国内EC市場が年々増加傾向にあるのは皆さん肌で感じていることかと思います。経済産業省の報告によると(電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大~)、2017年のBtoC(対消費者)Eコマース市場は16.5兆円であり、前年の15.1兆円を大きく上回っています。この市場拡大は今後も続き、Eコマース市場は経済界全体において完全に無視できない存在になっています。
そして今、最もEコマース事業を展開すべき分野といえば小売業界です。小売業界では、特別なブランディングがされている店舗を除いては「ショールーミング化」等の問題が深刻化しており経営状況が悪化しているところもあります。また、競合企業がEコマースに力を入れており自社の売上が悪化しつつある企業も多いことでしょう。
本稿では小売業界にてEコマースがもたらす効果についてご紹介します。
そもそもEコマースとは?
Eコマースとは「Electronic Commerce(エレクトリック・コマース)」の略で、いわゆる「電子商取引」のことです。インターネットや専用線を通じた商取引はすべてEコマースに分類されるので、BtoB(対企業)ビジネスでよく使用されるEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)での取引もEコマースの1つです。ただしBtoCビジネスおいてEコマースといえば「オンラインショッピング事業」を指す場合がほとんどです。
ちなみにメルカリ等のフリマサービスや、Yahoo!オークション等のオークションサービスなどインターネット上にて顧客同士(CtoC)で行われる取引もEコマースに分類されます。
Eコマースの種類
本稿では「Eコマース=オンラインショッピング事業」と定義して話を進めます。Eコマースの種類としては次のようなものがあります。
自社運営型
自社独自に単独で運営しているEコマースです。企業要件を最大限に反映できるためブランディング効果が高く、会社のコンセプトを前面に押し出すことができます。一般的にはサイト構築のためにパッケージ製品を購入し、ある程度作り込まれた段階から独自のデザインや機能をカスタマイズしていきます。しかし最近では、サイト構築を簡素化したクラウドサービスも登場しており、事業展開の敷居が低くなっているのが特徴です。ブランディングはしやすいが集客が難しいという難点もあります。
ECモール型
楽天市場やAmazon.comといったECモールに出店するタイプのEコマースです。ECモール型の利点は一定の集客規模が確約されていることです。最近ではインターネット上で何か商品を検索する際に、検索エンジンではなくECモールに直接アクセスするというユーザーが増えています。そのため自社運営型よりも集客は簡単です。しかしながら、ECモールに出店している他店舗との差別化が難しいため、価格競争に陥りやすい傾向があります。
越境EC型
越境ECとは海外市場を対象にしたEコマースのことです。日本市場が成熟しているのを受け、海外市場に新しいビジネスチャンスを見出している企業が多数存在します。Eコマースならばインターネットを通じて簡単に世界中の顧客に商品をアピールできますので、今や基本的な事業戦略の1つです。日本製品の信頼性は世界的に高いため、海外市場にも受け入れられやすいという利点があります。ただし国内市場と違って、サービス的にまったく違った対応を求められたり、現地語での対応など何かとコストがかかります。中国市場においては特殊な商習慣が築かれているので、越境ECでの成功も簡単ではありません。
オムニチャネル型
オムニチャネルとは「企業が持つあらゆるチャネルを統合・連携して、今までにない一貫性の高い購買体験を提供するための戦略」です。複数のチャネルを横並びに運営するマルチチャネルとは違い、すべてのチャネルで得られる情報等を一元的に管理して、チャネルごとの境を意識させないのが特徴です。ただしオムニチャネルの実現には社内体制の整備から意識改革まで、すべて組織的に取り組む必要があります。
Eコマースの効果
では、小売業においてEコマースを展開することでどういった効果を得られるのでしょうか?
販売エリアを全国に拡大できる
小売業でEコマースを展開する理由の1つが「販路拡大」です。特に、都市部から外れたところに店舗を構えている場合、集客は一定数が頭打ちになる問題があります。これは人口や環境などが関わってくる問題のため解決が非常に難しいでしょう。そこでEコマースを展開することで販売エリアを全国に拡大できます。インターネットにアクセスするために知識は関係ないので北は北海道、南は沖縄まであらゆる地域が販売エリアです。
低資本で始められる
Eコマースを展開するにあたってかかる費用はサイト構築費用、決済対応費用、商品情報登録費用、決済手数料、送料(送料無料サービスの場合)、在庫スペース費用、梱包資材費用、そこに関わる人件費等です。店舗運営と比べると費用項目が少なく、かつ最近では低予算で始められるサイト構築もあるので新しい事業を展開することとしては、低資本で始められるのが利点の1つです。
アクセス解析を使用すれば問題を特定しやすい
店舗での顧客分析はまず、ポイントカードやアンケート等を活用して顧客情報を収集する必要があるため実施が難しい傾向にあります。一方Eコマースではアクセス解析というツールを使用すれば、顧客個人の情報を特定することはできませんがECサイトのどこに問題があるのかを正確に把握することができます。分析結果に応じたマーケティング施策を展開すれば、効率良く売上アップを狙うことも可能です。
天候に関係なく一定の売上が持てる
実店舗は売上が天候に左右されますがEコマースは違います。インターネット上に天候は関係ないので、一定の売上が保てるというのが利点の1つです。
年中無休で稼働できる
Eコマースには店舗ほどの人件費はかからないため年中無休で稼働できるというのも利点です。実店舗では年中無休にすると多くの人件費や光熱費がかかりますが、Eコマースなら夜中に購入された商品も翌日に対応すればよいのです。
O2Oマーケティングで相乗効果が狙える
O2Oマーケティングとは「Online to Offline:Offline to Online」のことで、オンラインからオフライン、オフラインからオンラインへと顧客の流れをコントロールするマーケティング手法です。たとえばECサイトで商品を購入した顧客に対して実店舗で使えるクーポンを配布したり、あるいは実店舗に訪れた顧客をECサイトに誘導したりと相互間で顧客の流れをコントロールすることでオンラインとオフラインでの相乗効果を狙うことができます。
まとめ
今回はEコマースとは何か?とその効果を解説しました。小売業界にとってEコマース展開は今や日常的なもので、今後はEコマースにおいて如何に事業拡大を図れるかがビジネス成功のポイントとなっています。
その際には企業のバックオフィスをしっかりとしたものにしておく必要があります。例えばマイクロソフトが提供するDynamics 365は、小売業界にとって必要な基幹システムを提供しています。Eコマースを検討する際は、同時にDynamics 365もご検討ください。