CRM(Customer Relationship Management)のビジネス上の存在感は依然として増しています。顧客と持続的かつ良好な関係を築くことが事業成長に欠かせない要素だと誰もが理解しており、そのためにCRMが中核的システムになることも、誰もが理解しています。
当記事をご覧いただいている方は、CRMの重要性を認識し、導入を検討されている方が多いのではないでしょうか?「けれども、果たしてCRM導入を成功させられるだろうか?」そんな疑問を抱えている方もまた多いでしょう。
タイトル通り、CRMの導入で失敗するケースが確かにあります。しかも珍しくはなく、ちょっとした導入方法の違いで失敗に陥るのがほとんどです。そこで本稿では、CRMで失敗する理由について整理していきます。
CRM導入を検討されている場合は、ここで紹介する失敗理由を踏まえて導入時の対策を練っていきましょう。
CRMで失敗する理由
それではさっそく、CRMを導入して失敗に陥ってしまう理由について紹介します。
理由①CRMを導入する目的・目標が明確になっていない
CRMはここ数年のIT業界において大きなトレンドの1つです。CRM導入を検討されている方の多くは、周囲でCRM導入による効果について1度は耳にしたことがあるのではないかと思います。それを理由にCRM導入を検討するのはよいのですが、導入にあたって「目的と目標」、これが明確になっていないケースが多々あります。
CRMはそもそも、顧客との関係構築におけるさまざまな課題を解決するためのシステムです。CRMを導入する企業がその課題をしっかりと整理していないと、CRMを導入する目的も目標も設定できません。加えて、他社から耳にしたCRMの効果ではなく、自社がCRMに対してどのような効果を期待するのか等も明確にしておかないと、すべてが曖昧なまま導入プロジェクトがスタートしてしまいます。
理由②営業担当者が情報入力を拒んでいる
CRM導入後、活用促進のために立ちはだかる第一の壁が“情報入力”です。CRMはシステム上に顧客情報を蓄積していくことで、それをはじめて活用できます。この情報入力段階でつまずく企業が実は多いのです。その理由が「営業担当者が情報入力を拒んでいる」ということです。
CRMは企業にとって多くの効果をもたらしてくれるシステムです。ただし現場の営業担当者視点で考えると、自分の実績を左右する顧客情報をシステムに入力して、他の営業担当者と共有することを死活問題だと考えることは至極当然なことでしょう。加えて、「単純に面倒だ」と感じて情報入力を拒むケースもあります。
CRMは現場の営業担当者の情報入力あってのシステムです。営業担当者が抵抗なくシステムへ情報入力ができるように、営業担当者自身にもメリットがあることを訴求しつつ、さまざまな点に配慮する必要があります。
理由③入力項目が多すぎて業務負担が増大する
CRMを導入すると従来よりも情報入力かける時間が長くなります。営業担当者は今まで通り事務作業を行いつつ、CRMを扱わなければいけないため、業務負担は確実に上がるでしょう。この状況下で何の対策もなくCRMを導入すると、営業担当者が顧客とコミュニケーションを取るための時間が犠牲になり、結果的に売上が下がってしまいます。これでは本末転倒ですね。
業務負担が増大する最大の理由は「入力項目が多い」ということです。CRM導入時の標準設定のままでは自社にとって負担が大きくなる可能性がありますし、入力項目を設定する際は慎重さを持って設定することが大切です。
導入から1年間は入力項目を限定的にして業務負担増加を抑えるなどして、徐々に体制を整えていくことがポイントです。
理由④早期段階で“失敗”と判断してしまう
CRMは数ある業務アプリケーションの中でもROI(Return of Investment:投資対効果)が見えにくいものです。CRMを導入したからといってすぐに売上がアップしたり、契約率がアップしたりするようなものではありません。しかし、CRMを導入して上手く活用することで顧客との関係は確実に改善されていきますし、それに応じて顧客満足等もアップしていきます。
そうした効果を実感するには少なくともCRMを1年以上持続的に運用していく必要があるでしょう。CRMを導入した企業の中には、ROIが見えにくいことから早期段階で“失敗”だと判断してしまい、CRM運用を諦めてしまいます。ROIが見えにくいから失敗なのではなく、運用を諦めた時点で失敗になります。
理由⑤部門ごとにシステム基盤がバラバラになっている
日本気企業のシステム環境は長らく個別最適化が進んできましたが、その惰性が原因なのかCRMを導入しても個別最適化を進めてしまうケースがあります。CRMは全社、とまではいかずとも営業やマーケティング、企画開発など複数部門でシステム基盤を共有し、顧客情報を活用していくのが理想の姿です。
しかし、部門ごとに異なるCRMを導入してしまったり、特定の部門だけでCRM活用が終わっていたりと、システム基盤やCRM活用のプロセスがバラバラになっていることで思うような効果を得られず、失敗するケースも珍しくありません。
理由⑥情報を蓄積するだけで活用できていない
「CRMを導入さえすれば情報は蓄積されていく、活用方法はその時考えればよい」という視点でCRMを導入すると、情報を蓄積しても結局それを活用できていないというケースがあります。無駄な情報ばかり蓄積していき、いざ活用しようという時には明確なプロセスを持っていませんし、情報が複雑化しています。
CRMを成功させるためには顧客関係管理における課題を明確に、それを解決するためにどんな情報が必要で、収集した情報をどう活用するかというところまで計画していないとなりません。
理由⑦CRM導入そのものが目的になっている
CRMは比較的大規模なシステムなので、導入プロジェクトは長期になりがちです。営業だけでなく複数の部門が関わるため、難しい問題もいくつかあります。CRM導入にかかわる課題に向き合っているうちに、CRM導入自体が目的になってしまうケースが少なくありません。
CRMはあくまでツール(道具)です。CRMを導入すればそれで完璧、というわけではないため、CRM導入自体を目的にしてしまうのではなく、常にCRMを導入した先を見る必要があります。
そのためにはKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を整理して、CRM導入後の効果をしっかりと終えるように計画を立てていきましょう。
CRM導入は課題も多い、常に対策を!
昨今のトレンドだからといってCRMは簡単に導入できるものではありません。自社独自に導入を目指す場合は、さまざまな課題と向き合いつつ、CRM導入後の運用に目を向ける必要があります。あるいは、導入パートナーと協力して客観的視点とマネジメントを取り入れつつ、CRM導入成功を目指していきましょう!