小売業における在庫管理は、重要な経営課題の一つです。在庫管理の効率化やコスト削減は、容易に解決できる問題ではないでしょう。消費者のニーズは多様化し、目まぐるしく変化しています。企業はそれらに対応するために多くの在庫を抱えるわけですが、それらが高いコストを生み、経営を圧迫していることも事実です。
そこで今回は在庫管理の概要を紹介したうえで、在庫管理をするメリットや効果的な手法やソリューションについて解説します。
在庫管理とは
最初に基礎知識として、「在庫管理」の意味や概要を整理しておきましょう。企業は商品を製造、販売するうえで、その原材料や商品を必要に応じて適切に管理しておかなければなりません。必要になったときに必要な量や数を必要な場所に用意できるように、把握しておくことが求められます。この活動を「在庫管理」といいます。
在庫管理には、売上拡大とコスト削減という2つの大きな目的があります。
売上拡大を狙うには、消費者のニーズとタイミングに合わせて在庫をストックしておかなければなりません。在庫がなければ商品は品切れになり、顧客は別の店舗や企業に流れていってしまいます。すると本来発生するはずだった売上がなくなり、競合に後れを取ることになります。
在庫管理は、どんなコストの削減につながるのでしょうか。それは、主に物流コストです。適切な数や量の在庫を用意しておかなければ、配送・保管コストが余計に多くかかってしまい、売上に悪影響を及ぼします。
売上拡大を狙うには十分な在庫が必要ですが、単に多くの在庫を抱えておけばよいという単純な話ではありません。だからこそ企業は在庫管理を行って、必要な量を的確に把握するために、在庫管理を行うのです。
在庫管理の方式
続いて、在庫管理の方式について詳しく見ていきましょう。在庫管理には定量発注方式と定期発注方式があり、それぞれの特徴と違いを理解しておくことが大切です。
定量発注方式
例えば商品の在庫が残り10個になった場合、在庫を15個にするために5個発注するルールになっていたとします。
発注するタイミング(在庫が10個になったとき)と、そのとき発注する数(5個)はあらかじめ決められており、これを定量発注方式といいます。状況に応じて発注量を変えないのが特徴です。
機械的な発注方式であるため、需要と供給がほとんど変化しない商品に取り入れられることが多いです。ルールに従って必ず発注が行われるため、決められた在庫をキープするには最適な方式と言えます。
しかし、市場でどのような変化が起こるかは予測できません。昨今、猛威をふるわせている新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、マスク需要が急増したように、何らかの理由で需要に変化があった場合、定量発注方式では対応できない可能性があります。また、生産が安定しない製品にもあまり向いていません。
定期発注方式
定期発注方式は、発注を行う期間や日程がルールとして決められているのが特徴です。
例えばある製品の発注が、月1回、週1回、10日ごと…といったように期間が指定されていたとします。このときは、発注数や現在抱えている在庫は関係なく、期間というルールに従って発注されます。これが定期発注方式です。
定期発注方式の場合は、どれくらいの量を発注するか、その都度在庫状況を見て発注量を判断します。定量発注方式と違って機械的に発注を行うわけではありません。そのため、在庫数とニーズのバランスを慎重に見極めながら発注することが求められます。
在庫管理のメリット
ここからは、在庫管理がもたらすメリットについて考えてみましょう。在庫管理を行って自社が抱える在庫数を把握することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的にどういった企業活動に影響するのか見ていきます。
余剰在庫の減少
小売業では、余剰在庫の管理とその取り扱いに悩まされることが多いです。発注しすぎて残った在庫や、需要が縮小して減らなくなった在庫は、保管・配送コストが目立つようになります。これが余剰在庫です。
スムーズな経営活動と売上拡大のためには、余剰在庫を減らす必要があります。適切な在庫管理がなされていなければ、余剰在庫が発生しやすくなり、結果としてコストはかさみます。売上につながらないだけでなく、無駄なコストが利益を圧迫することになるでしょう。
在庫管理システムを運用することで在庫数を管理し、適切な在庫数を把握すれば、余剰在庫を大幅に減らせるでしょう。
無駄なスペースの削減
在庫管理は、在庫を保管する倉庫などのスペースを最適化することにも貢献します。在庫管理システムで必要数を把握しておけば、余剰在庫や滞留在庫で倉庫が埋まってしまうことはなくなります。
スペースの無駄を減らすことのメリットは、単に倉庫内が整理されることだけではありません。無駄なスペースが減ると、賃料や光熱費、人件費といったコストの削減にもつながります。
また、不要な在庫管理のために人員や時間を取られることがなくなるため、それらを別の業務に充てることができます。
欠品の減少
適切な在庫管理がなされていなければ、商品の欠品が発生しやすくなります。
商品の欠品は販売機会のロスを招き、売上減少に直結し、売上に悪影響を及ぼします。また、欠品が頻繁に生じると、顧客からの信頼を失うことにもなりかねません。消費者が「在庫の安定しない店よりも安定している店を選びたい」と思うことは、当然です。
在庫管理システムによって在庫数を把握し、それに応じた発注がなされていれば欠品防止につながり、ひいては顧客からの信頼を得ることになります。
在庫管理の手法
最後のポイントとして、在庫管理の手法にはどのようなものがあるのかを整理しておきましょう。
現品管理
在庫管理には現品手法という手法があります。企業は倉庫や店舗などにある在庫を自社が所有する資産として、その数を把握する必要があります。これが「現品管理」と呼ばれるものです。
現品管理は、完成された製品のみを対象とするわけではありません。現品管理では原材料や部品、仕掛品などもデータとして数える対象になるため注意が必要です。
こうした一連の作業や管理は、企業が製品を生産するうえで重要な役割を果たします。どれだけの原材料や部品を抱えていて、完成品はどれだけあるのかといった生産の進捗を正確に把握しなければ、在庫数を管理することはできません。欠品を起こすことなく売上につなげるためには、現品管理が重要です。
在庫管理システムの活用
多くの企業は在庫数を素早く把握するために、在庫管理システムを導入しています。アナログな在庫管理はヒューマンエラーが発生しやすく、在庫数を把握するスピードにも限界があります。
在庫管理システムなら、在庫を過不足なく把握することができ、数え間違いなどのミスもありません。企業が導入しているほかのシステムとの連携も可能なため、業務効率化につながるとして注目を浴びています。
在庫管理システムには、その企業向けに新たにシステムを構築する従来のオンプレミス型とクラウド型があります。オンプレミス型は、導入コストはかかりますが既存システムと連携しつつオリジナルのシステムを作ることもできるため、企業のニーズを取り入れたかたちにカスタマイズ可能な点が特徴です。
クラウド型の在庫管理システムは導入までのスピードが非常に早く、ネットワークを介するため社外からでもシステムにアクセスできるというメリットがあります。カスタマイズ性はオンプレミス型に軍配が上がりますが、クラウド型としての迅速な導入の実現性・高い利便性により、昨今多くの企業が注目しています。
まとめ
在庫管理は正確に在庫数を把握し、売上拡大やコスト削減を図るうえで重要な役割を果たします。より効率的な在庫管理を実現するためには、自社に合った在庫管理システムの導入が不可欠です。
Microsoft Dynamics 365に備わっている在庫管理機能には、収益性をより高めるための豊富なメリットがあります。売上拡大とコスト削減、そして顧客満足度向上のために在庫管理システムの効率化を目指す際は、ぜひMicrosoft Dynamics 365の導入をご検討ください。