近年、さまざまな産業において、「データ分析環境の構築」が重要な経営課題となっています。そんなデータ分析環境を整える上で欠かせないのが、データのパターンや傾向などをビジュアライズする「Power BI」です。本記事では、データ分析にPower BIが欠かせない理由を解説するとともに、具体的な活用事例も併せて紹介します。
「データ分析環境を整える」とは?具体的な意味を解説
変化の加速が著しい現代市場の中で、企業が競争優位性を確立するためには、定量的なデータ分析に基づく経営基盤を作り上げなくてはなりません。テクノロジーの進歩とともに、企業が取り扱うデータ量は指数関数的に増大しており、いかにして蓄積された情報を、事業領域に活用するかが問われています。しかし、データは収集するだけでは意味を成さず、マネジメントやマーケティングなどの領域に活用してこそ、真価を発揮します。
そこで必要となるのが、データ分析環境の整備です。データ分析は情報の「収集・蓄積」に始まり、その後「抽出・加工」を経て、「可視化・分析」するステップに沿って実行されます。データ分析における一連のステップは、基本的に複数のソリューションが不可欠であり、このプロセスを実行するITインフラやシステム基盤などを、まとめて「データ分析環境」と呼びます。
例えば、データの収集・蓄積では、基幹システムやデータベース、データレイクなどが用いられ、蓄積されたデータを抽出・加工するプロセスを得意とするのは、「ETL(Extract・Transform・Load)ツール」です。その後、前処理が施されたデータは、データウェアハウスへ送出され、データアナリストやデータサイエンティストなどのスペシャリスト、またはBIツールのようなソリューションによって、可視化・分析されます。
データ分析環境を整備できれば、勘や経験などの直感的要素に頼らないデータ分析を起点とした、経営基盤を作り上げられるでしょう。それにより、意思決定の迅速化や財務体質の強化、経営リソース配分の最適化、高精度な市場予測など、さまざまな恩恵を企業にもたらします。
特に、情報の可視化・分析に特化したBIツールを活用することで、データ分析のスペシャリストに依存しないセルフ分析環境が整備され、よりスムーズなデータ活用につながります。
AzureとPower BIで"セルフ分析"環境を整備
先述したように、データ分析における「収集・蓄積」「抽出・加工」「可視化・分析」の各ステップは、基本的にそれぞれ異なるソリューションが必要です。そして、データをビジネスの領域で活用するためには、統計解析やコンピュータサイエンスに精通した、データアナリストやデータサイエンティストの存在が欠かせません。
しかし、オンプレミス環境にデータ分析環境を構築するためには、莫大な導入費用と開発期間がかかります。また、データ分析のスペシャリストを発掘・教育することは簡単ではなく、雇用にも相応のコストを要するでしょう。
そこでおすすめしたいのが、「Microsoft Azure(以下:Azure)」と「Microsoft Power BI(以下:Power BI)」です。これらのソリューションを活用することで、ITインフラの構築・運用コストを抑えつつ、高度なセルフ分析環境を整備できます。
Azure:収集・分析基盤を構築
Azureは、インフラストラクチャや開発プラットフォームなどの一式を提供するクラウドサービスです。複数のソリューションによって構成されており、あらゆる形式の情報を保管するデータレイクの「Azure Data Lake Storage」、抽出・変換・送出の役割を担うETLツールの「Azure Data Factory」、多次元データベースを構築する「Azure Analysis Services」など、データ分析環境を整える上で必須となるシステムが搭載されています。
Azureの最大のメリットは、このようなデータ分析に特化したソリューションを、ハードウェアの導入をせずに、クラウド環境に構築できる点です。オンプレミス型のようにアドオン開発に対応していないため、独自のシステム要件を満たすことは難しいものの、クラウドコンピューティングならではの、アジリティ(機敏性)とスケーラビリティ(拡張性)の高さが、最大の魅力といえるでしょう。
Power BI:可視的な分析レポートを作成
Power BIは、データの傾向やパターン、因果関係などを、視覚的に表現するBIツールです。一般的に、基幹システムやデータベースに保管されている各種データは、ETLツールを用いて加工処理を施され、その後にデータウェアハウスに送出されます。そして、データウェアハウスで管理されているデータを、グラフやフローチャート、ヒートマップ、散布図などにビジュアライズし、可視化することがPower BIの役割です。
例えば、売上金額やマーケットシェアをグラフ化して、月間販売数や市場占有率の推移を追ったり、2つのデータをx軸とy軸に置くことで相関関係や因果関係を調査したりする分析が可能になります。Power BIは、さまざまなデータをビジュアライズして、レポーティングする機能を備えているため、データ分析のスペシャリストに依存しない、セルフ分析環境を構築できるのです。
環境整備によって、もたらされる数々のメリット
AzureとPower BIの連携によって、データ分析環境を整備できれば、さまざまなメリットを企業にもたらします。例えば、経営層は組織の財務状況を的確に把握し、市場動向や売上推移などを予測しなくてはなりません。AzureとPower BIを併用することにより、リアルタイムかつ俯瞰的な視点から、経営状況の分析が可能なため、得られた情報を経営方針の策定や、財務体制の見直しなどに活用されます。
また、AzureとPower BIの連携がもたらすメリットは、マネジメントの領域だけではありません。例えば、Azure Data Lake Storageに組織のデータを一元化し、Azure Data Factoryで必要な情報を自動的に抽出・加工するため、分析データの取得や集計をオートメーション化されます。これにより、現場レベルでの業務効率が大幅に改善され、結果として組織全体における労働生産性の向上につながるでしょう。
INTECのサポートも有効
情報通信技術の進歩・発展とともに、データ活用の重要性が高まっているものの、自社の事業形態や経営課題に最適化された、データ分析環境を構築することは簡単ではありません。Azureの導入やクラウドマイグレーションには、莫大な工数を要し、ファイル移行時における、ダウンタイムや情報流出などのリスクも懸念されます。
そこでおすすめしたいのが、幅広い分野でICTコンサルティングやシステム開発を行う、「株式会社インテック(以下:インテック)」の導入支援サービスの利用です。インテックは、TISインテックグループの大手SIerで、Azureや「Microsft 365」、Power BIが搭載されている「Power Platform」などの導入から運用までを、総合的にサポートするサービスを提供しています。
インテックのサポートで、データ分析環境を構築した医療機関の活用例を紹介するので、AzureやPower BIの導入を検討している企業は参考にしてみてください。
事例紹介:医療機関でのデータ活用
現在、日本は世界に類を見ない速度で、少子高齢化が進展しています。総務省の調査によると、2021年9月時点における高齢化率は過去最高の29.1%で、先進諸国の中で最も高い水準となっています。そして、高齢患者が増加していく方、医療従事者は減少傾向にあるのが医療機関の実情です。そのため、医療分野ではデジタル技術とデータ活用による、業務プロセスの改革が重要課題となっています。
インテックは、こうした悩みを抱える顧客の医療機関に対し、会計システムからベッドの空き状況や、入院外来の患者数を抽出・分析する、データ分析基盤を提供しました。その結果、従来は手動で管理していた集計作業が自動化され、病院全体で飛び交う多種多様な指示が適切に行われるようになり、業務効率の大幅な改善に成功しています。
また、データを定期的に抽出し、複数の属性項目を多角的に検索・集計する、多次元データベースとして蓄積することで、データの二次利用、およびリアルタイムで経営状況の把握・分析が可能となりました。病院経営に関わるあらゆる情報を、統合的に管理・分析する基盤を構築することにより、組織全体における、生産性向上につながった事例といえるでしょう。
まとめ
AzureとPower BIを併用することで、データ分析のスペシャリストに依存しない、データ分析環境を構築できるため、経営状況の可視化や意思決定の迅速化、業務連携の強化などのメリットを組織にもたらします。データドリブンの実現に必要な経営基盤を構築するために、インテックの導入支援サービスの利用を検討してみてください。