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保守点検業務はIoTで進化する 次世代の保守点検とは

保守点検業務はIoTで進化する 次世代の保守点検とは

製造業のようなものづくり産業にとって生産設備は付加価値を創出する源泉です。そのため、いかにして工作機械や産業機械の恒常的な安定稼働を担保するかが重要な経営課題といえるでしょう。そこで重要となるのが「保守点検業務」です。本記事は保守点検の概要や現状の課題、IoTを活用した次世代型の保守点検業務について解説します。

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保守点検業務とは

保守点検業務とは、生産設備の安定的な稼働を担保するために実施する点検やメンテナンスなどの業務領域を指します。企業とは事業活動を通じて製品やサービスを創出し、顧客や消費者に付加価値を提供することで利益を得る組織です。そして、組織としての健全な成長と発展を通じて社会に貢献することが企業の存在意義といえます。

製造業や建設業の事業領域では工作機械や産業機械、電子機器などの活用が不可欠であり、こうした生産設備の安定的な稼働をいかにして担保するかが重要な経営課題です。ものづくり分野に携わる業種にとって生産設備は価値創出の源泉であり、機器に異常や故障が発生した場合、事業活動の継続に支障をきたすのはもちろん、重大な労働災害を招く要因になり得ます。

このような危険や不確実性を最小化するためには、駆動装置や計器類などの稼働状況を定期的に点検し、適宜部品の交換や調整といったメンテナンスを行わなくてはなりません。設定された周期に応じて機器を点検する「時間計画保全」や、機器の故障や部品の劣化具合に応じて対策を講じる「状態監視保全」などを実施し、生産体制の安全性と効率性を確保することが保守点検業務の本質的な役割です。

保守点検業務が抱える問題

ここからは、保守点検業務が抱える問題について見ていきましょう。現在、人材不足や高齢化率の上昇といった社会的背景から、国内のものづくり分野ではさまざまな経営課題が顕在化しています。とくに保守点検や設備保全の業務領域において深刻な経営課題となっているのが以下の2つです。

熟練人材の減少

日本の総人口は2008年の1億2,808万人を頂点として下降の一途を辿っており、さらに総人口に占める高齢者の割合は29.1%と世界で最も高い水準となっています。このような社会的背景からさまざまな業種や分野で人手不足が問題となっており、なかでもその傾向が顕著なのが製造分野です。実際に経済産業省の調査によると、製造業を営む企業の多くが重要な経営課題として「人手不足」を挙げています。

また、製造分野は若年者の入職者数が減少傾向にあり、就業者の高齢化が年々進みつつあるのも大きな問題です。基本的に製造業は高度な技術と深い知識が求められる業種であり、とくに生産設備の保守点検は属人的な業務の代表格といえます。ところが、経験豊富な熟練工が定年を迎えるなか、若年者の入職者数が減少しているため、技術継承が困難になっている企業が少なくありません。

故障時に長いメンテナンス時間が必要

冒頭で述べたように、製造業のようなものづくり産業にとって生産設備は付加価値を創出する源泉です。工作機械や産業機械に異常が発生すれば製造ラインを停止せざるを得なくなり、復旧するまでに相応の時間や人的資源などのコストを必要とします。生産設備の復旧に時間を要するほど生産性の低下や機会損失、そして収益性の低下につながるでしょう。

とくに近年はテクノロジーの進歩に伴って市場の変化が加速しており、製品や技術のライフサイクルが短縮化していく傾向にあります。このような時代のなかで企業が競争優位性を確立するためには、工作機械や産業機械の故障を最小化するとともに、インシデント発生時に迅速かつ的確に対応できる生産体制を構築しなくてはなりません。生産設備の停止による影響が年々大きくなっているため、製造分野全体でリードタイムをいかに短縮化するかが重要課題となっています。

保守点検業務を進化させるIoT

製造分野は人材不足や若手入職者の減少、就業者の高齢化といった深刻な経営課題を抱えているものの、その一方で大きな飛躍が期待されている業種でもあります。その背景にあるのがIoTやAIなどの技術革新による「第4次産業革命」です。とくに製造分野ではこうした技術革新の導入が進んでおり、IoTやAIと生産施設が融合した「スマートファクトリー」を推進する企業が増加傾向にあります。

たとえば、IoTを活用したスマートファクトリーを構築することで、生産設備や製造ライン全体における稼働状況のデータを自動的に収集可能になり、保守点検業務の効率化と省人化が実現します。生産設備の監視や点検などに投入する人材を大幅に削減できるため、人手不足という課題を解決する一助となるでしょう。また、IoTの導入によって設備の異常や機器の故障を検知する精度が飛躍的に向上するため、熟練工に依存しない保守点検体制を整備できるという利点があります。

保守点検業務にIoTを活用した例

ここからは、IoTを活用した次世代型の保守点検業務を推進している企業事例について見ていきましょう。

エアコンのメンテナンスサービスにIoTを活用

北海道札幌市で空調機器のメンテナンス業を展開する日美装建株式会社では、いかにして主要業務である業務用エアコンの点検を効率化・省人化するかが重要課題となっていました。同社はIT化やデジタル活用を積極的に推進し、順調に新規顧客数を伸ばしていたものの、事業拡大に伴って点検業務や巡回、故障への対応といった業務負担の増加が問題となっていたのです。

そこで同社は保守点検業務の効率化を目的として、IoTに強いSIreの協力を得て空調IoT管理システム「AIR NOTE」を開発します。AIR NOTEは、エアコン機器の稼働状況や室内の空気の汚れなどIoTセンサーが検知するソリューションであり、現場で計測したデータをネットワーク経由で収集・分析することで保守点検の業務を大幅に軽減できます。これにより、年間3回の点検頻度を年間1回にまで削減し、さらに故障頻度の大幅な軽減に成功したのです。

ダムの点検を高度化

日立三菱水力株式会社と株式会社日立製作所、そして株式会社日立産機システムは、3社協働のもとで岩手県企業局の四十四田発電所の保守点検業務に対し、IoTや自走ロボットなどのデジタル技術を活用したスマート化を推進しています。水力発電所の多くは交通の不便な場所にあるため、保守点検業務における作業者の負担が大きく、なおかつ熟練工の知見に依存しがちな傾向にあります。

このような課題を解決する一助となるのがIoTやAIなどの技術革新です。岩手県企業局の四十四田発電所は保守点検業務のスマート化に向け、カメラ機能やマイク機能を搭載したIoTセンサーを用いて設備保全の遠隔操作を取り入れました。また、自律走行型の巡視ロボットを導入することで固定センサーの死角を監視し、ダム点検の高度予知保全を実現しつつ、人的負担を減らしながら点検の高度化を成し遂げています。

まとめ

保守点検業務とは、生産設備の安定稼働を担保するための点検やメンテナンスといった業務領域を指します。工作機械や産業機械の稼働状況が付加価値の創出に直結する製造分野では、いかにして保守点検業務を効率化・省人化するかが重要な経営課題といえるでしょう。少子高齢化に伴って人材不足や就業者の高齢化が進む製造分野では、IoTやAIなどのデジタル技術を活用し、熟練工の技術や知識に依存しない生産体制の構築が求められます。

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