帳票/文書管理

ERPで帳票のペーパーレスを実践するには?

ERPで帳票のペーパーレスを実践するには?

どのビジネスパーソンも、デスクの上や引き出しの中を見ればさまざまな書類が管理されていることでしょう。もしも、それらの書類を電子データとして管理して、書類をスッキリさせることができたらどれだけ業務効率が向上するでしょうか?

「年間150時間」。この数字は、ビジネスパーソンが年間を通じて「探し物」に費やす時間だそうです。あの書類が無い、ボールペンが見当たらないなどなど、営業日数にして約20営業日もの時間を探し物にあてて消費しています。

ペーパーレスによってこの時間をどれくらい削減できるかは環境にもよりますが、少なくとも、多くの時間削減に繋がるのではないかと思います。ビジネスパーソンの探し物の大半は、書類などの情報なのですから。

そこで本稿では、ERP(Enterprise Resource Planning)で帳票のペーパーレスを実践するための方法についてご紹介します。

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長期的に管理すべき帳票は、意外と多い?

皆さんは、どういった帳票をどれくらい管理しなければいけないのか、という法的要件をご存知でしょうか?特定の帳票は、国が定めた規定によって保存義務があり、その期間が決まっています。

法定保存期間

帳票の種類

10年

株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、重要会議の記録、満期・解約の契約書、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、総勘定元帳、各種補助簿、株式申込簿、株式割当簿、株式台帳、株式名義書換簿、配当簿、印鑑簿

7年

取引に関する帳簿、取引証憑書類(領収書、預金通帳、借用証、小切手、手形控え、振り込み通知書など)、請求書、注文書、契約書、見積書、仕入れ伝票

5年

事業報告、有価証券届出書、産業廃棄物管理票(マニフェスト)写し、従業員の身元保証書、誓約書、安全委員会議事録、衛星委員会議事録、

これらは一例であり、他にもたくさんの法定帳票が存在し、それぞれに保存期間が定められています。こうした書類を長期的に保存するためには、保管スペースが必要ですし、常に適切な状態で管理する必要があります。さらに、部門別売上など法定保存期間が定められていない帳票に関しても管理する必要があるため、企業が管理すべき帳票は常に増え続けると言って過言ではありません。

法定帳票をペーパーレスにするためには?

法定帳票は本来、原本を管理しなければいけないというルールがありますが、特定の条件を満たすことでペーパーレスにすることができます。特定の条件とは、以下の条件のことです。

真実性の確保

訂正・削除履歴の確保

帳簿に係る電子計算機処理に訂正・削除の履歴が確認できること。

相互関連性の確保

帳簿とその他の帳簿間で、相互の関連性を確認できるようにしておくこと。

関係書類の備付け

帳簿に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム関係書類(システム概要書、仕様書、捜査マニュアル等)を備え付けること。

可視性の確保

見読可能性の核の

電磁的記録をディスプレイ及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で出力できること。

検索機能の確保

取引年月、勘定科目、金額、その他の項目を検索条件として設定できること。

以上の条件は、ERPではなく会計システムでも満たすことができます。しかしながら、「訂正・削除履歴の確保」と「関連性の確保」の条件を満たすのが困難なケースもあります。たとえば、単純に仕訳伝票の訂正・削除の履歴を保持するだけならば会計システムでも問題ないでしょうが、その会計仕訳を発生させた取引の訂正・削除の記録保持を要求された場合は、会計システムだけでは対応できません。しかしERPならば、会計仕訳の発生元の取引まで追跡できるため、そうした要求にも対応することができます。

ペーパーレスを推進するメリットとは?

ERPを活用したペーパーレスに限らず、ペーパーレスを推進するメリットとは何でしょうか?

1.業務効率がアップする

前述のように、多くのビジネスパーソンは書類探しに大量の時間を費やしています。そのため、ペーパーレスを推進することにより、程度は異なれど業務効率がアップするでしょう。業務効率がアップすれば、労働生産性も向上し、組織に還元されることになります。

2.印刷代やインク代の削減になる

ペーパーレスによって期待される効果はコスト削減にも及びます。特に印刷代やインク代の削減は非常に大きいでしょう。印刷用紙もインクも日常的に使用する消耗品なので、意外と多くの経費がかかっています。

モノクロコピー1枚あたりにかかる費用はコピー機の機種にもよりますが平均して3円程度と考えると、1kgのモノクロコピーには750円の費用がかかります。さらに、国民1人あたりの紙消費量は208.7kg※なので、単純計算で年間15万6,525円もの費用がモノクロコピーにかかっていることになります。

個人がビジネスで消費する紙の量がこの半分だとしても年間7万8,263円になるので、従業員数100名規模の企業ではモノクロコピーに782万6,300円もの費用を投じていることになるでしょう。

3.セキュリティが強化される

紙の帳票によって情報を管理していると、情報漏えいや消失のリスクが大きくなります。機密情報が含まれる帳票が入ったバッグをどこかに置き忘れたり、置き引きに遭ったり、あるいは自然災害等で紙の帳票が破損したりと、さまざまなリスクがあります。ペーパーレスを推進し、電子データとして管理することで自然とセキュリティも強化されます。

4.コンプライアンスの維持になる

セキュリティが強化されることにより、コンプライアンスの維持にも繋がります。近年、企業の不祥事が相次いでおり、中小企業でもコンプライアンスに注意しなければいけない時代です。

5.情報資産を集約管理できる

ペーパーレスによって紙の帳票に記録されている情報を電子データとして管理できることで、情報資産を集約管理することができます。それによって情報活用が促進されたり、管理効率が大幅にアップします。

ペーパーレスがなかなか進まない理由とは?

ペーパーレスは企業にとって多くのメリットをもたらす取り組みですが、日本企業の多くでペーパーレスが進んでいません。その理由とは何でしょうか?

1.紙帳票の扱いに慣れている

多くのビジネスパーソンは、デジタル化された帳票を使った業務よりも、紙帳票を使った業務に慣れています。そのため、ペーパーレスが逆効果になり、業務効率が下がってしまったという事例もあります。

2.導入コストの高さ

一般的に、ペーパーレスを実現するためには既存の紙帳票をデジタル化したり、専用システムを構築するために多くのコストがかかります。そのため、これがボトルネックになり、取り組みが進まない企業も多いでしょう。

3.IT格差による利活用のバラつき

従業員によってITリテラシーにバラつきがあるため、ペーパーレスによって業務効率を最大化できる人もいれば、そうでない人もいます。こうしたIT格差が生まれることにより、ITリテラシーが高い人の業務効率も相対的に下がってしまいます。

ERPによるペーパーレス化と帳票作成の効率化との両立

ERPがある環境ならば、ペーパーレスによくある課題を解決しつつ、効率良くペーパーレスに取り組んでいくことができます。

その一方でERPに蓄えられた情報を帳票出力する必要性がなくなるわけではありません。その場合には、簡単に自由なレイアウトで帳票を作成できる環境を作れることが必要不可欠です。

つまり、ペーパーレスの促進と既存帳票作成の効率化のバランスが最も重要ということなのです。

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