数年前より日本の労働生産性が世界的に見て低いというデータについて、様々な意見が飛び交っています。「データ算出方法に問題がある」と指摘する意見もありますが、実際に海外と日本でビジネスを経験したことがあるビジネスパーソンからはそのスピード感に大きな違いがあると言います。
日本ではかねてより「働き方改革」によって労働生産性向上が叫ばれており、その中で注目度が日ごと高まっているのが「RPA(Robotic Process Automation/ロボティック・プロセス・オートメーション)」です。RPAはパソコン操作を自動化できるツールであり、従来人手を介していたようなPC操作を自動化することによって定型業務の省略化に貢献します。本記事でご紹介するのは、総務省が定義しているRPAのクラスについてです。RPAに関する知見を広げるためにもぜひご一度ください。
RPAのクラスとは?
総務省ではRPAの性能に応じて、クラスを1から3に分類しています。それでは早速、クラスごとの定義をご紹介します。
Class1. RPA(Robotic Process Automation/業務プロセス自動化)
最も基本的なRPAです。パソコン上で展開される定型業務を自動化することに用いられ、発生頻度と発生日時、及び特定の業務マニュアルが決まっている作業を効率よく自動化できます。
例えば「ファイルのダウンロード」という作業では、人間はこうして一言で表すことができますが実際には次のような細かいプロセスがあります。
「インターネットにブラウザで接続→リンクをクリック→クラウドストレージへアクセス→IDとパスワードを入力→ログインボタンをクリック→特定のファイルを検索→ファイルのダウンロードをクリック→ダウンロード先を選択→保存をクリック→閉じるをクリック」
これらの作業は決待っている作業であり人間的な思考判断を必要としません。そのためRPAによるプロセスの自動化が簡単に行え、「ファイルのダウンロード」を含む業務の効率化に貢献します。さらに、ダウンロードしたファイルを特定の関係者と共有する、ファイルを実行して特定のデータを抽出するといった作業も自動化が可能です。
Excelのマクロのようにアプリケーション内の限定的な自動化とは違い、複数のアプリケーションを跨いだ自動化が可能なので人間的判断を必要としない定型業務ならばそのほとんどがRPAによって自動化できます。
Class2. EPA(Enhanced Process Automation/強化された業務プロセス自動化)
組織の中で実行されるタスクには、人間の思考判断が必要な物も多数存在します。では、そうした業務の自動化はRPAには不可能なのか?というと、そうではありません。RPAに機械学習(AIの研究分野)を取り入れることにより比較的高度な自動化を実現することもできます。
「人間的判断が必要」な場面は非構造化データを扱うケースほとんどです。非構造化データとは売上データや顧客データなどデータベースでは整理できないもので、主にメールの文面やファイルなどがそれにあたります。例えば顧客から受信した商品発注メールを読み、内容を理解した上で配送手続きをしたり請求書を作成するという業務には人間的判断が必要です。
一般的にRPAはプログラムに従って自動化は実行できても、メールの文面を読み解くことはできないと考えられがちです。ここに機械学習が搭載されると、RPAの知能が向上して簡単な文面を理解できるようになります。顧客から受信した商品発注メールを読み込み、重要なキーワードを抜粋してそこから請求書を自動的に発行することが可能になります。実はこうしたRPAの活用はすでに現実化されており、高度な機械学習を取り入れることでRPAによる自動化を大幅に強化できます。
Class3. CA(Cognitive Automation/認知の自動化)
現時点でRPAの最終形態とも言えるのが「Class3. CA」です。このタイプのRPAは多種多様なデータから必要な情報を整理し、分析し、それに応じた意思決定を行います。例えば、各店舗から寄せられた日次の売上データを分析して、店舗ごとに最適な調達計画を作成するなどの自動化です。
RPAに搭載もしくは連携する機械学習は、データをもらうことで自ら学習し、その意思決定精度を高めていきます。いわゆる深層学習(ディープラーニング)を搭載したRPAが該当しますが、現時点でClass3に到達しているRPAは存在しませんが、近い将来市場に登場してくることでしょう。
RPAのメリット
総務省におけるRPAのクラスについてご紹介しました。以下にRPAのメリットについてご紹介します。
メリット1. 作業時間短縮による労働時間是正
RPAを導入して自動化プログラムをいくつか走らせることで、作業時間を大幅に短縮して労働時間の是正を行うことが可能になります。RPAをいち早く導入した大手銀行各社では、年間1万時間以上の労働時間削減に成功したとの報告もあります。
メリット2. ヒューマンエラーなどのミス削減
RPAはロボットですから、ミスをしません。もしも作業上のミスが発生したとすれば、それは作成したプログラムに問題があるか、システムの変更を反映しなかったかが原因です。RPAによってヒューマンエラーが無くなることでミスは削減され、結果的に生産性向上に貢献します。
メリット3. 会社の生産性向上と利益確保
企業にとって現段階においては単純作業が大幅に削減できることから生産性向上と利益確保に貢献できます。今までそれらの作業に割り当てられていた人材や時間を削減することが可能になるため従業員はより戦略的な業務へとシフト可能です。
メリット4. 部門ユーザー主導にて開発できる
一般的な情報システムは、情報システム部門に依頼することがほとんどです。そのため依頼からリリースまで多くの時間がかかります。また、RPAはその業務内容が頻繁に変更されるケースも少なくないことから時間がかかること自体、ビジネス遂行に支障が出てくることになります。一方、多くのRPA製品は、部門ユーザー主導で開発・設定できるように設計されているものが多いため、わざわざ情報システム担当者に開発を依頼する必要がありません。
メリット5. 既存システムと干渉せず導入可能
一般的に情報システム間で情報をやりとりしたり連携するためには、そのインターフェイスを理解して正確なプログラムを構築する必要があります。その一方でRPAによるシステム間の連携に関しては、人間がやっていた操作の模倣ですのでシステム間のインターフェイシングを考える必要はありません。そのため、RPAを導入したがために既存システムに問題が発生するなどの問題も発生しません。
RPAのメリットを十分に引き出せるかどうかは、導入前にどの作業をRPAに任せるのかなど既存作業の洗い出しが重要です。そして、導入したことによる効果測定をどのように実施するのかを定義することも重要と言えます。最近ではRPAの導入も多く進んできているため、導入を支援したパートナーにその成果などを聞いて見ることもおすすめです。RPA導入に際し色々と不安を抱えている方は、一度導入パートナーに相談してみてはいかがでしょうか。
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