コールセンターが適切に稼働しているかどうか知るためには、「稼働率」を把握することが大切です。本記事では、コールセンターにおける稼働率の定義や求め方、応答率・占有率との違いについて解説します。併せて、稼働率を最適化するコツもご紹介しますので、自社のコールセンターの稼働率改善を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
コールセンターの稼働率とは
稼働率とは、一般的に工場設備などの生産効率を指す語ですが、コールセンターにおいては意味合いが変わってきます。
コールセンターにおける稼働率とは、給与支払時間のうち、オペレーター業務に従事した時間の割合のことです。ここでいう「給与支払時間」とは、無給休憩を除く非生産時間(ミーティングや研修、トイレ休憩などに割かれる時間)も含めた時間をいい、具体的には通話時間・保留時間・後処理時間・待機時間・その他の時間で構成されます。
稼働率は、オペレーターの稼働状況や健康状態を測るうえで重要な指標とされており、これを把握することで「オペレーターの数は適正か」「オペレーターに過度な負担をかけていないか」「勤怠が適切に行われているか」などが確認できます。実際の算出方法は以下の通りです。
【稼働率=(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)÷給与支払時間】
もう少しイメージしやすいよう、簡単な計算例をご紹介します。給与支払時間を420分と仮定し、下記の条件で計算してみましょう。
- 給与支払時間:420分
- 通話時間:180分
- 保留時間:30分
- 後処理時間:50分
- 待機時間:70分
この場合、それぞれの時間を上記の式に当てはめると「(180+30+50+70)÷420=0.7857……」となり、稼働率は約78.6%となります。詳しくは後述しますが、これは国内企業で一般的に稼働率の目標とされる値に近い数値といえます。
稼働率と応答率の違い
応答率とは、顧客からの入電に対し、オペレーターが応答した割合のことです。コールセンター業務においては、目標の達成度合いを測るKPIとして設定されることも多く、非常に重要な指標のひとつとして認識されています。応答率を求める計算式は以下の通りです。
【応答率=対応件数÷着信件数】
わかりやすい例をいえば、2,000件の着信に対して1,750件対応できた場合、「1750÷2000=0.875」となり、応答率は87.5%となります。
従業員個人の指標になる稼働率とは異なり、応答率ではコールセンター全体のオペレーター状況を測ります。応答率が低いほど、それだけ多くの顧客が待たされたり諦めたりしたことを意味します。企業のサポートセンターとしての役割が問われるため、応答率はできる限り向上・維持に努めなければなりません。
稼働率と占有率の違い
占有率とは、オペレーター業務に従事した時間のうち、顧客対応(通話・保留・後処理)に充てた時間の割合をいいます。稼働率との大きな違いとして、あくまで占有率は顧客対応にのみフォーカスするため、非生産時間を含まない点が挙げられます。具体的には、以下の方法で算出されます。
【占有率=(通話時間+保留時間+後処理時間)÷(通話時間+保留時間+後処理時間+待機時間)】
この計算式からわかるように、占有率を求めるうえでは待機時間の多寡が重要なファクターであり、待機時間の増減に反比例する形で占有率も上下します。大まかな目安としては76%~87%が許容域とされており、これより高い場合はオペレーターに負担がかかっている状態を意味し、低い場合はオペレーターの余剰ないしシフト管理に問題があることを示唆しています。
もっとも、オペレーターの数が適正であったとしても、そもそも入電数が少なければ自然と待機時間は長くなります。コールセンターへの入電数は曜日や時間帯によって変動する場合があるため、占有率の値だけを見て判断するのではなく、全体を見て判断することが大切です。
コールセンターの稼働率の理想
アメリカのCOPC社が定めたCX規格によれば、コールセンターの稼働率は86%が理想とされています。しかし実際には、業務難易度の高さやオペレーターのスキルなどを考慮し、国内企業では80%〜85%を目標とするケースが多いようです。これより低い値の場合は、オペレーターの人員過剰または従業員のシフト管理に問題があることを意味します。ただし、新人オペレーターが多い場合は数値が低くなる傾向にあるため、その点は考慮しなければいけません。
一方、上記の数値よりも高い場合は、オペレーターに過度な負荷がかかっている可能性があります。離職率の増加や応対品質の悪化、健康障害といった問題につながりかねないため要注意です。もっとも、ベテランオペレーターが多い場合は数値が高くなる傾向にあるため、こちらも同様に考慮する必要があるでしょう。
このように稼働率は、適正な値をキープすることが求められますが、場合により例外があることも押さえておかなければなりません。適正値はもちろん意識しておくとして、現場の状況も加味しながら総合的に判断することが大切です。
コールセンターの稼働率を最適化するコツ
では、コールセンターの稼働率を最適化するためには、具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
オペレーターを適正人数にする
稼働率に過不足がある場合、オペレーターの人数が適正でない可能性があります。稼働率が目標の値になるように、人数を調整しましょう。とはいえ、オペレーターの適正人数が何人かわからなければ対応できません。そこで押さえておきたいのが、「アーラン式」と呼ばれる測定方法です。
この方法は、デンマークの電話技師アグナー・クラルプ・アーラン氏が提唱したもので、「待ち行列理論」としてアーランB式やアーランC式など複数の式があります。コールセンターではアーランC式を利用し、入電数に対する最適なオペレーター人数を測定します。まず計算式を利用する前に、アーランC式に必要な以下3つのKPIを測定しましょう。
- 平均処理時間
- 単位時間あたりの入電数
- 平均応答時間
平均処理時間は、顧客対応の平均時間です。「平均通話時間+平均後処理時間」で値を求めます。また、単位時間あたりの入電数は、30分を基本単位として入電数を測定します。そして平均応答速度は、顧客が電話をかけてから対応に入るまでの時間のことで、これを平均化して値とします。
これら3つの指標を算出できたら計算に移るわけですが、実際の式は非常に複雑であるため、自動計算してくれるサイトを利用しましょう。
待機時間の有効活用
稼働率が低い場合は、シフト管理に問題があるのかもしれません。そんなときは待機時間を有効活用して、従業員のスキル向上を目指しましょう。
利用する日は、入電数の少ない日がおすすめです。先述したように、入電数は時間や曜日によって変動するため、入電数が少なく待機時間が長くなるときにスキル向上を図れば、時間を効率的に活用しつつ稼働率の向上につなげられます。
スキル向上の具体的な手段としては、席で学習できる環境を構築したり、研修を実施したりするのがよいでしょう。
オペレーターの教育
コールセンターでは丁寧かつ素早い対応が求められるほか、クレームに対応する能力や精神力も持ち合わせていなければいけません。そこでオペレーター教育においては、「応答スピード」「対応力」「クレーム対応」の3つのスキルアップを目指し、精神ケアやモチベーション管理を適度に行います。
具体的な教育方法としては、マニュアル化と研修が挙げられます。まずはマニュアルを用意して、オペレーターに覚えさせましょう。マニュアルがあれば、オペレーター全体の応対品質をある程度揃えられるうえ、クレーム対応やトラブル時の対策なども知識として押さえられます。
そして研修では、ロールプレイと実践研修を行います。ロールプレイとは、従業員が顧客に扮してオペレーターと模擬対応することです。さまざまな顧客を用意することで対応力が上がるほか、オペレーターごとに苦手な分野がわかります。稼働率に問題がある場合は、問題の原因を探るのにも役立つでしょう。
一方、実践研修では実際に顧客対応に挑戦しますが、一般的にはトレーナーとともに行います。実践の中で場慣れさせつつ、適切な対応ができているかどうか確認しましょう。
まとめ
稼働率・応答率・占有率は、それぞれ測定する領域こそ異なるものの、いずれもコールセンター業務の改善を図るうえで押さえておくべき重要な指標です。これらの値を把握・適正化することは、応対品質の向上や就労環境の改善、ひいては顧客満足度の向上にもつながるため、できる限りこれに努める必要があります。
とはいえ、これらの値を求めるためには、さまざまなデータを要します。人力で集めるには多くのリソースがかかるため、全体の状況を見える化できる専用ツールの導入がおすすめです。