「Connected(コネクテッド)」は、CASEのCの部分を担う言葉です。これは直訳すると「接続されている」となりますが、具体的には「ICT(情報通信技術)と繋がった車」のことを指します。
ドライバーであればICT技術と繋がれた車といえば、「カーナビゲーション」や「アプリケーション」などを思い浮かべる方も多いと思います。特にリアルタイムの渋滞情報などは、情報通信技術との繋がりの1つです。CASEでは、もっと深い繋がりである「双方向での通信」を実現します。
たとえば、ドイツのダイムラーで開発されているのが、駐車場の空き状況を自動で把握するシステムです。「コネクテッドベースドパーキング」と呼ばれ、走行ルートにある駐車場の状況を車載ディスプレイに表示します。このサービスは、今後発売されるメルセデス・ベンツにおいて適用される予定です。
さらに国内で展開されているのが、トヨタによる「DCM(Data Communication Moduleです。DCMは、車専用の通信機で、24時間365日サーバーとデータ通信を行い、「T-Connect」というサービスを展開します。
T-Connectでは、「安全サポート」「ナビゲーション」「アプリケーションによるデバイス連携」といったことが可能です。これ以外にも、スバルでは「STARLINK」、日産では「Nissan Connect」というように、さまざまなコネクテッド技術が各自動車メーカーで展開され始めています。
Autonomous(自動運転)
CASEのAは、「Autonomous(自動運転)」を指します。これはその名の通り、「人が運転しなくても自動車が自律的に走行するシステム」のことです。これを「完全運転自動化」と言いますが、現在の技術では実現するには難しいため、以下のようにいくつかのレベルに分けて段階的に実施しています。
- レベル0:自動化していない車
- レベル1:人の運転を自動システムが支援する車
- レベル2:特定の条件でのみ自動運転する車
- レベル3:限定的な場所での自動走行が可能な車
- レベル4:限定的な地域でのみ自動走行が可能な車
- レベル5:完全な自動走行が可能な車
現在、国内外の自動車で主に販売されているのが、レベル1~2の車です。レベル1では、「急発進・前方に障害物があるときのブレーキ」や「前の車への追従」「レーンキープ」といった運転支援を行います。また、レベル2では、レベル1のシステムが全て組み合わさり、目を離さないことを前提にハンズフリーで自動走行が許可されています。
さらに2021年3月には、レベル3の自動車「レジェンド」がホンダから100台限定で発売されました。Honda SENSING Eliteと呼ばれる技術を搭載しており、「高速自動車国道」、「都市高速道路」、それに接続する「自動車専用道路」の3つの領域で自動運転が可能です。
これらの道路で30〜50km/hの速度になると、主に渋滞時、自動運転が実施されます。現在国内では、レベル3までとなりますが、海外ではタクシーなどの商用車にレベル4システムが搭載されています。
Shared & Services(シェアリング/サービス)
「Shared & Services(シェアリング/サービス)」はCASEのSを担う言葉です。これは「カーシェアリング」や「ライドシェアリング」といったサービスのことを指します。
カーシェアリングでは、事前に会員登録すれば24時間好きなときに車が借りられます。基本的にガソリン代を払う必要もなく、気軽に利用できるというのが大きなメリットです。
一方、ライドシェアリングは、日本では法規制があるためサービス展開されていません。しかし、海外の市場規模は年々大きくなっており、アメリカ、中国、ヨーロッパ、東南アジアなど多くの国で利用されています。
サービス形態には、「相乗り」や「バンによる多人数の配送」、アプリなどでマッチングする「TNC形態」などがあります。特にTNC形態は利用者が増えており、アメリカの「UBER」や「Lyft」といった企業が有名です。
これは日本でいう「Uber Eats」の自動車バージョンのようなもので、アプリケーションで予約すると一般ドライバーが目的地まで配送してくれるというサービスです。
Electric(電気自動車)
CASEのEは、「Electric(電気自動車)」を指します。俗にいうEV車のことで、ガソリン駆動の自動車に変わって電気で走る車のことを指します。日本ではまだ市場シェア率が低いですが、海外では徐々に普及が進んでいます。
というのも電気自動車は、CASEとの親和性が非常に高いシステムなのです。現在主流であるガソリン車は、「走行」「電気変換」においてさまざまな過程が必要になります。一方、電気自動車車は、電気をそのまま使用するので「情報通信端末」「自動運転システム」とのシステム連携が容易です。また、カーシェアサービスのステーションに電気の充電スポットを設置すれば、待機中に充電もできます。このように大きな利点があることから、電気自動車はCASEの要ともされているのです。
CASEが注目される背景
CASEが重要視される背景には、温室効果ガスの問題と国外メーカーとの競争の激化が挙げられます。ここではCASEとこの2つの問題がどのように絡んでいるのかを解説していきます。
温室効果ガス削減目標
温室効果ガスに関する問題において、近年の地球温暖化の深刻化に伴い、さまざまな国でCO2排出量を削減する義務が設けられました。これはパリ協定に基づくもので、日本では2030年の目標として「-46%(2013年度比)、最高50%」を掲げており、2050年には「ネットゼロ」達成を表明しています。
そのため、多くのCO2を排出している「自動車」における改革が必須になったのです。そこで現在開発が進んでいるのが、先述した電気自動車や、水素自動車です。まだまだCO2に対する問題は多くありますが、これらの自動車は解決手段として期待されています。
国外メーカーとの競争の激化
国外メーカーとの競争の激化の原因の1つに、CASEを掲げたのがダイムラーであるということが挙げられます。CO2問題が表面化する中で、ダイムラーがこうした新しい技術を取り入れて開発・展開していくと表明したことは、多くの自動車メーカーに衝撃を与えました。これは日本も例外ではありません。
特に近年、海外では、MaaSと呼ばれる交通サービスが普及し始めています。MaaSはフィンランド発祥のサービスで、「鉄道」「バス」「タクシー」「レンタカー」「レンタサイクル」「カーシェア」といった異なる交通手段を、1つのサービスとして結びつけようというものです。
たとえば、アプリケーションで目的地を選ぶと、上記の移動手段の中から最適な交通手段を選択してくれます。さらに異なるサービス同士の決済も1つのアプリケーション上で行えます。このようなことから、MaaSはCASEにより開発された新しい自動車との親和性が高いのです。
こうした未来的なサービスが、他国では続々と開発されています。現在、世界的に、日本車の普及率が高くなっていますが、こうした技術が他国で台頭すれば、追い抜かれる恐れもあるわけです。
CASEの今後の展望について
2020年9月、経済産業省から『CASE技術戦略プラットフォームまとめ』が発表されました。これは、CASEの具体的な取り組みについて触れられたもので、CO2の低減策や動力部の電動化、ADAS(先進運転支援システム)/AD(自動運転)・コネクテッド技術、基盤的技術など、さまざまな技術の具体的な方向性についてまとめられています。このことからも、いかにCASEに対する期待が大きいのかが分かります。
一時期、コロナ禍においてカーシェアリングを不安視する流れも生まれましたが、現在ではマイカー通勤を奨励する企業も増えました。そのため、対面受付を必須とするレンタカーよりもスマホアプリで完了するカーシェアリングの利用が再び増え始めています。
また、SDGsにも見られるような世界的な環境意識の高まりもあり、CO2排出量の抑えられる電気自動車はカーシェアリング業界でも一般化されることが予想されます。まだ高額のイメージの強い電気自動車ですが、カーシェアリングの利用で身近な存在となるでしょう。
さらに、自動車業界で培われたCASEですが、トヨタはこのトレンドを都市計画に発展させようとしています。「ヒト中心のもっといい街をつくる」というビジョンのもと、ソーシャルディスタンスをしっかり保ちつつ、モビリティーを制御するコネクテッドシティー・Woven City(ウーブン・シティ)の開発を静岡県裾野市にて進めています。
このようにCASEは自動車業界を飛び出して、広がりを見せているのです。
まとめ
CASEには、ICT技術との連携、自動運転、カーシェア、電気自動車など、さまざまな意味合いがあります。日本国内でもそれらの技術の有用性は叫ばれており、決して無視することはできません。経済産業省も注目するCASEは、自動車業界のみならず、都市計画に発展しつつあります。今後もCASEは自動車産業をはじめ、さまざまな分野で扱われるでしょう。