「機械学習ってなに?AI(人工知能)のこと?」「なんだか難しくて理解できない…」
機械学習について学んでいると、上記のような声をよく聞きます。ビッグデータやIoT活用が当たり前になった時代で、機械学習が今後重要になることは間違いありません。
そして、専門的な知識を持つ人のみが機械学習について触れるというものでもないのです。業務システム担当者やERP担当者も人ごとではなくなりつつあります。例えばマイクロソフトが提供するDynamics 365でも多くの機械学習などの取り組みを行なっており順次、その機能が実装されています。
今回は、機械学習について分かりやすく解説します。今後、業務担当者にも大きく関係する分野なので、これを機に理解を深めていきましょう。
「機械学習」ってなに?
さっそく今回の主題について解説します。
機械学習とはAI、いわゆる人工知能における研究分野の一つで、「人間が普段、自然に行っている学習能力と同じこと」を、コンピュータで実現しようという手法や技術のことです。これだけでは分かりづらいので、一つ例を挙げてみましょう。
皆さんの視界に犬や猫といった動物が目に入った際に、それが「犬だ」「猫だ」と容易に認識できます。これは、皆さんが無意識のうちに犬や猫の特徴を学習し、記憶しているためです。
ゴールデンレトリバーとパグのように、品種によって個体差に大きな違いがあっても、同じように犬だと理解できるのは、吠え方や歩き方、習性などを記憶しているからです。
一方、デジタル情報しか扱えないコンピュータにとって、人間が無意識のうちに行っている学習能力は非常に難しいことです。コンピュータに犬や猫の特徴を理解させるには、どうしても数字で表す必要があります。
「体長は〇〇cmから〇〇cm、しっぽの長さは〇〇cmから〇〇cm…」などと定義しないといけません。しかし、犬や猫といっても個体差があるので、必ずしもその定義に当てはまるわけではなく、どうしても曖昧な定義しか出来なくなります。
そうした中で、大量のデータから分析・解析を繰り返し行い、ある一定の特徴を見つけ出すための手法・技術が機械学習です。
理論上で言えば、機械学習を行うことでコンピュータは犬を「犬だ」と理解し、猫を「猫だ」と理解できるようになります。
教師あり学習、教師なし学習、強化学習
機械学習の分野では、コンピュータに物事を理解させる過程で、人によるデータ入力が必要です。その学習方法は、小見出しにある3つに分類されます。
教師あり学習
この学習方法は、予め「問題と答え」を同時に提供するというものです。つまり、データとそれに紐づけた特長を同時に教えることで、新しいデータがどこに分類されるかを判別します。
例えばスパム(迷惑)メールの検出はというと、メール文内に頻出する言葉をコンピュータに認識させ、新しいメールが届いた際にその言葉がどれくらい含まれているかを照合します。その結果、照合率が〇〇%以上あれば、スパムメールと判別しブロックするという仕組みです。
スパムメール検出以外にも、天気予測など「過去のデータから未来起こりそうな事象を予測する」分野で主に使用されます。
教師なし学習
教師なし学習とは反対に、データのみをコンピュータに読み込み、その規則性を探すための方法です。正解・不正解という概念が存在しない分野で使用され、コンピュータがその答えを導き出すことを促します。
例えばネットショッピングでよくある「レコメンド機能」は、この教師なし学習を活用したものです。ユーザーの属性情報や購入履歴からどのグループに属するかを決め、そのグループに最適な商品をレコメンドします。ここでいう最適とは、同グループのユーザーが最も購入している商品です。
そうすることで、「この商品を購入したユーザーは、他にもこんな商品を購入しています」という表示と一緒に、レコメンド商品を表示させられます。
この学習方法で難しい部分は、「何を基準とするか」は人の手によって定義されるものであり、精度を上げるためには経験と知識が必要になることです。
強化学習
これは教師あり学習に似た方法で、将棋や囲碁のAIといった、その都度最善の行動を導き出すための機械学習です。
例えば将棋では「詰み」を最大の報酬として定義し、一手ごとに無数にある選択肢を与えます。コンピュータはその中から、報酬に最も近づける行動を過去のデータから探し、実行に移します。
恐らく機械学習の中で最も進んでいる分野の一つで、1967年に誕生したチェス用AIが、1988年に当時の世界チャンピオンに勝利したというのは有名な話です。今年5月には、囲碁の世界チャンピオンにAIが勝利した、というニュースが話題になりました。
機械学習と業務には何の関連があるのか?
冒頭で「機械学習は、業務担当者にも関係ある」と述べました。では、具体的にどういった部分で関連があるのでしょうか?
人材採用のエン・ジャパン株式会社は、人材紹介会社集合サイト「ミドルの転職」上で、サイトを利用している転職コンサルタントを対象に、「AIに代替される仕事、されない仕事」というアンケート調査を実施しました。
その結果、76%の転職コンサルタントが「10~20年以内にAIに代替されてなくなってしまう業務はあると思うか」という問いに対し「ある」と回答しています。そのトップ3に挙げられたのが「一般事務(35%)」「経理(32%)」「コールセンター(30%)」です。
いずれの業務も、「定型業務(ルーチン)がある」という部分で共通しており、定型化された業務は人よりもコンピュータの方が正確に処理できるという理由から、将来的に「AIに代替されるだろう」と予測されています。
ちなみに、「AIに代替されない職種」のトップ3内に「営業」が入っていますが、そうは思えません。なぜなら、すでにマーケティング・オートメーションによって営業もデジタル化・自動化の局面に入っており、将来的には、営業活動のほとんどをAIが実行する可能性があるためです。
まとめ
業務担当者の方に誤解したいただきたくないのは、「AIによって自分の仕事が奪われるのではないか」という不安です。確かに定型化された業務の多くはAIに代替される可能性があります。しかし、インスピレーションや人間にしかできない臨機応変な判断が必要な業務に関しては、無くなることはありません。
従って、AIが活躍する時代は雇用が少なくなるわけではなく、人は、より企画やマネジメントといった業務に注力できるようになる、ということです。そうした時代の到来にいち早く対応するためにも、機械学習やAIについて深く理解し、最新動向を追い、自社事業におけるAI活用の可能性について常に考えていただきたいと思います。