ビル管理業務を効率化するビル管理システムの導入が進んでいます。これからビル管理システムを選ばれる方であれば、各システムの特徴や市場シェアなどについて気になるはずです。そこで本記事では、ビル管理システムの現状や、その特徴またシェアについて詳しく説明していきます。
ビル管理システムの動向とシェア
BEMS(ビルエネルギー管理システム)やBAS(ビルオートメーションシステム)といったビル管理システムは、2010年以降普及率が着実に増加しています。このような傾向にはいくつかの契機がありますが、最初のきっかけは東日本大震災と言えるでしょう。この震災では、東日本の幅広い地域で停電が発生しました。多くの企業も、深刻化する電力不足へ対処するため、ビルや工場での電力需給を見直すようになったのです。
さらに2012年には、BEMSの導入に補助金を提供する「BEMSアグリゲータ」によってシェアが拡大しました。この事業は2013年には終了したため2014年度のシェアは一時縮小したものの、現在までさらに普及が広がっています。
株式会社矢野経済研究所の2019年度BEMS/BAS市場調査では、「2018年度の市場規模は前年度2.0%増の1386億円」「2019年度の市場規模予測は1,400億円」「2020年度の市場規模予測は1,420億円」と、着実に市場規模が拡大し続けています。
市場拡大の主な要因としては、ビル管理システムのオープン化の発達に加えて、サービスの低コスト化、大規模なビルの増加といったさまざまな要素が考えられます。特に2020年に東京オリンピックが開催される予定であったため、新しい施設の建設に伴って市場は伸びました。
また、既存ビルの案件でも、空調機の新設などでBEMSの導入を進めるといった動きもあり、クラウド技術の躍進と共に今後も普及が持続する見込みです。矢野経済研究所では将来の市場規模の展望として、「2025年度が1,460億円」「2030年度が1,500億円」と変わらず堅調に推移していくと予測しています。
世界のビル管理システム製品のおすすめ3選
ビル管理システムには、さまざまな製品があります。ここでは、ビル管理システムの導入を考えている管理者におすすめの製品を3つ紹介します。
ハネウェル(HONEYWELL INTERNATIONAL)
ハネウェルは、米国を本拠とする複合企業です。ビル管理システムだけでなく、自動車・航空宇宙・住宅など幅広い分野で高度な技術を提供しています。ビル管理マネジメントの業界では世界1位のシェアを誇り、業界最大手といっても過言ではありません。
ハネウェル製品の大きな特長は、「暖房・換気などの空調、照明の管理、セキュリティの管理」だけでなく、「防火、ホテル客室のためのソリューション」など幅広いサービスを提供している点です。これらのサービスは「オフィスビル、商業施設、博物館、ドーム・球場・大学」など、世界中で多くの導入実績があり、ニーズに合わせて柔軟なサービスを提供しています。
例えば、上層階がオフィス、低層階が小売エリアに分けられている高層ビルでは、一般利用者と企業訪問者が入り乱れるため、セキュリティの切り分けや利用者に影響の出ないサービスの実装が重要です。
ハネウェルでは小規模事業所用から大規模事業所用まで、幅広いアクセスコントロールシステムを提供していて、上記のようなセキュリティの切り分けにも柔軟に対応することが可能です。小事業所用では「サーバーのいらないスタンドアロンタイプ」、大規模なものでは「世界の複数拠点の一括制御」に対応したサービスも存在します。
また、これらのシステムは、防災システムやビル管理システムとの連携も可能です。さらにホテル向けのソリューションでは、「室温、カーテン、照明、在室情報」などを一括制御できます。これにより業務効率化やビルの省エネルギー化が期待されています。
シーメンス(SIEMENS AG)
シーメンス(SIEMENS AG)は、ドイツのミュンヘンを本拠にするグローバル総合電機メーカーです。工業や産業分野のみならず、医療・家電・電力といった多種多様な業界に製品を提供しており、ビル管理システムにもその技術を多分に取り入れています。
例えば、中小企業向けのビル管理システムでは、「モバイルアプリ、タブレット、ラップトップ」でビルの管理ができるクラウドベースのツールを提供しています。これにより、常にエネルギーの監視と管理を行えます。さらに「部屋の空調・冷暖房・電気の自動化」によって常に快適な空間を作り上げ、さらには省エネによるコスト削減も可能です。
このようなサービスは、環境問題の最先進国であるドイツの企業ならではと言えるでしょう。太陽光が与える人間への好影響を考慮して、ブラインドの調整や調光のレベルを自動で変化させるなど、自然との調和を考えたシステムも細部に見られます。
また、建物の大小に合わせて提供するソフトウェアやクラウドサービスを柔軟に選択できるので、ニーズに合ったサービスを選択可能です。実際にシーメンスのサービスは、ビルだけでなく大学や博物館、海洋学センターなど、幅広い建築物に取り入れられているのです。
ジョンソン・コントロールズ(JOHNSON CONTROLS INTERNATIONAL)
アメリカを本拠にして、自動車部品からビル管理、電力システムサービスなどを提供しているのがジョンソン・コントロールズです。特に自動車用のバッテリー分野で強みがあり、施設向けサービスでも分散型エネルギーシステムの提供を行っています。
企業自体の歴史は135年ですが日本でも50年近くの歴史があり、これまで日本国内のビル管理システムやセキュリティシステムの構築を数多く手掛けています。その経験から、さまざまなニーズに応えることが可能です。メインのBEMSサービスでは、「室内温度・湿度の監視・設定・自動化、設置機器の監視・通知、省エネルギーの監視、運転時間の監視」など、幅広いサービスが利用できます。さらにこれらのサービスはWeb上で管理可能なので、企業情報システムとの親和性も高い点が特徴です。
また同社は、防火やセキュリティシステムに強みのある「タイコインターナショナル」と経営統合しています。その技術力を活かして生体認証やカードによる電子アクセス制御システムを提供しており、クラウドサービスを使用したアクセス権限のリモート管理も実現可能です。また、カメラの監視システムでは、不審者などの監視以外にもビデオ分析などに役立てられます。ビルの管理だけでなく、業務システムにも活用できる製品と言えるでしょう。
まとめ
ビル管理システムのシェアは今後も高まると予測され、数十年後には照明、空調、セキュリティの自動化は当たり前になっているかもしれません。
また、今回紹介した製品は海外企業の製品ですので、海外展開している企業にもおすすめです。ビル管理システムには国産製品もあるため、さまざまな製品の中から自社に合ったシステムを選択しましょう。
また、ISIDが提供する次世代スマートオフィス/スマートビルディングソリューション「wecrew」は、会議室等オフィススペースの予約機能と入退室管理機能を連携する「Space Hub/Security Hub」と、スペースの利用状況に応じて空調や照明等設備を制御する「Facility Hub」の2つの機能が提供され日本マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上の統合されたプラットフォームとして提供されます。この機会にご確認ください。