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IoTの活用のメリット

IoT(Internet of Things)、いわゆる“モノのインターネット”はあらゆる機器にセンサーを搭載し、ネットワークでそれを管理することで、まったく新しいサービスを生み出すためのものです。例えば“スマートキー”と呼ばれるIoTは、玄関ドアの鍵にセンサーを組み込むことで、スマートフォンからの信号を受取自動で施錠を行います。また、暗号キーを他人に送信することも可能で、家族や友人を招いた際に玄関で出迎えなくとも、住宅への出入りが可能になります。

これが消費者向けのIoT事例の一つですが、実はBtoBの中小企業にこそ、IoTが重要だという意見が多数あります。

例えば経済産業省の委託事業としてみずほ情報総研株式会社がとりまとめた「中⼩ものづくり企業 IoT等活⽤事例集」では、ものづくりに従事する中小企業のIoT活用が多く掲載されています。

導入資料を確認すると、IoTが日本の中小企業にいかに貢献し、新たなビジネスを創出してくれるかが分かるでしょう。

そこで今回は、中小企業におけるIoT活用のメリットを紹介していきたいと思います。

AI × 人のビジネス革新

中小企業がIoTを活用するメリット

古い設備を生き返らせる

先に紹介した事例集を見てみると、古い設備にセンサーを取り付け、現役設備として稼働させるという事例が目立ちます。

技術コンサルティングやソフトウェア開発を請け負っている株式会社KMCでは、古い加工設備にもセンサーを取り付けることで、センサーから生まれるデータを一元管理し、かつ現場にある全ての加⼯機同⼠を接続するというIoTを開発しています。

集めたデータはクラウド上に収集・管理され、“電子カルテ”を活用することで、製造業における情報を様々な切り口で分析できます。

中小企業では予算編成の問題もあって、古い設備をなくなく使用しているという環境が少なくありません。しかし新たな設備を導入するには調達コストがかかったり導入期間が長くなる傾向にあります。さらには導入後の教育も行わなければならないので、なかなか刷新に踏み込めないという状況が多いでしょう。

こうした古い設備を稼働している企業では、各設備に株式会社KMCが開発したようなセンサーを取り付けることで、新しい設備同様に稼働するケースがあるのです。

古い設備でもデータの一元管理ができれば、それに越したことはありません。企業は導入コストを最小限に抑え、使い慣れた既存設備で効率良い環境を整えることができるのです。

55ページ「古い機械やメーカ違いでも製造情報を取得できる IoTM2M ツールを開発」を参照

新しいビジネスの創出

IoT導入の効果は、古いものを蘇らせるだけでなく、新しいビジネス創出にも貢献します。

自動車の後付け部品製造を専門に行っているApex株式会社では、主要事業を縮小する一方で、次の事業の柱となり得る新しい事業創出の必要性を感じていました。

そこで同社は、3Dデータ制作から試作品製作を一気通貫で行えるITソリューションの開発を、IoTによって実現しています。従来データ変換やCAMソフトは、3次元測定で得たデータを用いて、切削加工までを行うのは難しいとされていました。

その中で同社は、3 次元測定データから 5 軸マシニング切削加⼯機を制御するプログラムを⾃動⽣成するソフトウェアを海外ソフトウェアベンダーから調達することで、新たなビジネスの創出に成功しています。

IoTが生み出すビジネス価値はものづくりに限ったものではありません。サービス事業者においても様々な活用方法を考案することで、新たなビジネス創出が可能となります。

1516ページ後付け部品の 3D データ制作から試作品製作までをトータルに提供する新サービスの開発 を参照

作業効率のアップ

作業効率アップはIoTのお家芸と言っていいほど、高い効果を発揮します。

医療⽤分析機器関連製品の製造、電⼦顕微鏡関連の付属品の製造、半導体故障解析⽤ツールの製造を⾏う株式会社三友製作所は、若手社員手動でIoTを活用した新たな生産管理に成功しています。

現場の作業効率を高める、そして人材不足を解消する手段として同社が選んだのが、複数の⽣産設備を IoT化し、地理的に分散した⽣産拠点の設備の稼働状況を可視化するという企画です。各設備にセンサーを取り付けることによって、稼働状況を一つのモニターで管理することができます。

結果として経営者や管理者がどこにいても稼働状況を確認することができ、各⼯場への業務の振り分け等をスムーズに⾏えるようになりました。

2728ページ社内の若⼿が主導し、複数拠点の⽣産設備のIoT化を実現 を参照

IoTを活用するためのERPソリューション

IoT活用のメリットは事例と共に紹介しましたが、IoT活用は簡単にできる、というわけではありません。やはり、導入には手間もコストもかかります。実際に、関西にあるプレス加工会社は人工知能を含めたサービス基盤の導入を検討したところ、見積だけで1,000万円がかかり、導入するには1億円かかると言われ、導入を断念しています。

また、IoTを導入する以前に、データ統合管理を行うための環境が必要です。その答えの一つがERP(Enterprise Resource Plannnig)です。

ERPは組織内にあるシステム全体を統合管理し、各システムから生成されるデータを一元管理します。例えば生産システムや会計システムなどから生まれるデータはマスタとして管理され、BI(ビジネスインテリジェンス)などを活用して分析を行ったり、経営ダッシュボードに表示させることができます。

さらにERPは、IoTから生成されるデータにも対応できます。先に紹介したものづくり企業の事例ならば、設備に取り付けたセンサーから生成させるデータをERPに取り込み、その他のデータと合わせて一元管理することで、IoTの活用を促進します。

もちろん、ERPがなくともIoTを活用できる基盤は整えられます。「中⼩ものづくり企業 IoT等活⽤事例集」で紹介されている事例は、その多くがERPを導入していません。

しかし、IoT導入の手間やコストを考慮すれば、ERPを導入しておくことで手間とコストを削減し、迅速にIoT活用環境を整えることができるでしょう。

まとめ

世界中のIoTデバイスは、向こう数年間で200億にも300億にも増加すると言われています。消費者向けのIoTデバイスばかりが目立っていますが、実は中小企業によるIoT活用の方が、重要かつ豊富な事例があるのです。

また、IoTはソフトウェア開発会社やものづくり企業だけのものではありません。IT人材を持たないサービス業界などでも、IoT機器の開発委託によって、様々な課題を解決できます。自社にIoTを導入するとビジネスがどう変わるのか一度検討してみるのもいいでしょう。

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