ビジネスを成功に導くには、顧客を大切にして顧客ロイヤリティを高めることが重要です。そこで用いられる指標がNPSであり、現状における顧客ロイヤリティを数値化しビジネスへ活かせます。本記事では、NPSの概要や計算方法、顧客満足度との違い、具体的な調査方法などについて解説をします。
NPSで数値化できる指標とは?
NPSとは、Net Promoter Scoreの略で、顧客が自社の商品やサービスにどれくらい愛着や信頼を抱いているのかを数値化した指標です。もともとアメリカで誕生した指標で、さまざまな大手企業が導入し一定の成果を得たことで知名度が高まりました。
NPSが注目されている理由は、企業の業績や成長性に深く関わるためです。導き出したNPSをベースに、商品やサービスの課題改善に役立つほか、将来的に売上を伸ばせるかどうかの予測もできます。
NPSの計算方法について知ろう
NPSを導き出すには、「この商品を友人や知人にどの程度おすすめしたいですか?」といった質問を顧客にして、0~10で評価をしてもらいます。0~6点と答えた人は批判者、7~8点は中立者、9~10点は推奨者とカテゴリー分けを行います。
NPSの計算方法は「推奨者-批判者」で導き出します。たとえば、推奨者が60%、批判者が40%であれば、60-40=20となり、NPSは20%です。NPSスコアが高いほど、自社商品やサービスに愛着を抱き他社に勧めたいと考えている人が多いと考えられ、将来性は明るいと判断できます。
なお、マイナスのNPSスコアとなりショックを受ける企業経営者もいるかもしれませんが、これは珍しいことではありません。日本人の傾向として、高い評価を避けて中間ややや低めの評価をつけることが多いためです。
NPSと顧客満足度はどう違う?
NPSと顧客満足度のもっとも大きな違いは、収益性に直接関わるかどうかです。NPSは、「この商品を友人たちに勧めたいか」といった将来的な購買行動を把握する質問から算出します。そのため、将来的な商品やサービスの購入に直接関わる指標として役立てられているのです。
一方の顧客満足度は、評価の基準が曖昧であり、顧客の満足度が高いからといって直接商品やサービスの購入につながるとは限りません。どこにどの程度満足しているのか、再度商品を購入したいと思えるほど満足しているのか、といったことも把握できないのです。
また、顧客満足度は現時点における満足度であるのに対し、NPSは中長期的な視点の満足度を測る指標であることも違いといえるでしょう。
NPS活用のメリットとは?
NPS活用のメリットとして、数値を用いた定量的な評価を行えることが挙げられます。また、業界内における競合との比較に役立つほか、収益拡大の判断材料として用いられるのもメリットといえるでしょう。
数字で定量的に評価できる
NPSは計算式を用いて数値を算出するため、自社商品やサービスに対する定量的な評価が可能です。顧客の商品やサービスに対する愛着、信頼は目に見えにくいのですが、NPSを算出すれば数値で客観的に把握できます。
しかも、NPSの計算方法はシンプルであり、質問も1つで済みます。顧客満足度を測るアンケート調査のように、いくつもの質問を用意する必要がなく、取り組みやすいのもメリットといえるでしょう。
業界内での競合サービスとの比較ができる
同じ質問を用いて算出する指標なので、業界内の競合サービスと比較しやすいのもメリットといえるでしょう。近年は、業界別に企業のNPSを調査、公開しているサイトもあるため、容易に比較ができます。
競合他社のNPSと比較することで、業界内における自社の立ち位置を確認できるのもメリットです。客観的に数値で自社の立ち位置を把握できれば、今後どのような方針でビジネスを進めるかの判断材料にもなるでしょう。
サービスの収益拡大の判断ができる
NPSの数値は、業績との関わりが大きいといわれています。自社の商品やサービスを周りに勧めたい、と考える推奨者が増えれば、今後より多くの人が購入してくれると考えられ、業績アップにつながります。
推奨者の割合から、今後事業をどう進めるのかの判断材料として活用できるのもメリットです。たとえば、推奨者の割合が多いのなら、この先も売れる可能性が高いため商品を増産する、関連商品の新規開発を進める、といった判断が可能です。
反対に、批判者が多くNPSが低いのなら、どこに問題があるのかを調査するきっかけとなり、商品やサービスの改善、満足度向上につながります。
NPSの調査方法
NPSを調査するにあたっては、正しい方法と手順を把握しておく必要があります。NPSの調査にはトランザクション調査とリレーショナル調査の2つがあり、正しい手順に則って取り組むことが大切です。調査結果をもとにNPSを上げる方法、施策を実践しましょう。
NPS調査の種類
NPSの調査方法には、トランザクション調査とリレーショナル調査があります。トランザクション調査とは、商談のあとやサービスの利用直後、商品を購入したあとなどに顧客の声を集める調査手法です。顧客の率直な感情を把握でき、課題の抽出と改善に役立ちます。
リレーショナル調査は、商品やサービス、ブランド全体に対する顧客の愛着、信頼度などを把握するための調査です。トランザクション調査のようにその都度行うのではなく、年に1~2回程度の頻度で実施し、定期的に総合的なロイヤルティを把握します。
NPSの調査手順
まずは、オフラインとオンラインどちらで調査を実施するのか決めましょう。店舗やイベント会場などで実施するのなら、顧客が会計を終えたタイミングでアンケートに回答してもらい、オンラインであればあとからメールでアンケートを送る、購入ページで回答してもらうといった手法が考えられます。
次に、アンケート項目を作成しましょう。11段階で評価してもらう「この商品をどれくらい周りの人に勧めたいか」といった聞き方のほかに、「その評価をした理由」や「どこを評価したのか」といった質問も盛り込んでおくとよいでしょう。
アンケートが完成したら、店舗やオンラインで実施します。回答してもらったアンケートを収集し、推奨度やコメントなどをまとめてください。なお、正確にNPSを把握するには回答者の母数を増やす必要があります。回答者が少ないと精度の低いNPSとなるため注意が必要です。
NPSを導入するときのポイント
NPSの導入にあたっては、長期的に調査を継続するのはもちろん、しっかりと分析し改善につなげることが大切です。また、同じ業界の数値を確認することも忘れないようにしましょう。
結果を分析し、改善する
NPS調査を実施しただけでは意味がありません。集計した結果を分析し、課題を見つけたうえで改善につなげNPSを上げることが大切です。そのためには、できるだけたくさんのコメントを集め分析を行う必要があります。
アンケート設計に盛り込んだ「その評価をした理由」のコメントに注目してください。このコメントに、顧客の率直な感想が集約されています。気になるコメントを丁寧にピックアップし、今後の改善に活かしましょう。
長期的に継続して計測する
長期的かつ継続的な調査を行うことで、改善の施策がうまく進んでいるかどうかを判断できます。数値の変化を時系列で把握し、効果を測定しましょう。
NPS調査に役立つツールを導入するのもおすすめです。たとえば、Dynamics 365 Customer Voiceならアンケートの作成から収集などNPS分析に役立ち、データに基づく意思決定が可能です。
業界の数値を確認する
同じ業界でしのぎを削る企業のNPSを確認し、比較することで自社の立ち位置や今後とるべき方針が見えてきます。現在では、多くの企業がNPSを導入しており、インターネット上には業界別のNPSを公開したサイトもあります。業界の競合と比較するときは、このようなサイトに掲載されている調査レポートをチェックしてみましょう。
まとめ
企業の収益性や将来性に関わるNPSの活用により、業界内での立ち位置を把握でき課題の抽出や改善策の立案にも役立ちます。将来的な事業の見通しを判断する材料としても活用できるため、この機会にNPS調査の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
NPS調査を実施する際には、長期的かつ継続的に取り組み、できるだけたくさんの回答を集めることが大切です。本記事でお伝えした、NPS分析に役立つツールの導入も併せて検討してみましょう。