Dynamics 365のアップデートはアドオンに影響することもあり、適用時には検証が必要です。本記事では、Dynamics 365におけるアップデートの必要性やアップデート時の工数削減のポイント、Dynamics 365クラウド会計テンプレート「HI-KORT365」の導入について解説します。
Dynamics 365アップデートの必要性
SaaS型クラウド製品であるDynamics 365のアプリケーションおよびデータは、すべてMicrosoft社のデータセンターで管理されています。Dynamics 365のアップデートは、Microsoft社によって実施されますが、Microsoft社のアップデートポリシー(2020年8月現在)ではスケジュールに関して、(1)最新バージョンの配布は年に8回行われる、(2)最新より3バージョンまではスキップ可能、と定められています。Dynamics 365のアドオンを開発している場合は、サンドボックス環境下において自身で新バージョンを検証する必要があります。検証の結果、何らかの理由でアップデートの適用をスキップせざるを得ない場合は、連続3回までは一時停止を依頼することが可能です(ただし、その次のアップデートは自動適用されます)。
Dynamics 365アップデートの工数を削減する3つのポイント
コストを抑えつつ安定的なシステム運用を実現するためには、検証作業を確実に実施しながら、アップデートを効率的に適用することが重要です。ここでは、Dynamics 365のアップデート工数を削減するための3つのポイントを解説します。
「Fit to Standard」によるアドオン削減とテンプレート活用
業務の目的を達成するためには、システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるという考え方が必要です。「Fit to Standard」とは、業務に足りない機能をアドオンで開発するのではなく、複数の標準機能を組み合わせてシステムを導入する手法であり、近年主流となっています。本当に必要な機能だけをアドオンで開発し、それ以外は標準機能で実現します。その結果、アップデート時の検証作業がスムーズになり、アップデートの工数を削減できます。また、Microsoft社が推奨しているテンプレート機能を活用すれば、さらなるアドオン機能の削減が期待できます。
テストシナリオの整備とテストの記録
高品質なシステムを導入するために重要なことは、品質確認で使用するテストシナリオの精度をいかに高めるかということです。テストシナリオに不備があれば、システムの本稼働後に不具合が発生する恐れもあります。高精度なシナリオの作成およびテストの実施は、システム導入時に取り組むべき重要な項目です。テスト操作はDynamics 365のタスクレコーダー機能で記録できます。記録したデータをMicrosoft社が提供する自動テストツール「Regression Suite Automation Tool(RSAT)」に読み込ませることにより、アップデート時にテストを自動実行させることが可能です。また、記録されたデータは、自動でドキュメントに変換でき、業務マニュアルの作成に役立ちます。
RSATを利用したアップデート検証
Dynamics 365のアップデートでは、導入時に記録しておいたタスクレコーダーのデータとRSATを活用すれば、導入時と同レベルのテストを自動的に行えます。アドオン検証のレベルを低下させることなく、工数を削減して検証を実施できます。Dynamics 365のアップデートにかかる負担は大きく軽減されるでしょう。
RSATとは
RSATはRemote Server Administration Tools(リモートサーバー管理ツール)の略称で、リモートでWindows Serverを管理できるツールです。Microsoft社が無償で提供しており、Windows 10/8.1/8/7/Vistaで動作します。RSATパッケージはMicrosoft社のWebサイト(Microsoftダウンロードセンター)からダウンロードできます。Windows 10 October 2018 Update以降であれば、OSにセットとして含まれており、オンデマンド機能を利用してRSATをインストールすることが可能です。
RSATはWindows Server管理ツールの各種機能に対応しており、Dynamics 365のタスクレコーダー機能にも有効です。RSATを利用したテストの主な流れは、RSATのインストールおよび設定後、テストシナリオの整備、タスクレコーダーでテストの記録、テストケースをロードしてテストの実行となります。2回目以降はテストを自動で実施できます。
日本の商習慣に合わせた会計テンプレート「HI-KORT365」
「HI-KORT365」とは、Microsoft社が提供するクラウド型ERPパッケージ「Dynamics 365 for Finance and Operations」に、日本特有の商慣習に対応したサービス群を組み合わせたソリューションです。260件を超えるERP導入プロジェクトで培ったコベルコシステム独自のノウハウが凝縮されています。クラウド型で提供されるため、オンプレミス型に比べて、変化の激しい市場やビジネスニーズにも柔軟に対応できます。日本特有の商習慣が考慮されているため、グローバル対応ERPパッケージであるDynamics 365 for Finance and Operationsの導入で懸念される点にも、HI-KORT365の基本機能で対応できます。さらに、テンプレートベースで提供されるため、納期の短縮、コストの削減、アドオンの削減を実現します。なおかつ、あらかじめ用意された各種ドキュメントには、作成に膨大な時間がかかるビジネスプロセスフローや操作マニュアル、帳簿一覧/帳簿サンプル、マスタ定義書、パラメーター定義書などが含まれ、プロジェクト全体の作業工数を削減することも可能です。
HI-KORT365はコベルコシステムがアドオン開発した機能群ですが、Dynamics 365のアップデートにともなって必要となる機能検証にRSATを利用すれば、作業効率が向上します。さらに、HI-KORT365自体の機能強化も随時、行われており、Dynamics 365のアップデートとシームレスにつながります。
HI-KORT365会計テンプレート導入のメリット
HI-KORT365会計テンプレートの導入により、通常業務に加えDynamics 365アップデート作業にも大きなメリットがあります。日本特有の商習慣に適した会計機能や各種機能により開発コストを削減でき、テンプレートを活用して、プロジェクト期間の短縮も可能です。また、豊富に用意されたテンプレートで、アドオン機能の削減も実現できます。さらに、導入時の検討・教育用ドキュメント類が用意され、新システム導入時に起こりがちなトラブルにも安心して対応できます。
加えて、迅速に導入できることも大きなメリットです。事前に設定されたパラメーターにより、最短6か月での導入が可能です。導入後には、テンプレート保守サービスにより安定運用できます。RSATを利用することで、通常の60%に上る大幅なアップデート作業工数を削減できます。HI-KORT365の導入は会計業務に加え、Dynamics 365のアップデート作業負担の軽減に大きな効果をもたらします。
まとめ
Dynamics 365を安定運用するには、アップデート工数を削減することが重要です。HI-KORT 365は、Dynamics 365を日本特有の商習慣下でも問題なく利用できるようにする会計テンプレートです。テンプレートの導入により、アドオンを削減できるだけでなく、RSATによりアップデート工数を大幅に減らすことができます。