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プロセス製造業に必要なERPの機能とは?

「プロセス製造業」では、原材料によって製造工程が異なるため、多様な生産形態に対応できる管理体制が求められます。本記事では、連産品や副産物などの複雑な管理や、製品ごとに異なるレシピ、製造方法の情報共有など、プロセス製造業における課題と解決方法についてご紹介します。

プロセス製造業に必要なERPの機能とは?

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プロセス製造業とは

製造業は、大きく「プロセス製造業」と「ディスクリート製造業」の2つに分類でき、このうちプロセス製造業は「素材産業」とも呼ばれています。代表的な業種には化学プラントや製油所などがあり、そのほか医薬品・食品・鉄鋼・紙・ガラスなども該当します。

「個体」の加工・組み立てを行う業界とは異なり、プロセス製造業では「流体」を原材料にして製品を作るのが特徴です。製品によっては、製造途中に副産物や連産品も生まれます。

ディスクリート製造業と区別される

「ディスクリート(discrete)」は「個別」「分離」などを意味します。「液体」を原材料とするプロセス製造業とは異なり、文字通り「個体」を原材料とするのがディスクリート製造業です。主な例としては、自動車部品や電子機器製造などが挙げられます。

ディスクリート製造業では、基本的な製品の製造工程が決まっていて、どこまでの工程にあるものがどのくらい作られている状態か、確認が可能です。途中まで作られた状態を「仕掛品」といい、この状態でも仕掛品として在庫管理が可能なケースが多く見られます。

一方、プロセス製造業では原材料から完成状態までがほぼ液体なので、途中の製品を個別には認識できません。液体の原材料は時間経過により成分が変わることもあるため、製造は時間を置かず工程ごとに一気に行います。そのため、製造中を表す「仕掛品」を用いません。

これら2つの製造業には、原材料や製造方法などに大きな違いがあります。特にプロセス製造業は、生産形態の多様性や後述の課題などを理由に、ディスクリート製造業よりも仕組みが複雑です。

プロセス製造業の課題

プロセス製造業は、ディスクリート製造業と異なる多様な生産方法が特徴です。しかし、それゆえに多くの課題を抱えていることも事実です。以下では、プロセス製造業の特徴や今後の課題について解説します。

多様な生産形態への対応の必要性

ディスクリート製造業の生産形態は一定ですが、プロセス製造業の生産形態は実にさまざまです。化学品・食品・鉄鋼・ガラス・繊維・紙など、製品の種類も多岐にわたります。生産形態は、製品をどのように生産しているかで区別が可能です。

製品は、以下の6つの項目からそれぞれ選択して組み合わせた生産形態を用いて製造されます。

【生産形態の6分類】

  • 生産時期:どのタイミングで生産を始めるか「受注生産」「見込生産」
  • 生産方式:どのような生産方法か「個別生産」「ロット(バッチ)生産」「連続生産」など
  • 作業者と作業工程:作業者の担当する作業「セル生産」「ライン生産」
  • 生産品種・生産量:市場規模に合わせた生産品種と量の組み合わせ「多種少量生産」「中種中量生産」「小種多量生産」
  • 設備レイアウト:作業に合わせた機械の配置「ジョブショップ型(受注生産向き)」「フローショップ型(見込生産向き)」
  • 生産指示:生産指示を出すタイミング「Push」「Push/pull」「Pull」

プロセス製造業の場合、上記の分類では「見込生産」「バッチ生産(または連続生産)」「ライン生産」「中品種中量・少品種大量」「ジョブショップ・フローショップ(どちらでも可)」「Push型」の生産形態が多く採用されています。ただし、製品によって組み合わせは変わるため、さまざまな製品に合わせて幅広く対応できることが大切です。

製品ごとに製造方法が複数存在

プロセス製造業では、製造する製品により製造方法が異なります。製品が液体・気体など「中間原料」の場合は「連続系プロセス」、一次製品の場合は「バッチ系プロセス」、最終製品の場合は「成型・加工・組立系プロセス」がそれぞれ用いられて主に生産されます。

  • 中間原料:エタノール・ベンゼン・鉄鋼などの製品
  • 一次製品:塗料・合成ゴム・ガラスなどの製品
  • 最終製品:日用品・紙製品・飲料などの製品

プロセス製造業では特に、原材料に近い「中間原料」や「一次製品」の製造が多く、特有の生産方法や管理方法、移送手段が必要です。1つの製品ごとに配合・レシピ・製造方法が異なるため、原材料の状態に合わせて製造方法にも細かい調整を加えなければなりません。

また、化学プラントなどで行われる製品製造は、製造工程によっては自然環境に影響を与えることがあります。環境への悪影響を減らすためには、リサイクル品を投入したり、リワークを取り入れたりする必要もあり、余計に製造方法が複雑化します。こうした多様な生産方法をいかにして管理するかが重要な課題です。

連産品や副産物が生まれる

1つの原材料を用いた製造工程でも、場合によっては2種類以上の製品が生まれることがあります。完成した製品に主・副といった関係がない場合、これを「連産品」と呼びます。たとえば原油を分留した際、ガソリン・灯油・軽油・重油・原油残が生産され、連産品が生まれます。連産品は、他製品の材料として活用することも可能です。

これに対して「副産物」は、主製品を生産した際、従属的に生まれたものを指します。副産物には「原材料として再使用されるもの」「ほかの目的に使用するもの」「そのまま販売できるもの」があります。上記の例では、原油の分留後に生まれた原油残が副産物に該当し、製造工程へと戻され再使用されます。

連産品や副産物が生産されると、それぞれの製品に対する処理も増え、管理が複雑になります。連産品や副産物の管理にもフレキシブルに対応することが求められます。

在庫品質と有効期限の徹底した管理が必要

ディスクリート製造業では、原材料や製品に有効期限がないので、比較的取り扱いが簡単です。有効期限のない製品を取り扱う場合、在庫の品質や期限の管理には、それほど徹底する必要はないといえます。

ところが、プロセス製造業の場合は、有効期限をしっかりと管理しなければなりません。各原材料に有効期限があるので、期限内に使用するために高精度で徹底した在庫管理を行います。入庫数や出庫数、在庫数、有効期限だけでなく、在庫の今後の入庫予定や出庫予定まで把握しておくことが、原材料の有効期限管理に役立ちます。

プロセス製造業では子会社や工場間など、企業やグループ内取引が多い傾向にあります。この内部間での移動時にも、原材料や製品の在庫管理を確実に行わなければなりません。在庫の情報をリアルタイムで管理し、常に在庫の状態を正しく把握できることが望ましいでしょう。精度の高い管理方法を取り入れて、有効期限切れによる廃棄など管理不足から生じるトラブルを減らすことが大切です。

プロセス製造業に求められるERPの機能

プロセス製造業には、原材料や製品の管理をスムーズに行えるERPの機能が求められています。部品構成管理ができる「BOM機能」や、製品や原材料の追跡・管理ができる「ロットトレース管理機能」により、管理業務の効率化が期待できます。

BOM機能

「BOM(Bill Of Materials)」とは、部品構成管理のことです。製品を製造するときに必要な原材料や、半完成品が記載されているもので、製造設計図でもあります。

製造時に利用するBOMは、最初に設計部門で作ります。そして、実際の生産部門で詳細な情報が追加され、生産管理に即したものへ完成させたのち、BOMに基づいて生産計画を作成します。

BOMは、生産系の部門だけでなくメンテナンス部門や購買部門など、さまざまな用途で使われる重要な情報です。それら用途の違いによって、BOMの種類も変わってきます。

  • 開発や設計の段階で必要な部品構成情報を表す「E-BOM」
  • 必要な原材料の組み合わせを示して原材料利用計画に使用する「計画BOM」
  • 特定製品の生産で使用される「生産BOM」
  • 製品の見積原価を計算するために、使用する材料とリソースを組み合わせた「原価計算BOM」 など

基本的なBOMのモデルは、計画BOM・生産BOM・原価計算BOMの組み合わせです。製造環境の複雑なケースでは、さらに製造工程全体をまとめたBOM作成を行います。

製品・原材料のロットトレース管理

原材料・製品をリアルタイムで管理することが望まれるプロセス製造では、「ロットトレース管理」が役立ちます。これは、プロセス製造で行われる「原材料の調達」→「製造」→「在庫」→「物流」のフェイズ内で、「原材料ロット」「製品ロット」「在庫ロット」「出荷ロット」配送ロット」などのロットを使用し、ロットの流れをトレース管理する仕組みです。

食品・薬品・化粧品など、飲食物や体につける製品においては、安全管理を徹底しなければなりません。賞味期限・有効期限の管理や、アレルギー物質・規制物質・宗教といった制限物質管理、問い合わせ対応のための管理など、ロットトレース管理によりさまざまな内容の確認ができます。

ただし、入力データが実態と合わない場合は、この機能が役に立たないため、データは確実でなければなりません。データの正確性を保持するためには、ERPのモジュールを利用し制御することが重要です。モジュールにより入力作業の軽減にもつながります。

グローバルSCMの構築

「グローバルSCM(サプライチェーン・マネジメント)」とは、世界の複数拠点を結び、原材料や製品の製造・保存・販売・流通といった一連の情報を統合管理するシステムです。

プロセス製造業は、原材料を海外から輸入するケースがほとんどで、国際価格の変動により原材料のコストが変わりやすいという特徴をもちます。グローバルSCMの構築によって、海外拠点と国内の製造・在庫・販売管理などを結ぶことで、販売状況から需要予測が可能となるほか、原材料の国際価格も確認できます。各拠点で多くの情報を共有できるため、多角的な視点から在庫管理を行えるようになります。

まとめ

プロセス製造業では、製造する製品ごとに生産形態が異なります。そのため、生産形態一つひとつに柔軟に対応し、確実な管理を行うことが、生産性の向上につながります。プロセス製造業の諸課題を解決するには、高精度な製品のロットトレース管理や、グローバルな情報共有を可能にする「Dynamics 365」の導入がおすすめです。

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