Microsoftが提供するグローバルスタンダードな表計算ソフトのExcelは非常に優れた製品です。表を作成することはもちろん、資料や帳票を作成したり、データを集計してグラフ化したり、マクロ機能によってプログラムの実行を自動化したりと本当にたくさんのことが行えます。
しかしその一方で、Excelで業務を行うことに警鐘を鳴らす意見もあります。Excelだけで業務を遂行することで様々なリスクが発生し、組織の生産性を下げてしまう可能性があるのです。
本稿では、Excelで業務を行うリスクとその解決策についてご紹介します。
Excel業務の何が危険?
Excelを使用するメリットは「直感的に理解しやすい」「基本操作なら誰でもできる」「GUI操作で何でもできる」「マクロとVBAで高度な自動化プログラムを作れる」というのが主なものになるかと思います。メリットだけ見れば大変優れたツールであり、どんな業務に用いても問題無いように思えます。しかし、Excelで業務遂行するにあたって危険が隠れていることも理解しなければいけません。
1. データが散在し、最新版の区別がつかなくなる
Excelはネットワーク上に1つのシステムを設置してそれを複数ユーザーが使用するのではなく、従業員各人のデスクトップにインストールされています。そのためExcelで作成したファイルを保存する際はデスクトップのローカルエリアか、あるいはファイル共有スペースに保存します。従業員ごとに保存場所を自由に選択できることは一見メリットのように思えますが、逆もまた然りです。
データは色々な場所に散在してしまうことで、社内ルールが存在しない限りどのファイルが最新版なのかわ分からなくなってしまいます。そうすると最新版ファイルを探すだけでも手間がかかり、かつ最新版ではないファイル(過去のデータ)を参照してしまう可能性もあるでしょう。
2. 誤って削除、上書きしてしまう恐れがある
作成したExcelファイルを誤って削除してしまったり、上書きしてしまうことはよくある話です。削除してしまったのならばゴミ箱フォルダにファイルが生きている可能性がありますが、誤って上書きしてしまった場合は元の状態に修復することが難しくなります。つまり数時間かけて作成したファイルも、一瞬のうちに失ってしまうリスクがあるのです。特に関係者間で共有するファイルに関しては、誰か1人でもファイルを適切に管理しない人がいれば、自分がいくら注意してもそうしたリスクが現実になってしまいます。
3. データ品質を担保できず整合性が取れない
Excelはシステムと連携せず単独で動くソフトウェアなのでデータの整合性を取ることが難しくなります。そのためデータ品質を担保できず、作成したファイルもその中身のデータが正確なものかどうかを判断できません。
4. マクロは開発者以外修正できない
Excel内でプログラムを自動化するマクロ機能は大変便利です。Excelで行える操作ならばすべて自動化でき、かつVBAというプログラミング言語を使用することでかなり高度な自動化まで行えます。ただしマクロを使用するリスクもあります。それはプログラム開発者以外がその内容を理解することが難しく、引継ぎができなければ修正もできないからです。そのためExcelマクロに依存している業務があり、そのプログラム開発者が異動や退職によって現場を離れてしまうと、業務停止に陥るリスクが増大します。
5. 共有に時間がかかる上に共同作業もできない
Excelで作成したファイルを共有する方法は、一般的にメールに添付して関係者全員に送信するか共有スペースに保存するかのどちらかです。メールは手間だからと共有スペースを活用しても、共有場所をメール等で連絡しなければなりません。ファイル更新の度に共有メールを送信しているとメール整理も複雑になるため、手間がかかる上に適切な共有ができない可能性もあります。
6. 内部統制(ガバナンス)が難しくなる
Excelの運用は情報システム担当者が中央から行うのではなく、部門ごと・従業員ごとに運用するのが一般的です。最低限の管理は情報システム担当者が行ってもきめ細やかな運用は難しいので部門や従業員の裁量に任せられているところが多いでしょう。そこで生じるリスクが内部統制が崩れることです。内部統制の手が行き届かなくなると情報漏えいやその他コンプライアンス違反に関わる状況を引き起こすきっかけになるため、早急に対処すべきリスクです。
7. サイロ化されたアプリケーションによる生産性の低下
Excelで作成したアプリケーションは一般的に部門や業務ごとにファイルが存在します。企業の業務プロセスは部門間の流れ作業であり、例えば営業から経理部門、物流部門など全てが連携して事業を行なっているのです。一見、それぞれのExcelアプリケーションは生産性が高いように見えますが、企業全体の生産性という意味でいうと分断されていることによる無駄が発生していることになります。
Excelは以上のように注意点もあるということなのです。もちろん、表計算ソフトとして大変優れたソフトウェアなので、使いどころをしっかりと考えれば大きな業務効率化をもたらすツールではあります。だからといって何でもかんでもExcelに依存することで発生するリスクは、企業にとって無視できるものではありません。
Excel課題を解決するには?
Excelにリスクがあるからといっても、現状を打破するにはどのようにすれば良いのかわからないケースがほとんどでしょう。すべてのビジネスパーソンにとって使い慣れたツールなので、手放すことを考える企業は稀かもしれません。
しかしリスクがあることは事実なのでそれを解決するために何らかの対策を取らなければいけません。そこでおすすめしたいのが“Dynamics 365”による業務のシステム化です。
Dynamics 365はMicrosoftが提供する統合アプリケーション製品であり、その機能のすべてがインターネット経由で提供されるクラウドサービスです。なぜExcelの課題を解決するのが同じMicrosoft社製品のDynamics 365なのか?それが同ツールとExcelが高い親和性で連携でき、先に紹介した課題を解決してくれるアーキテクチャを持っているからです。
たとえば「Excelに色々な課題があるのは分かるが、今更他のソフトウェアやシステムでは代替できない…」という問題を抱えている企業の場合、データを入力したり帳票を作成するためのインターフェースは今まで通りExcelを使用して、データだけをDynamics 365で管理するという方法が取れます。そうすれば誤ってファイルを削除してしまうことも、データを上書きしてしまうことも無くなります。
そうして管理されたデータは統合アプリケーション環境によって常に整合性が保たれるので、品質が担保されたデータをもとに経営判断を下したり、業務を遂行していくことができます。保存されたデータはDynamics 365アプリまたはExcelを通じて関係者間で共有できるので、そこにかかっていた手間を大幅に短縮できるでしょう。このことはデータの品質を高めるだけでなく業務自体を企業全体で管理できるため経営品質や生産性を大幅に向上させることが可能になるのです。
さらにおすすめしたいのがMicrosoftが提供するクラウドコラボレーションツールの“Office 365”とDynamics 365を連携させることです。2つのツールを連携することでコミュニケーション(メールはもちろん、ファイル共有スペース、Web会議システム、チャットツール、社内SNS等)を効率良く行うだけでなく、統合された業務アプリーション環境で組織全体の生産性を高めることができます。
例えばOutlookメールとDynamics 365を連携させることで営業効率を高めることができるようになります。詳しくは「一歩先行く顧客対応!」をご確認ください。
また、Excelで入力したデータをPower BI(分析ツール)に受け渡し、大量のデータを瞬時にかつ自動的に分析することも可能です。
Microsoft Office 365とMicrosoft Dynamics 365という同社が提供する製品だからこその連携を活用すれば経営品質向上と生産性向上を同時に実現することが可能になるのです。