SFAの導入による営業活動の効率化と、顧客データの分析活用に取り組んでみたいけれど、「導入後、事業部門に定着せず失敗…」なんて事例をよく目にします。このような背景からSFA導入に踏み込めない、という企業は多いでしょう。
しかし、運用の定着化のポイントさえ知っていれば、失敗する確率を下げることができます。このポイントをおさえてSFA導入/運用に取り組めば、営業活動の効率化やデータの分析活用だけでなく、さまざまな恩恵を受けられるでしょう。ここでは、そんなSFA運用と定着化のヒントをご紹介します。営業担当者の目線に立ち、幅広く利用されるSFAを目指しましょう!
SFA導入の目的
SFAを導入する主な目的は、「営業担当者ごとに管理している案件情報を会社的に管理/把握する」ことです。通常、SFAを導入していないケースでは、案件情報というのは営業担当者が個々にExcelなどで管理しているか、Excelすら面倒という人は頭の中で管理していることもあります。そうした管理体系の何がいけないかというと、案件情報を会社的に管理/把握できず、顧客と関わりある上でさまざまな問題が起きがちだからです。
たとえばある営業担当者が退職して、その後任としていくつかの案件を受け継いだ営業担当者は、前任者が「誰と、何を」商談していたのか把握することが難しくなります。前任者がExcelで案件情報を管理していても、個人的に管理しているため本人にしか理解できない情報も多分に含まれているものです。こうした特定の状況においても、案件情報が会社的に管理/把握されていないことは、大きな障壁になります。
さらに、営業責任者は、自分の部下が営業活動を通じてどのように顧客と関わり合い、そこからどんな案件が作られているかを全体的に把握しながら、個々に適切な指示を出していくことが求められます。「そのために日報があるのでは?」と思うかもしれませんが、日報はその日の営業活動報告であり、それらの情報を統合しながら後々全体の情報、つまりは時系列的に案件情報を眺めることはできません。一方SFAには、過去の商談履歴や細かい案件情報まで蓄積されてくので、営業責任者も的確な指示が出しやすいのです。
事業部門での運用が始まるとなぜ失敗するのか?
「SFAを導入して失敗した…」と感じる企業の多くが、その原因を「事業部門に定着しなかった」ことが原因だと考えています。最近では全社的にSFAを利活用する事例も増えてきましたが、主体となるのはやはり営業部門です。その営業部門にて、SFAが定着化しない理由とはなんでしょうか?
第一に、「SFA導入の意義を営業部門が理解していない」という原因が挙げられます。SFAが誕生したのは1990年代初頭の欧米であり、日本に比べて人材がかなり流動的なため案件情報を会社的に蓄積していけるように開発されました。現在でもその仕組みを受け継ぎながら、さらに営業活動を効率化するための業務システムとして発展しています。
しかし、多くの営業担当者はSFA導入に難色を示します。その理由が「私たちの活動を監視するためではないか?」と考えるからです。人は必要以上に管理されることにストレスを感じるため、「SFA=監視システム」という誤解を与えていると、SFA定着化は一向に進みません。自分を監視させるための業務システムをわざわざ導入させる人もいませんから、当然といえば当然のことです。
そしてもう1つの大きな原因が、「SFA導入によってシステム入力負担が増える」ということへの懸念です。実際にSFAはシステム導入を伴うので、今までとは違った新しい負担が生まれるため、多忙な営業担当者からすれば「今以上の面倒はごめんだ」と考えることでしょう。ただし誤解させてはいけないのが、「SFAは営業活動を効率化するためにある」ことです。
ちなみにこの原因も、SFA導入の意義をきちんと伝えることができれば、解決は難しくありません。
SFA運用のポイントと定着化のヒント
それでは、SFAの運用/定着化が失敗する原因から、運用のポイントと定着化のヒントをご紹介します。
1.SFA導入の意義を伝える準備期間を設ける
業務システムの導入プロジェクトというのは、その期間が短いほどそこにかかわるコストが少なくなるので、足早に導入を目指したくなる気持ちも分かります。しかし一番大切なのは「イニシャルコストを少なくする」ことではなく、「SFAが事業部門にしっかりと定着し、営業効率化や顧客データの利活用など本来の効果を発揮する」ことです。
これには営業担当者にSFA導入の意義をきちんと理解してもらう必要があるので、そのための準備期間を設ける必要があります。
SFAの運用をスタートする前に、営業担当者を主体に事業部門を対象としたSFAセミナーや勉強会などを開催し、「なぜSFAを導入するのか?」「今までと何が変わるのか?」「事業部門にとってのメリットは何か?」「会社が受けるメリットは何か?」などを、理解してもらえるように分かりやすく説明し、理解を得るための啓もう活動に取り組みましょう。
2.システム入力項目を少なくして運用をスタートする
SFA導入の意義をきちんと理解してもらったとはいえ、いきなりSFAが備えるすべての機能を使いこなせというのは土台無理な話です。近年のSFAは多機能ですし、使いこなすにはそれなりに時間がかかります。営業担当者ごとにITリテラシーも違うので、そこで格差を生んでしまうのはSFA運用/定着化の大きな障壁になってしまいます。
そこで、運用スタート時はシステム入力項目を限定するのが1つの常套手段です。最初から入力負担を増やすのではなく、少ない項目からスタートして、営業部門全体の歩調に合わせて徐々にシステム入力項目を拡大していきます。
いきなり喘息疾走で心臓に負担をかけるのではなく、ウォーキングからスタートした体を徐々に負荷へ慣らしていくのと同じことです。
3.分析チームを設置する
SFAが持つ大きな効果が、顧客データを分析することで新しい洞察が得られることです。しかし、多くの営業部門では分析するためのスキルがありませんし、分析のための時間も足りません。
かといって顧客データの分析を捨てるのはSFAの導入意義を半分捨てるようなものなので、分析チームを設置してどんどん顧客データを分析していきましょう。SFAに備わっている分析機能はさほど複雑ではないので、一定期間のトレーニングを積めば誰でも利用できるようになります。
そこから得られた新しい洞察を営業活動に活かせるようなサイクルを作り出せば、今まで以上に効率的に多くの成約を勝ち取っていけます。
「SFA導入は難しい」という考えを捨てよう!
SFA運用/定着化を難しくしている最たる原因は、もしかすると「SFA導入は難しい」という固定概念を持っていることかもしれません。まずはその考えを捨てて、「SFA導入は簡単」とまではいかずとも、「ポイントさえ押さえればSFA導入は成功するもの」と考え、新しい業務システムの導入を目指していただきたいと思います。