近年、定型業務を自動化するRPAを導入する企業が増加しています。しかし、RPAの具体的な仕組みやワークフローシステムとの違いを把握しきれず、導入に踏み切れないという企業も少なくありません。そこで本記事では、RPAとワークフローシステムの概要に触れつつ、それぞれの違いについて詳しく解説します。
RPAとは
「RPA」とは「Robotic Process Automation」の頭文字をとった略称で、請求書作成や書類の整理といった定型業務を自動化するITソリューションです。情報通信技術の進歩に比例して、企業が取り扱うデータ量は指数関数的に増大しています。
それに伴い、伝票の記帳や請求書の作成、膨大なファイルの整理など、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる事務労働や管理業務の作業量も日々増加しているのが実情です。RPAはこうした書類の作成や整理といった定形業務の自動化を得意とします。
RPAの機能は、Excelの「マクロ」に例えられます。売上データの集計や分析、管理表へのデータ追加といったルーチンワークを自動化するマクロは、Excelを使用する業務効率化に欠かせないツールです。このExcelの作業を自動化するマクロを、社内システム全域に渡って横断的に使用できるようにしたソリューションがRPAと言えるでしょう。マクロが自動化するのはExcelのファイルのみですが、RPAならアプリケーションやブラウザを横断し、社内コンピュータのあらゆる定形業務を自動化できます。
ワークフローシステムとは
ワークフローシステムとは、申請・承認・決裁業務を自動化し、デジタル管理するためのソリューションです。ワークフローとは業務プロセスの一連の流れを指します。例えば、組織の稟議・申請作業には、申請書の作成→申請書を提出→上長の承認→管理部門へ提出というプロセスが必要です。こうした、組織内で複数人が関わる業務をルール化し、決められた流れに沿って処理することをワークフローと呼びます。この一連のプロセスをデジタル管理し、自動化するのがワークフローシステムの役割です。
従来の経費精算を例に挙げるなら、まず経費精算申請書を作成し、上長に提出する必要があります。作成した書類を上長のもとへ運び、上長の承認と押印を得なければなりません。このとき上長が不在であれば、あらためて提出したり、添え状を付けて書類を置いておいたりする必要があるでしょう。
このように、申請から決裁に至るプロセスには多くの無駄が存在しています。ワークフローシステムを導入することで、申請・承認・決裁業務の効率化だけでなく、書類の紛失やペーパーレス化による経費削減に寄与します。
RPAとワークフローの違い
RPAとワークフローシステムはどちらも業務を自動化・効率化するソリューションであり、非常によく似た機能を備えているのが特徴です。それぞれの違いを理解しづらくしている原因は、この類似点の多さにあるといっても過言ではありません。ここからは、RPAとワークフローシステムの違いについて見ていきましょう。
自動化できる業務範囲
RPAとワークフローシステムの明確な違いとして挙げられるのが、自動化できる業務範囲です。RPAはアプリケーションやブラウザを横断し、システム上で登録した定形業務を自動化できるのが大きな特徴です。その特徴から「仮想知的労働者」や「デジタルレイバー」とも呼ばれます。一方でワークフローシステムは、稟議や申請作業をデジタル化・自動化するソリューションです。つまり、RPAは事務労働や管理業務といった定形的な作業の自動化を得意とし、ワークフローシステムは申請・承認・決裁業務の自動化に特化したソリューションと言えます。
ワークフローシステムは「電子稟議システム」と呼ばれることもあり、申請フォーマットの作成や承認フローを基にした申請の実行など、稟議業務の自動化に長けたシステムです。しかし、申請から決裁に至る業務以外の自動化や効率化は専門外と言えます。
一方RPAは、請求書データの入力や問い合わせ内容の転記、従業員のアカウント登録やターゲットリスト作成、さらには伝票入力や在庫状況の確認など、幅広い範囲の業務を自動化することができます。とはいえRPAは、ワークフローシステムのような稟議業務や申請作業の自動化には適していません。このようにRPAとワークフローシステムは、それぞれ一長一短があると言えるでしょう。
自動化を行う目的
RPAとワークフローシステムは、それぞれが業務の自動化に特化したソリューションですが、その目的は大きく異なります。RPAは ルール化されている定型業務や単純作業を自動化し、業務プロセスの管理や分析、そして改善が主な目的です。
先述したように、RPAはExcelのマクロのようなソリューションであり、命令されたプログラムを人間よりも圧倒的な正確さと速さで実行します。また、人間の判断や思索が必要ない単純作業を自動化すれば、空いた人的資源を事業のコア業務に注力できるでしょう。判断を伴わない単純作業を自動化し、人的資源を最適化することがRPAの導入目的と言えます。
一方、ワークフローシステムは申請から決裁に至る業務をデジタル管理して可視化し、紙の書類作成や提出といった非効率的な作業を省くことで効率化するソリューションです。従来の稟議業務や申請作業は、申請→承認→決裁→保管というワークフローの各ステップに、「探す・調べる・運ぶ」という多くの無駄が存在していました。こうした従来の非効率的な業務プロセスを改善することで、内部統制の強化や意思決定の迅速化につながり、組織全体における業務効率の改善と労働生産性の向上が実現します。ワークフローシステムは申請や決裁業務を効率化し、経営体制そのものを強化することが導入目的と言えるでしょう。
システムの機能
RPAとワークフローシステムは本質的な目的が異なるため、搭載される機能も大きく異なります。例えば、RPAは名簿から氏名や電話番号などをコピーし、テキストファイルに貼り付けて転記したり、Excelを開いてデータを収集し、特定のフォーマットにしたがって見積書を作成したりといった作業を自動化することができます。こうした定型業務の自動化機能を備えたワークフローシステムは多くありません。
それぞれの機能を一言で表すなら、「RPAは定型業務を自動化するシステム」であり、「ワークフローシステムは申請・承認・決裁業務を電子化・自動化するソリューション」です。それぞれの特徴を踏まえた上で、自社の事業規模や経営戦略に合ったソリューションの導入が求められます。
まとめ
現在、人口減少と少子高齢化の影響もあり、多くの企業が人材不足という課題を抱えています。RPAは定形業務を自動化し、業務効率の改善と労働生産性の向上に貢献するシステムです。自社の人的資源と業務プロセスを最適化するためにも、RPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。