企業が海外展開する際、皆さんはどのような課題があると思いますか?言語・文化の壁、商習慣の壁など乗り越えるべきさまざまな課題をイメージされるかと思います。本記事でご紹介する海外展開企業の4つの課題とは、経営面における最も重要なものです。その課題とは何なのか?どういった対応策があるのか?ERPで何が解決できるのか?これから海外展開を計画している方も、すでに海外展開を始めて同様の課題に悩まされている方も、本記事でご紹介する内容を参考に、諸課題を乗り越えるためのヒントを得ていただければ幸いです。
海外企業が取り組むべき重要な経営課題
JETROが日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査により、3,563社(うち中小企業2,990社)から得た回答によると、今後海外事業拡大を図るという企業は例年に並びほぼ横ばいになっています。ただし、ベトナムなど一部の国では事業拡大意欲が大幅に上昇しており、日本企業の海外展開はまだまだ活発化しそうな雰囲気があります。
海外展開するいずれの企業も抱える経営課題があり、それを乗り越えられるかどうかが海外展開成功の成否を握るっていると言えます。それでは、その課題を整理していきましょう。
海外拠点を含めたリアルタイムな情報共有
特別なシステムを導入していない場合、海外拠点との情報共有は本社企業が情報提供を申請し、届いた情報を本社管理システムにて加工します。情報要請は簡単に行えますが、現地から情報が届くまでに一定の時間がかかるのが悩ましいことです。
国が違えば文化も違い、時差もあります。海外拠点からの情報提供がスムーズに進まなければさまざまなトラブルが予想されますし、現地担当者とのコミュニケーションに余計な時間が割かれます。また、意見の行き違いによって要求した情報とは別のものが届くこともあるでしょう。
海外拠点を含めた情報共有では、リアルタイムな情報共有を行うどころか情報1つ収集するのも難しいケースが少なくないのです。
情報の収集・処理にかかる時間の削減
現地担当者理解が良かったり、本社企業のコミュニケーションが上手くいっていたりする場合でも情報収集とその処理にかかる時間は膨大です。特にビジネスがまだ軌道に乗っていない海外拠点から情報収集する場合は、それ相応の時間がかかると覚悟しておく必要があります。
また、本社企業と海外拠点とで異なるシステムを運用している場合は、送られていた情報の処理に手間取ることになるでしょう。フォーマットの異なる情報を統一し、そこに含まれるノイズや欠損値を取り除く作業は思った以上に手間と時間とかかります。これは、本社企業の生産性を落とす原因でもあります。
現地の法律・税務・会計・通貨・言語へのシステム的対応
展開先となる海外拠点における法律・税務・会計・通貨・言語は日本のそれとはまったく異なり、現地のものに100%対応しなければいけません。だからこそ現地ソフトウェアベンダーのシステムを検討してしまいがちなのですが、これがリアルタイムな情報共有を阻害する大きな原因になります。
また、決算処理にあたり通貨が異なるため、情報を取得した時点での為替レートを確認しながらの作業になりますので、今までの倍近く決算処理に時間が取られるケースもあります。
海外拠点のビジネス状況の可視化
グローバル企業として成功するには、海外拠点を含めてグループ全体のビジネス状況を可視化する必要があります。しかし、前述した課題からそれが難しく、現地方針に頼りがちです。また、ビジネス状況の可視化はグループ全体のガバナンスを維持する上でもとても重要です。
以上のように、日本企業の海外展開ではほとんどのケースで上記4つの課題が発生します。これらの課題を乗り越えるには、どのような対応策があるのでしょうか?
ERPで乗り越える海外展開の課題
ERPとはEnterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略であり、日本語で表すならば統合された基幹システムのことです。企業にはビジネスに欠かせない基幹業務があり、それらをスムーズかつ確実に遂行するために基幹システムが運用されています。主に会計・生産・販売・仕入・在庫・人事・顧客管理の分野で扱われるシステムのことです。
ERPでは各基幹システムが相互に連携が取れた状態で統合されています。このため、システム同士のデータのやり取りが非常にスムーズであり、企業全体の情報を集約管理することで経営状況のスピーディな把握などが可能です。また、事業部門のオペレーション負担を大幅に軽減できるのもERPの利点です。そんなERPが、海外展開における課題にどのような対応策を用意してくれるのでしょうか?
統一されたシステム基盤による情報共有の促進
本社企業と海外拠点とで情報共有を促進するにはどうすればよいのか?答えは、運用するシステムを合わせることです。システムが同じならば本社従業員と現地担当者のコミュニケーションは減少し、必要な情報を必要な時に収集できます。
その際は情報フォーマットが統一されているので、情報収集後の加工作業にかかる時間もかなり短縮できるでしょう。本社企業と海外拠点とでシステムを合わせることは本当に可能なのか?と思われるかもしれませんが、可能です。
Dynamics 365などグローバル化されたERPは、クラウドベースでの導入による海外現地におけるERP導入の負担を大幅に軽減します。
テンプレートを活用した現地法律などへの対応
ERPが持つテンプレートを活用すれば、現地法律などへの対応は難しくありません。法律・税務・会計・通貨・言語を含め日本と海外のギャップを埋めるためのテンプレートを用意しているERPを選択すれば、異なる海外拠点において同一のシステムを構築することも可能になります。つまり、国が異なる海外拠点全体においても情報共有が促進し、なおかつ決算処理時の手間と労力を大幅に削減できます。
リアルタイム経営可視化によるガバナンス維持
ERPによって情報共有が促進されれば、海外拠点の経営可視化をリアルタイムに行えます。それは本社企業がグループ全体の経営方針を決定するためだけではなく、海外拠点を含めたガバナンスを維持するのに大変有効なことです。近年では海外拠点で発覚したコンプライアンス違反が目立っているので、ステークホルダーに安心感を持ってもらう意味でもERP活用は有効でしょう。
以上にように、海外展開においてERPで乗り越えられる課題は多数あります。もちろん、導入方法や運用計画にもよりますので、導入ベンダーとしっかり相談・計画した上でERPを基点とした海外展開に取り組んでみましょう。