中小企業が元気になれば、日本全体が元気になる。企業全体の99.7%を中小企業が占めている日本では、日本経済の未来が中小企業の中にあると言っても過言ではないでしょう。しかし最近では、中小企業の事業承継問題も浮き彫りになり、将来的に大きな経済損失を生む可能性があると予測されています。
一方で嬉しいニュースもあります。中小企業庁等でもさまざまな対策を講じており、2018年には条件に一致した中小企業の株式の相続および贈与にかかる税金を、全額猶予する法改正が施行されました。また、近年では中小企業の海外進出が活発になっており、日本の中小企業が持つ技術力や商品力を海外で存分に発揮しているというニュースです。例えば、日本酒が世界各国で一大ブームになっており、下火になっていた酒造業界全体も徐々に元気を取り戻しつつあります。
ただし、中小企業の海外進出には確かに課題もあり、それらの課題をクリアできずに事業撤退に至るケースも、課題が大きすぎて海外進出にこぎつけないケースも多々あります。本稿では中小企業の海外進出の課題を整理しつつ、ERP(Enterprise Resource Planning)でその課題をどう解決できるのかについて紹介します。
中小企業の海外進出の課題
中小企業の海外進出方法は大きく分けて①輸出と②直接投資です。これは提供する商品やサービスの違いによって何が最良かは変わってくるため、輸出と直接投資、どちらが海外進出の方法として優れているかは、一概には言えない問題です。ただしどちらの海外進出方法を取っても課題に直面することには変わりありません。ここでは、輸出と直接投資に分けて海外進出時に直面する課題を整理していきます。
輸出企業が直面する課題
1.販売先の確保
中小企業の海外進出が活発化している背景には、中国や東南アジアといった新興国において、人口増加や海外資本受け入れなどによる大きな経済発展を遂げていることが挙げられます。製造業を中心とした日本の中小企業の多くは、そこに目を付けて海外進出を目指すケースが多いでしょう。
他方、先進国をはじめとした海外企業も同じように中国や東南アジアをビッグマーケットと認識しており、商品やサービスに輸出に積極的です。海外企業に比べてマーケティング戦略が弱い日本の中小企業が、いかにして販売先を確保するかが海外進出における課題となっています。
2.為替変動のリスク
販売先の確保の次に、輸出企業が懸念しているのが為替変動のリスクです。特に新興国では社会情勢が不安定なこともあり、ちょっとした出来事で為替が大きく変動し、不利益を被ることがあります。加えて、為替変動による急激な売上増も中小企業にとっては税金額が増大する原因になり、管理すべきリスクとなります。
為替は変動的なもので、相当目が肥えていないとそのリスクを適切に管理することは難しいでしょう。
3.現地の市場動向・ニーズの把握
国内市場で高いシェア率を誇る商品やサービスであっても、それが海外で受け入れられるとは限りません。海外消費者の生活習慣や文化、海外企業の商習慣やビジネス観などは日本のそれとは大きく違います。特に日本は島国ということもあり、世界的に見ても特殊な文化を築き上げています。
これは海外進出を計画している日本の中小企業にとって不利に働くことが多くなります。加えて、現地市場動向やニーズの把握をするための調査が必要になるため、コスト・労力がかかることは言うまでもありません。
4.採算性の維持・管理
中小企業の海外進出先の多くは中国や東南アジアなどの新興国です。前述のように、これらの国々では社会情勢が安定していないため、急激な法制度の改正や市場変化によって事業採算性が取れなくなる可能性があります。
海外企業の市場参入によって市場が激変するというリスクもあるでしょう。日本の中小企業にとっては採算性の維持及び管理が難しく、気づいたら事業が立ち行かなくなっているケースも少なからず存在します。
5.信頼できる提携先・アドバイザリーの確保
現地で信頼できる提携先やアドバイザリーを確保することで、中小企業が海外進出で成功する大きなポイントになります。海外進出に慣れていない企業にとって、彼らの意見は大変貴重であり、だからこそ信頼性が重視されます。
しかし、国内で提携先やアドバイザリーを確保するのと、海外で確保するのとでは話が全く違い、信頼性の見極めが難しくなります。
直接投資企業が直面する課題
1.現地人材の確保・育成・管理
直接投資によって海外進出を図っている中小企業が抱える最大の課題は、現地人材の確保および育成、そして管理です。日本の人材は世界的に見ても勤勉というイメージで通っていますが、海外進出の際はそれを痛感することになります。そもそも、日本人と外国人とでは仕事に対する概念や価値観がまったく違うため、国内人材を雇用するような感覚で現地人材を確保すると、必ず失敗します。
加えて、現地人材の育成には文化や言語の壁がありますし、モチベーション等を管理するための施策も異なります
2.人件費の高騰
かつては人件費削減の名目で進められてきた海外への直接投資も、現在では効果が薄くなってきています。その背景にあるのが人件費の高騰です。特に東南アジア諸国では軒並み人件費が上昇しており、以前のような人件費削減効果はあまり得られていません。
この傾向は今後も続く見通しで、人件費削減を目指して海外進出を検討している企業にとっては、新しい戦略を練る必要があるでしょう。
3.必要資金の確保
大企業に比べて財務基盤が小さい中小企業にとって、海外進出のために必要な資金を確保することは容易ではありません。信頼できる提携先やアドバイザリーの確保にも、多くの資金と時間を費やします。
内需要の縮小を受けて海外進出を狙う中小企業も多いですが、足元の業績が不安定なままですと、海外進出に必要な資金を確保することが難しくなるため、まずは国内事業の回復を図る必要性もあります。
4.現地の法制度・商習慣の把握
当然のことながら、日本と海外とでは法制度や商習慣に大きな違いがあります。特に法制度は予告なく変化するケースも少なくないため、法制度への対応だけで多額の資金を費やしたケースもあります。
5.海外展開をリードする人材の確保
海外進出にあたり、海外での事業展開をリードする人材の存在は欠かせません。しかし、初めて海外進出する中小企業にはそうした経験を持つ人材は少ないですし、確保するにも新しい人件費が加算されます。
ERPで解決できる海外進出課題とは?
基幹系システムを統合したERPの中には、クラウドサービスによって海外拠点との連携をシンプルに行える製品があります。そうしたERPを導入することで、現地人材との連携性が高まり、情報共有を促進することで海外拠点の経営情報をリアルタイムに取得しつつ、全社一貫の経営方針を立てることが可能です。
さらに、海外拠点で新しいシステムを構築するのではなく、国内本社と同じシステムを共有できることから育成・管理にかかる時間やコストを大幅に削減できます。統合的な業務プロセスを構築できるのも大きな利点です。
ERPを導入したからといって、海外進出の課題をすべて解決できるわけではありません。ただし、各課題の解決を促す助けにはなりますし、実際に海外拠点での事業がスタートしてからはERPの存在感が一気に増します。海外進出を検討している中小企業の皆さんは、このERPが提供するソリューション(解決)にぜひ注目してください。