「保守作業」とは機械や設備の安定性を維持したり、改善するための仕事です。しかし、保守作業と聞いてピンとくる方は少ないでしょう。
本稿では保守作業の基礎から具体的な内容までをご紹介します。 今まで「保守作業について知らなかった」「もっと保守作業を効率的に行いたい」という方は、この機会に理解していきましょう。
保守作業ってなに?
製造業では、4つの「M(エム)」を整えることが重要だと考えられています。
Man(マン)
製造業で働く作業者のことです。全自動の生産工場は存在せず、不良仕訳といった作業はやはり人が行う方が正確です。製造には必ず作業者が関わっているのです。
Method(メソッド)
生産方法のことです。最も効率良く生産するための方法は何か?を常に考え、それを現場に適応していくことで継続的な改善を図っていきます。
Material(マテリアル)
原材料や部品のことです。適切な原材料や部品をベストなタイミングで供給することで、高い生産性を生み出します。
Machine(マシーン)
機械や設備のことです。工場では必ず何かしらの機械や設備が稼働しており、これを安定稼働させることで大量生産を可能にします。
いずれの要素も製造業に欠かせないものですが、強いて一番大切な要素をあげるならそれはMachine(マシーン)です。機会や設備がストップしてしまうと製造停止に陥りますし、いずれは壊れるものなのでメンテナンス等が必要になります。
保守作業とはつまり、そうして機械や設備に定期的なメンテナンスを行ったりして、機械や設備の寿命を延ばしたりパフォーマンスを維持・向上するための取り組みです。
保守作業の大きな3つのプロセス
1つの機械や設備に対して保守作業を行う際は、3つの大きなプロセスが実行されています。
修理
修理は機能が停止したり、パフォーマンスが低下した機械や設備に対し、その原因を究明して対処します。機機械や設備に何らかのトラブルが発生すると、そこにどういった原因があるのかを究明することから始まります。機械・設備関連のドキュメントを確認しながら原因究明していくのが一般的です。
その場で対処可能なトラブルについては即座に修理し、新しい部品が必要な場合は発注してからトラブルに対処していきます。ちなみに修理プロセスは「事後保全」とも呼ばれます。
定期メンテナンス
定期メンテナンスは機械や設備を継続的かつ安定して稼働させるために、点検、修理、部品交換などの保全計画を立てて定期的にメンテナンスを施していくものです。部品交換の目安については一定期間で交換する「時間基準保全」と、部品の劣化具合に応じて交換する「状態基準保全」の2通りがあります。
修理プロセスではトラブルを未然に防ぐことができません。それに対して定期メンテナンスは定期的にメンテナンスを施行するので、トラブルを抑止したり機械の寿命を延ばしたりと様々なメリットがあります。「予防保全」とも呼ばれます。
予防メンテナンス
機械や設備の安全稼働のために行う予防活動のことです。部品がどれくらい劣化しているか等をしらべて、交換が必要な部分に対してのみ措置を行います。必要な部品だけを事前に調達してから交換するので、時間とコストを少なく抑えることが可能です。ただし点検ヵ所や部品寿命の見極めにはスキルが必要であり、作業員の負担が大きくなる傾向にあります。
これらのうち、修理の占める割合を最小限に抑えることが理想とされています。しかしながら機械や設備の保守作業が複雑になるほど定期メンテナンスや予防メンテナンスでは見つけきれない要因によって故障が発生します。実際の現場では、定期メンテナンスと予防メンテナンスか抜け落ちた部分を修理ですくうという形になるでしょう。
保守作業を徹底することのメリット
上記3つの保守作業プロセスを徹底することで次のようなメリットを享受できます。
異常個所の早期発見
異常個所の早期発見は主に定期メンテナンスで行われます。早期発見によって突発的な修理を低減し、保守作業への影響を最小限にして予算計画が立てやすくなります。
予備部品在庫の適正化
定期メンテナンスと予防メンテナンスを徹底していると、異常が発生しやすい箇所を特定することができます。万が一突発的な故障が発生した際にも迅速に対処できるよう予備部品を調達し、かつ大量の部品を準備する必要性をなくせます。
メンテナンスコスト削減
部品在庫の無駄を削減したり、計画的なメンテナンスによって異常個所と修理方法を素早く特定することができ、メンテナンスコストの削減につながります。
設備の耐用年数延長
機械や設備の定期メンテナンスにて締結されているボルトやナットの締め込み作業や給油、さらに周辺部品や付帯設備への損傷を防ぎ、耐久性をアップし耐用年数を延長できます。
不良率削減
機械や設備を適切にメンテナンスし、最良状態での稼働を常に維持することで機械や設備要因での不良発生を防ぐことにつながります。
作業保守台帳の管理
機械や設備の作業保守は基本的に、管理台帳を使って行います。管理台帳には以下のような事項が記載されています。
・機械や設備の購入にかかわる項目
購入・契約年月日、導入年月日、稼働開始年月日、購入金額、保守金額、購入・リース金額
・機械や設備自体にかかわる項目
メーカー、型式、製品名、仕様書、設計書、ロケーション、稼働ライン
・整備にかかわる項目
定期メンテナンス状況、社内メンテナンス状況、点検年月日、点検者
・故障・修理にかかわる項目
故障発生年月日、故障内容、暫定対処、修理内容、修理年月日、使用部品、修理金額
・保険にかかわる項目
機械向け保険の有無、保険内容
こうした管理項目を管理台帳に記録しておくことで、トラブルが発生した際に台帳を参照にしつつ何が原因になっているかを確認すると、素早い修理対応が可能です。
ERPとIoTで実現する「予知メンテナンス」
従来の保守作業と一線を画すプロセスとして注目されているのが「予知メンテナンス」です。たとえば定期メンテナンスでは一定期間ごとにメンテナンスを実行しますが、予知メンテナンスは機械や設備に取り付けられたIoTセンサーからあらゆるデータを取得し、リアルタイムに機械や設備の稼働状況を可視化します。センサーから送られてくるデータを分析して、情報として表すことで機械や設備に健康状態が確認できるということです。
もしも異常個所発生の兆候が見られれば、即座に予防メンテナンスを行い異常が発生する前に対処します。予知メンテナンスを実行することで実質的な故障ゼロを目指すことができますし、作業保守をサービスとして提供することも可能です。
Microsoftが提供する統合アプリケーションシステムのDynamics 365は、IoTセンサーと連携することで予知メンテナンスを実行可能な環境を提供するITソリューションです。すでにDynamics 365によって予知メンテナンスを実行し、サービス化した先進事例は存在し、今後さらなる拡大が予測されています。
予知メンテナンスを実現できれば機械や設備の稼働率は飛躍的に向上し、生産性も同時にアップします。作業保守を徹底することを考えるのならば、基本的なプロセスだけでなくそこに予知メンテナンスを取り入れることで、さらに高度な保守作業を実行してみてはいかがでしょうか?