カスタマーサービス/顧客満足

真の顧客志向を実践するためのポイント

ビジネスの世界ではどこもかしこも「顧客志向」の重要性を声高に叫んでいます。製造業では顧客ニーズをとらえた製品開発を、ソフトウェア業では企業が個々に抱える課題を解決するようなソリューションを、Webサービスではユーザーフレンドリーなインターフェースなどが日々追求され、顧客志向が日々研鑽されています。

そこで投げかけたいのが、「あなたの会社では真の顧客志向を実践できていますか?」という質問です。実は、この質問に対して胸を張って「YES」と答えられる人は、そう多くありません。さらに、顧客志向が何なのかも分からなくなってしまった、という人も中にはいらっしゃるでしょう。実は会社からの無理な方針に苦しんでいる人もたくさんいます。

本稿では、真の顧客志向を実践していただくために、顧客志向とは何なのかを改めて整理し、実践のポイントをご紹介します。

真の顧客志向を実践するためのポイント

一歩先行く顧客対応!

結局、顧客志向とは何か?

ある人は「顧客のことを第一に考えて、何を犠牲にしても顧客の要望に応えることだ!」と言い、またある人は「顧客満足度を定期的に調査して、顧客が今のプロダクトやサービスに満足しているかを知ることだ!」と言います。残念ながら、どちらも不正解です。

会社の中には顧客志向という言葉を盾にしながら、顧客の無理難題に応える自分を正当化する人が少なからず存在します。そうした人間が管理職についていると、部下の評価基準も当然その特色を持つことになるので、名ばかりの顧客志向で苦しめられる人が続出していきます。中には辟易となる社員も増えてきてしまうでしょう。

一方、そうした状況は発生していないものの単に顧客満足度を調査している場合でも、顧客志向を実現できているとは到底言えないものです。顧客満足度調査とは、過去の事業戦略やマーケティング活動、顧客対応など顧客接点全般にもとづいた実績に対する評価であり、これからのマーケティング活動に生かすための指標にはなりません。あくまで「過去の評価」に過ぎないのです。

もしも皆さんの会社が顧客志向をうたいつつ、こうした状況下にあるとすれば真の顧客志向を実践するための取り組みを行うチャンスがまだまだあると考えるべきかもしれません。

では、顧客志向とは結局何なのか?それは顧客が今何を考えているか、何を欲しているかを考え、可能な範囲でそれを提供し、プロダクトやサービスに満足してもらった上で自社の利益を確保することを指します。そうです、大切なのは顧客のことをひたすら考えるのではありません。少し古い言い方ですが、Win-Winの関係を築くことが、真の顧客志向だと言えます。

採算度外視の顧客志向は間違っている

顧客志向という言葉とセットで、こうした事例を耳にしたことはないでしょうか?

  • 「世界大手のホテルカンパニーであるリッツカールトンでは、各従業員が1日2,000ドル(約20万円)決裁権を持っており、その中で顧客にとって最良だと思った行動を取っても良い」
  • 「国内リゾートカンパニー大手の星野リゾートでは、飲食店における顧客のクレームに対応するため、シェフを同行して自宅まで足を運び、その場で料理を提供し直した。」

これらの事例は検索すると何件もの記事がヒットしますし、経済誌などにも掲載されていることから事実だと言えます。ただし、自社がこれとまったく同じような対応をできるかといえば、不可能に違いが実情です。

まず、どちらもホテル業界における事例であり、そこでは宿泊者の口コミがすべてとも言える世界です。つまり、1日に20万円の決裁権を従業員に与えてでも顧客が感動するような体験が作れれば、非常に大きなリターンが期待できます。さらに、ホテル業界はサービス品質がモノを言う世界ですので、一見採算度外視に見えるような顧客志向でも、それは将来的な収益へとしっかり繋がっていくのです。

一方、製造業やソフトウェア業界、その他の業界においてもこうした取り組みが功を奏するかといえば、疑問が残ります。たとえば製造業では営業の印象が良くアフターケアがしっかりとしている場合でも、プロダクトに不満があれば顧客は簡単に離れていきます。ソフトウェア業界でも同様でしょう。顧客は質の良いサービスを求めているのではなく、会社が抱える課題をダイレクトに解決するようなソリューションです。この点がホテル業界とは大きく異なるものなので、こうした事例をあてにしてはいけません。

真の顧客志向とは、その先に必ず会社の利益を見据えています。利益が出なければ、より良いプロダクトもサービスも生まれません。そして良いプロダクトとサービスが無ければ、顧客も満足しないのです。

真の顧客満足度を実践するポイント

それでは、真の顧客満足度を実践する具体的なポイントをご紹介します。何度も言いますが、真の顧客志向とはその先に会社の利益を見据えているものです。その点に注目しつつ、実践ポイントをご覧ください。

1.まずは、顧客について知ること

何はともあれ、真の顧客志向では顧客について知るところから始めます。たとえばあなたの会社がWebサービスを提供しているのならば、どんな人が利用しているのか(性別、年齢層、役職など)?何を思って利用しているのか?どんな課題が解決されているのか?平均的な予算は?他にどんなWebサービスに興味を持っているのか?など、とにかく顧客に関するあらゆる情報をかき集めてみます。

方法はいろいろとあります。最近ではWeb上で実施できるアンケートツールが充実していますし、販売データからさまざまな顧客情報を読み取ることも可能です。顧客について深く知ると、会社が想定しているターゲットとの合致や乖離など、新しい気付きを得ることもできます。

2.顧客と共有する時間をつくる

日立製作所の生みの親である小平浪平も、1981年~2001年にかけてGEの最高経営責任者を務めたジャック・ウエルチも、ビジネスに身を置いている時間のほとんどを顧客と共有していたそうです。顧客ニーズを深く理解し、顧客が優先的に考えていることを把握するには、オフィスに閉じこもってデスクワークをしているだけでは実現しません。

顧客志向を実現し、会社の利益を拡大するための重要な情報は顧客自身や顧客のオフィス、顧客の工場などすべて顧客の周辺に存在しています。その中には、会社の役員や経営者でないと聞き出せないものもあるでしょう。なので、会社のトップが率先して顧客との時間を共有することは、とても有意義かつビジネスに大切な情報を与えてくれます。

3.リーンな購買プロセスをつくる

顧客がプロダクトやサービスを消費するにあたり、それまでに道のりの中で非効率を排除している様を「リーン消費」と呼びます。リーン(Lean)とは「痩せた」「筋肉質の」という意味であり、無駄なモノやコトを極力排除することで、顧客に寄り添った購買プロセスが構築できるという考え方です。

真の顧客志向では購買プロセスにまで目を向けて、顧客が常に最短距離でプロダクトやサービスに手が届くようにプロセスを作り替えることが大切です。でなければ、顧客は購買という行為自体に非効率を感じ、満足度が下がっていきます。

いかがでしょうか?これら3つの実践ポイントを押さえるだけでも、現状の顧客志向から真の顧客志向に近づけるはずです。間違った顧客志向は人を、会社を苦しめます。改めて自社の顧客志向について考えなおし、正しい姿へと変えていくのは今しかありません。

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