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ERPの導入効果の測定はどうすれば良いのか?

IT投資の効果測定というのは、単純な数字で表せないことが多く難しい問題の1つです。生産管理システムや会計ソフトなど、単一部門でサービスを提供するITならばその効果を何とか可視化できても、ERP(Enterprise Resource Planning)など大規模なITとなると、効果測定は一気に複雑化します。

しかし、企業が限られた資源の中でITを運用しているので、「導入したERPが効果を発揮しているのか?」と考え、効果測定に取り組むのは至極当然のことです。本稿では、これからERPを導入する企業や、すでに導入した企業を対象にERPの導入効果測定についてご紹介します。

ERPの導入効果の測定はどうすれば良いのか?

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効果測定の実施状況

古いデータになりますが、経済産業省の委託を受けてJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が取りまとめた資料から、IT投資に対する効果測定の実施状況について確認します。

資料によれば、事前評価を「実施している」と回答した企業は21%、「一部で実施している」と回答した企業は40%となっています。一方、事後評価を「実施している」と回答した企業は11%、「一部で実施している」と回答した企業は42%と、IT投資後の効果測定を実施しているのは全体のわずか53%です。このデータから、十分な効果測定が実施されていないことが分かります。

同調査資料の発表からすでに10年以上が経過しているものの、昨今の傾向としてIT投資の導入効果へ積極的に取り組んでいる企業は、やはり少ないように感じます。

なぜ効果測定が必要なのか?

一番シンプルな理由は、「IT投資で新しい利益を得ているかどうか?」を把握することです。経営というのはより少ない投資でより多くの利益を生むことが基本であり、IT投資はそのための手段の1つです。

人件費や販管費などの経費と、営業利益などを突き合わせて「いくら利益が出ているか?」を把握するように、IT投資に対して生まれた利益について把握するのは考えるまでもなく当然のことです。IT投資が新しい利益を生んでいるかどうかを把握できなければ、継続的な投資はできません。

そしてもう1つの理由は、「経営層にIT投資へ積極的になってもらう」ことです。昨今の市場変化を受けて、柔軟性の高いビジネスを展開することの必要性は誰もが理解しています。しかし、目先の利益を追求するあまり、IT投資予算の確保が難しくなっています。つまり、多くの経営層はIT投資に対して積極的ではないケースが見受けられます。

それはなぜか?やはり「IT投資の費用対効果が見えにくい」というのが最大の原因でしょう。経営層は日々、利益を生むか生まないかの瀬戸際で多数の意思決定に迫られているため、費用対効果がハッキリとしないIT投資には積極的になれないのは理解できます。これは、日本企業の多くがIT投資において、海外企業から遅れを取っている原因でもあります。

あれもこれもとIT化すればよい、というわけではありませんが、IT投資がビジネスに柔軟性をもたらし、日々変化する市場に対応するための手段になることは間違いありません。そうした恩恵をスムーズに受けるためにも、IT投資の効果測定を実施して、納得感のある評価を経営層へ提出する必要があります。

ERP導入の効果測定が難しい理由

ERP導入後に効果測定が欠かせないと理解していても、取り組みが困難で思うように実行に移せない企業も少なくありません。効果測定が難しい理由はさまざまですが、定量的に効果を表すのに苦慮するケースが多いです。

たとえばERP導入に際し「商品在庫を30%削減する」という経営戦略があり、そのためにERPを導入すると仮定します。しかし、経営戦略として商品在庫を削減」するには、設備の見直しや新システムを使うための人員教育など、ERP投資以外にもいくつかの投資項目が含まれます。従って、ERP投資の部分だけを切り出して算出することは難しく、正しい効果測定ができなくなります。

ERP導入の事後評価について

では、ERP導入の効果測定はどのように実施すればよいのでしょうか?その答えの1つになるのが、JUASが発表している『IT投資の評価手法の研究』にあります。同資料の2章6-1に表記されている、「開発完了後(事後評価)における投資評価チェックリスト」をご紹介します。

 

質問内容

点数

わからない

納得← →不満

1経営戦略との適合

(1)プロジェクトの結果は企業戦略と適合しているか、補完すべき要素は必要十分か

4

3

2

1

0

(2)成功要因、失敗要因が整理され、企業のノウハウとして蓄積される仕組みができているか

4

3

2

1

0

(3)運用、利活用の体制は十分か

4

3

2

1

0

2投資費用

(1)当初の開発で取り残した機能のフォローの仕方は明確か

4

3

2

1

0

(2)総合効果表による確認(稼動工期、稼動後の品質、投資費用の対計 画比など)ができているか、結果は妥当か

4

3

2

1

0

(3)システムライフサイクルコストは計画通りか

4

3

2

1

0

(4)リスク計画は妥当であったか、どのようにフォローしたのか

4

3

2

1

0

3投資効果

(1)一次効果、二次効果、三次効果(ROI)と、フォローの仕方を確認しているか(さらに追跡評価すべき項目は何か、追加予算の必要性はあるか)

4

3

2

1

0

(2)KPI、ユーザー満足度、他社比較(ベンチマーク)、実施しないリスクの計画対比は確認したか、問題はなかったか

4

3

2

1

0

4プロジェクトマネジメント

(1)運用目標値(含む SLA)が設定されているか、その内容は妥当か

4

3

2

1

0

(2)運用・利活用のリスクは何か、関係者の配慮事項は明確か

4

3

2

1

0

ト (3)顧客迷惑度指数を設定しフォローしているか

4

3

2

1

0

それぞれの項目について経営者やプロジェクト責任者が確認し、「4納得している」「3まぁ納得している」「2やや不満を感じている」「1不満を感じている」「0分からない、判断できない」より選択し、それぞれの合計点が一定基準以下の場合は費用対効果が下がっている可能性があると考えましょう。

さらに、ERP導入の効果測定においては「成功/失敗が企業のノウハウとして蓄積されているか?」というのも重要な視点になります。ERP導入のどこかに失敗があるとしても、その事実や成功のためのノウハウを吸収できれば、結果として収穫があったことになります。つまり、ノウハウの有無を確かめることもERP導入の効果を測定する上で大切なことなのです。

いかがでしょうか?ERP導入の効果測定は難しいですが、取り組んでみないことには分からないこともたくさんあります。ぜひ、上記のチェックリストを用いて、ERPの導入効果について測定してみてください。

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