営業は会社の売上・利益を創出するための役割を担います。いわばビジネスの最前線に立っている存在なので、その活動は「とにかく結果がすべて」という考えから、目先の売上・利益にとらわれがちになってしまいます。10年以上前のビジネスならば、それでも問題は無かったかもしれません。顧客が持つ情報源は限られていて、営業がビジネスの主導権を持つことも可能だったからです。
しかし、現代ビジネスにおいて、顧客は時に営業担当者以上の製品情報・業界情報を持っており、営業がビジネスの主導権を握ることが難しくなっています。そんな時代に大切なのが、顧客と長期的に関係を築き、顧客の良きパートナーになってビジネスを進めていく「 リレーションシップ営業 」です。
本稿では、「 リレーションシップ営業 」とは何か?と、その成功ポイントについて解説します。
リレーションシップ営業とは?
「リレーションシップ営業(Relationship Selling)」は、米国を中心に2017年頃から提唱され始めた営業スタイルです。リレーションシップ、すなわち顧客と良好な関係性を築くことによって、単に製品を売り込むのではなく、長期的に関わるパートナーとして顧客が抱えている課題を解決するための方法を提案し、時には顧客のために身を引き、結果的に自社利益を最大化することが目的です。
これからのビジネスに「リレーションシップ営業」が欠かせないことは、実は誰もが理解しています。しかし、日々大量の業務に忙殺される中で、顧客と長期的な関係性を築くための重要性を忘れてしまいがちです。今こそ、「リレーションシップ営業」の重要性を再認識し、成功ポイントをチェックして取り組んでいきましょう。
リレーションシップ営業の成功ポイント
「リレーションシップ営業」を成功させるために必要なポイントは、全部で9個あります。各ポイントの意義をしっかりと理解し、確実に実行していくことで顧客と良好関係を築き、長期的に関われるパートナーとして存在できるでしょう。それでは、各ポイントを1つ1つ解説していきます。
1.まずはABR(Always Be Ready)から
ABR(Always Be Ready)とは「常に備えよ」という意味です。現代ビジネスにおける営業では、飛び込み訪問で「数打てば当たる営業」をするのではなく、十分な調査を行った上で顧客とのコミュニケーションを始めることを大切にしなければいけません。前述のように、顧客は豊富な製品情報・業界情報を持っており、飛び込み営業で来たセールスマンから得るようなものは、無いと言って等しいでしょう。従って、顧客とのコミュニケーションに備えるために、ビジネスインテリジェンスと予測分析を活用して顧客のニーズを把握したり、顧客に提供できる有用情報等について調査したりと、準備を怠らないことが肝要になります。
2.パートナーについて理解しよう
「リレーションシップ営業」はセールスマンの業績をアップし、会社の利益を向上するためだけの営業手法ではありません。顧客にとっても、変化し続けるニーズを常に満たし、ビジネス上の課題を長期的に解決できるというメリットがあります。つまり、セールスマン・会社・顧客が「Win-Win-Win」の関係になるのが「リレーションシップ営業」の本質です。そのためには、常にパートナーとなる顧客について理解するのに努力することです。過去に、別の顧客にフィットした 営業戦略 やソリューションに自信を持っているセールスマンも多いでしょうが、顧客ごとに調整が必要であり、理解するためのプロセスも違うことを意識しましょう。
3.行動はタイミングがすべて
「リレーションシップ営業」における行動はタイミングがすべてと言っても過言ではありません。どこで押すか?どこで引くか?適切なタイミングを知っているということは、現状を正確に把握しており、物事を現実的に捉えているということです。現代ビジネスではソーシャルメディア等も含めて顧客とのタッチポイントが多様化しているため、タッチポイントごとに適切なタイミングを見極めることも大切です。
4.「売り込まない営業」を貫く
「耳を使うセールスマンは少ない」とはよく言いますが、これは製品やサービスを売り込みたいがばかりに、顧客の話に耳を傾けていないという意味です。「リレーションシップ営業」で大切なのは「売り込まない営業」を貫くこと。長期的な関係を顧客と築こうとすれば、利己的になってはいけません。顧客の話に耳を傾けるというテクニックを営業戦略に取り入れ、習慣とさせる必要があるでしょう。
5.誠意を見せる
真剣に相手を考えている「ふり」は、必ず見抜かれてしまいます。知らないことをごまかそうとしても、立派な大人相手では通用しません。いえ、子供であっても大人の誠意は見抜いてしまいます。誠意は相手を思う気持ちから生まれます。一度、利益を追求することを忘れて、100%顧客のためになる行動をしてみることで、誠意のなんたるかを理解できるでしょう。
6.パートナーに共感を持つ
デジタルが至るところに張り巡らされている現代では、重要な人物についての情報を得ることは難しくありません。そこに、顧客との「共感」を生むためのチャンスがあります。顧客が常に求めているセールスマン像は、自分の考えに「共感」し、さまざまな体験を「共有」できる存在です。もちろん、見せかけの「共感」ではいけません。顧客と自分自身の中で「共感」できるポイントを探してみましょう。
7.ソーシャルメディアでの存在感を高める
今やソーシャルメディアがビジネスと深いかかわりを持っている時代です。ソーシャルメディアを活用することで、一連の重要人物全員との繋がりを深め、その人達がどのようなやり取りをしているのかを理解し、自分自身をアピールすることで信頼性を高めることができます。プロフィール情報すら正確ではないセールスマンでは、顧客から避けられる存在になるでしょう。
8.忍耐力がものをいう
信頼関係は一日にして成るものではありません。日常的に関係し、相手を思う気持ちからくる行動を続けていくことで、徐々に信頼が生まれていきます。しかし、その信頼が一瞬にして崩れることもあります。「築く」ことは「壊す」ことよりも、遥かに難しいものです。現代ビジネスにおける営業こそ、従来の根性論とは違った忍耐力を発揮するときです。忍耐力こそ、「リレーションシップ営業」の土台になります。
9.パートナーとの信頼関係を継続する
ここまでの、「リレーションシップ営業」の成功ポイントを積み上げた結果が「顧客との信頼関係」を築きます。信頼関係こそが、この営業手法の勝敗に90%以上を握るカギです。パートナーとの信頼関係を継続するためには、これらの成功ポイントを常に続けることが大切です。顧客からの信頼は一朝一夕で得られるものではありませんが、一度信頼関係を築ければ、さまざまな可能性が広がります。