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DX失敗の6つの理由と失敗の割合は?3つの成功事例から学ぶ

DX失敗の6つの理由と失敗の割合は?3つの成功事例から学ぶ

DXを推進するために新しいシステムを導入したものの、業務との親和性に乏しく現場がシステムをうまく使いこなせない結果、サンクコストになってしまう失敗事例があります。この背景には、経営者のディレクション方法が間違っているケースや現場の理解を得られないままシステムの導入を進めてしまったなど、さまざまな要因が考えられます。

本記事ではDXを成功させるにはどうすればいいのか、「失敗」にフォーカスし、その対応策について見ていくことにします。

DXとは

DXとは

DX(ディーエックス)とはDigital Transformationを略した言葉で、2004年にスウェーデンの大学教授が初めて提唱しました。DXに通底する概念は、デジタル技術をフルに活用してこれまでにないビジネスモデルを構築し、新しい付加価値を創造するという考えです。その中で、競合他社よりも優位に立つということがDXが目指す視点です。

DXと聞くと、アナログを通じたこれまでの業務の進め方をデジタルに置き換えると考えるかもしれません。しかし、DXにおいては、デジタル技術の導入は目的ではなくあくまでも手段として捉えており、既存の価値観を超えた新しい価値の創造による競争優位性を確立するという考えが重要視されます。

DXの定義について、詳しくは下記の記事でも解説していますのでぜひご覧ください。
DXの定義とは?重要視される5つの理由や進め方・成功事例を紹介

DXに失敗している企業が多いのは本当か

DXに失敗している企業が多いのは本当か

経済産業省は2022年7月に、「DXレポート2.2」を発表しました。本レポートは、政府の立場から企業のDXの導入を後押しし、サポートすることを目的としています。

本レポートで報告されている企業を対象にしたアンケート調査によると、DXの取り組みを行っているものの、新しい付加価値やサービスの創造という観点で実際に成果が出ているのは1割にとどまるとの報告があります。

7割は、DXに取り組んでいるけれどまだ具体的な成果が出ていない、DXを検討しているけれど取り組みができていない、あるいは検討自体をしていない企業が占めます。こうしてみると、DXによって成果が出ている企業は少なく、成功しているケースはまだ少ないといえるでしょう。

なお本アンケート調査では、35%近くの企業がDXの導入を今のところ検討していないとの結果が出ています。

参考:DXレポート2.2(経済産業省)

DX失敗の主な理由と解決策

DX失敗の主な理由と解決策

DXを成功させるにはどのようなことに気を付ければいいのでしょうか。DXが失敗する主な理由を6つピックアップし、それぞれに対する解決策について詳しく見ていきます。

経営者の理解不足

DXの本質について経営者が理解していないことは、企業にとって致命的な問題であるといえます。なぜなら、DXは会社としての事業の方向性や、売上収益を左右するほどの大きな可能性を秘めているからです。

失敗の理由①

経営者がDXの本質を理解せず、競合他社が実施しているDXの導入事例を見よう見まねで自社に適用してしまうと、思ったほどに成果が出ないことがあります。DXの理念の元に新しいシステムを導入したものの、現場の業務プロセスにマッチせず逆に無駄な工数を増やしてしまったり、業務負担となってしまったりするケースもあるでしょう。

DXを単なる既存業務のデジタル化として捉えてしまうと、現場が追いつけず、このような問題が発生します。

解決策①

DXの導入はそれなりの費用と時間というコストが長期的にかかり、ある意味で企業として負担を強いる大きなプロジェクトとなります。DXを成功させるには、経営者がオーナーシップを持って、導入前の検討から導入後の運用フェーズまでリードしてくことが重要です。

そのためには、DXによってどのような付加価値を生み出し、それによってどのような成果を期待するのかについて言語化し、全社員に説明できるような姿勢が経営者に求められるといっても過言ではありません。

変革への抵抗がある

形としてDXを導入したものの、期待した成果が出ないケースがあります。その背景には、現場メンバーがDXによる変革について一定の理解を示さず、DXが持つ本来の可能性を引き出せていないことが理由の1つです。

失敗の理由②

DXには新しいシステムやツールの導入が伴います。その際には、これまでの業務フローやオペレーション方法を見直していくことや、刷新していくこともあるでしょう。

しかし、業務を行う現場のメンバーが既存システムに依存し、DXによる変革になかなか理解を得られないことも考えられます。例えば、新しいツールの操作方法を習得しようとしないなど、業務プロセスの変更に難渋を示すような問題が発生すると、経営者が当初描いていたDXを推し進めることが難しくなります。

解決策②

現場メンバーがDXによる変革に対して抵抗があるのは、経営者がトップダウンでDXの理念やビジョンを説明していないことに起因するケースがあります。

DXは、各従業員の協力なくして進めることはできません。解決策①と同様に、全社員が集まる会議体で経営者がDXを推進する理由やその根拠をきちんと説明していくことが重要です。その際には、DX導入によって期待できる売上の増分や削減できる工数などの定量データなどがあると、現場メンバーに理解してもらいやすくなるでしょう。

目標設定のミス

DXを推進するに当たって、目標の設定は非常に重要です。目標の設定の仕方次第で、DXによる成果が出ているのかどうかの判断が左右されます。目標設定を誤ると、事業の方向性にも関わってくる問題となります。

失敗の理由③

DXの導入を手段として捉えるのではなく目的として設定してしまうと、DXを導入したことで目標が達成されたと誤解してしまいます。それはDXの自己目的化であり、DXが本来目指すものは異なります。

よくあるケースとして、工数削減を目的に既存業務のプロセス管理をクラウドツールへ移行してみたものの、思ったほど成果が出ずに運用コストばかりかかってしまう例があります。これは、DXを導入すれば必ず成果が出ると過信してしまった結果ともいえます。

解決策③

DXは、新しい価値を創造することでこれまでにないビジネスモデルを構築することにその目的があります。DXはあくまでもそのための手段として考えてください。目標はその目的に沿って設定することが適切です。

その際に、目標はできるだけ売上や客数、マーケットシェアなどの定量データとして設定しましょう。定量データを根拠とすることで、DXの成果を可視化しやすく誰もが理解できるようになります。

適切なツールが選択できていない

DX推進と題して提供されているツールの一部は、安価で済むことはなく、企業の年度予算を左右するほど高額なものもあります。ツールは導入後に適切に運用され、フル活用することが肝心です。適切なツール選びは慎重過ぎることはないでしょう。

失敗の理由④

DXを導入する際にERP、CRM、MAツールなどのデジタルツールを導入することがあります。しかし、それらのツールを導入してみたものの、ツールと現場の業務プロセスとの間で親和性が乏しくかえって不必要な工数が増え、業務効率が悪くなってしまうケースがあります。

昨今デジタルツールは数多くあり、ツールの導入には初期費用や運用コストが発生します。適切なツールを選択しないと取り返しのつかないことになってしまうかもしれないので、十分に検討してください。

解決策④

ツールを選定する前に、業務を行っている現場のメンバーと膝を突き合わせ、何が問題となっていて何を目指すのか、しっかり議論する機会を設けることが重要です。その上で、どのツールが業務上ふさわしいのか、事業部門と開発部門とが共に吟味するとよいでしょう。

その他の方法として、ツールを提供するベンダーの営業担当者に対して自社の問題を伝えて議論を重ねたり、コンサルティング会社に提案してもらったりする方法もあります。

DX人材が不足している

DXを推進するに当たって人材が不足しているという問題は、いくつかの企業が直面している事実です。そのような企業にとって、新たな人材の確保や従業員のリスキリングは、これらの問題に対する処方箋といえます。

失敗の理由⑤

DXの推進には、一定のITリテラシーが要求されることも事実です。ツールを導入する際には、要件定義の時点からエンジニアのサポートを必要とします。デジタルツールを使いこなせるようになるには、従業員がそのツールに関して勉強して慣れていくことも重要です。

しかし、ツールを導入するためのエンジニアを確保できなかったり、従業員にITリテラシーを身に付けさせたりするのが困難な場合、DX人材の不足という事態を招いてしまいます。

解決策⑤

DX人材が不足していて開発を進めるエンジニアが十分でない場合、新たに人材を採用するという方法があります。フリーランスのエンジニアを採用し、ツールを導入する一定期間のみ開発に従事してもらうという方法も選べます。

従業員を教育してITリテラシーの向上を図ることは、ツールを適切に運用し、業務の効率化や売上を向上させる点で重要です。DX教育を専門的にプログラムとして提供する外部パートナーに依頼するのもよいでしょう。

推進方法が誤っている

会社は、人材なしには業務を動かすことができません。便利なデジタルツールを導入しても、それを使いこなすのは従業員です。現場がうまく回らないと、せっかくコストをかけて導入したデジタルツールも無駄になってしまいます。

失敗の理由⑥

DXの導入は既存の業務プロセスを最適化するだけではなく、場合によっては業務プロセスそのものを刷新することもあります。そのような中で現場の業務を進めるメンバーの理解が得られず、習得が進まないままデジタルツールの導入を進めてしまうと現場が困惑し、かえって業務が混乱してしまうこともあります。

DXは、社内に浸透して適切に運用されるまでに非常に時間がかかるため、経営者も根気がいる大きなプロジェクトです。

解決策⑥

従業員が能動的に学習し、DXが社内に浸透するようにするためには、従業員に対してDXを導入することのビジョンを語るだけでは不十分です。学習プログラムなどを用意して学び慣れてもらい、いかに業務が効率化され仕事が楽しくなるか実感してもらうことが重要です。

上層部が自ら率先してデジタルツールを活用し、その効果についてデモンストレーションするのもよい方法でしょう。

DXに失敗しないために|成功事例から学ぶ

DXに失敗しないために|成功事例から学ぶ

ここでは各企業がどのようにDXに取り組み、成功するためにどのような工夫を凝らしているのか、具体例を見ながら理解を深めていきます。

株式会社フジワラテクノアート

株式会社フジワラテクノアートは岡山県に拠点を置く、醤油や日本酒などの醸造食品向け機械を製造するプラントメーカーです。同社は部門を横断する委員会を立ち上げ、自社主導でDXの推進に取り組んでいます。

成果

同社は3年間をかけて、21にわたるデジタルツールの導入を自社主導で行いました。その結果、業務工程の可視化による効率的な製造の実現、業務上のミスの削減、紙の使用料削減、醸造に必要な部品の納品期間の短縮、従業員のITリテラシー向上など、さまざまな成果を上げることができました。

失敗しないためのポイント

同社の経営者はDXを進める際に「2050年へ向けて醸造によって豊かな循環型社会に貢献する」というビジョンを設定しました。そのビジョンを実現するための手段がDXであることを、繰り返し従業員に説明しました。

ここでのポイントは、これらを通じて、各従業員がDXを導入することの目的や理由について理解できるようにし、従業員が能動的にDXに取り組むよう経営者の立場から意識改革を行った点にあるといえるでしょう。従業員がDX推進を自分ごととして捉えたことにより、社外のパートナー会社に頼ることなくDXの内製化を加速させることができたのです。DXをビジョン実現のための手段として取り組んだことで、価値のある業務に時間を費やすことができるようになった、と同社は言及しています。

参考:DX Selection2023(経済産業省)

株式会社土屋合成

株式会社土屋合成は群馬県に会社を構える、精密部品や時計向けの外装部品を製造するメーカーです。同社は、経営者が主導権を持ちながらも各部門の若手従業員を招集し、DX課を立ち上げ、全社でDXの推進に取り組みました。

成果

同社は「24時間常に稼働している工場」の実現と、全製品に関する製造データを自動的に取得して部門横断で活用できるようにするため、DXの推進に取り組んでいます。

業務工程にデジタルツールを導入することによって、コロナ禍以前と比較して売上が約120%となり、過去最高益を達成しました。少ない人数でも24時間効率的に製造できるようになり、より付加価値を生み出すための新しい製品の試作や量産に注力できるようになったということです。

失敗しないためのポイント

DXを進める際に、従業員から「自分の仕事を奪ってしまうのではないか?」「新たな仕事が増えるのではないか?」などのネガティブな意見があったといいます。そこで経営者は、自ら率先してデジタルツールを導入。デジタル化によって効率的に業務を進められ、仕事が楽になるという点を従業員に理解してもらうよう尽力しました。

ポイントは、デジタルの活用を通じて余った業務時間はやりがいのある仕事に使えるようになる、という事実を積み重ねた点にあります。

参考:DX Selection2023(経済産業省)

グランド印刷株式会社

グランド印刷株式会社は北九州市に拠点を構える、シルクスクリーン印刷やデジタルプリントを専門とする印刷会社です。デジタルによって各事業を連携するシナジー効果によって、新しい価値を創造することを理念にDXを推進しています。

成果

同社は、部門横断でデータを共有できる社内デジタルプラットフォームを立ち上げました。その結果、データに基づいた新規事業を年に2、3個立ち上げることができるようになりました。

デジタルの活用を通じて、業務の効率化のみならずデータを社内システム上で蓄積できることで、データの属人化からも抜け出すことができました。その結果、コロナ禍でも7000社のクライアント企業を獲得し、最高売上を3年間連続で更新したようです。

失敗しないためのポイント

業務の効率化やクライアント視点でのサービス改善について、自ら提案し実行できる人材を「DXプロデューサー」と定義し、社内で育成しています。また、各従業員のレベルに応じて学習できるプロジェクトを立ち上げ、従業員自らがDXに取り組める仕組み作りを行いました。

システム面では、外注1社、社内担当者1人という既存体制では運用保守の人材体制としてリスクがあったため、外部エンジニアと社内担当者2人の体制に移行しています。この点も成功のポイントの1つといえるでしょう。

DX失敗から学ぶ教訓

DX失敗から学ぶ教訓

これまで見てきたDXの失敗要因と成功事例を振り返ると、DX失敗から学ぶ教訓は主に以下の3つでしょう。

  1. 経営者や従業員を含めた全社員が地道にDXに取り組み、1つずつ着実にDXへの正しい理解と学習を深める
  2. 上下関係にとらわれない各ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを通じてDXを浸透させる
  3. 経営者がビジョンを設定し、DXはそのための手段であるということを従業員にきちんと説明した上でロードマップを設定する

まとめ

DXという概念が初めて提唱された2004年から20年が経過した現在、日本国内では数多くのDX事例が出てきています。そこには成功した事例もあれば失敗した事例もあり、各企業が試行錯誤しながらDXを進めてきたことが分かります。

DXを通じて具体的な成果が出たという企業が1割にとどまる日本では、失敗事例からの学びを活かしていくことがむしろ重要であるといえるでしょう。

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