モノ・サービスが溢れる時代になり、「顧客満足」を事業の生命線としてマーケティングや商品開発に取り組む企業が増えていると思います。高品質なものを出来るだけ低価格に、さらにプラスαの付加価値を付けることで、顧客満足度を高めようとします。
接客を伴う業種に関しては、販売員の接客態度や、商品やサービス購入後のアフターサービスなんかも重要でしょう。
ただし、この「顧客満足」を明確に理解した上で経営を行えている企業は少ないようです。むしろ、「顧客満足度は高いのに、利益に伸び悩む」という企業もいるほど。今回は、この「顧客満足」について詳しくお話していきます。
「顧客満足」は本来、利益には結びつかないもの
顧客満足の意味はそのまま、「商品やサービスに対し顧客が満足できたかどうか」を表すものです。そのため「顧客満足度が高い」と言えば、自社商品やサービスが高い価値を提供している、ということになります。
では、顧客満足はなぜ利益と結びつかないものなのでしょうか?
顧客が満足する商品やサービスというのは、低価格にかかわらず高品質であったり、アフターサービスがしっかりしていたりするものです。しかし、低価格もアフターサービスも、どちらもそれを提供する会社にとっては負担にしかなりません。
本当なら低価格になんかしたくないですし、アフターサービスにも人件費などかなりのコストがかかるので、出来ればしたくない、というのが心情です。従って、「顧客満足」と「会社の利益」は、必ずしもコールでは繋がらないのです。
会社はなぜ顧客満足度向上を目指すのか?
この理由はいたってシンプルで、「顧客満足度向上が、利益拡大に繋がる」と信じているからです。企業がこうした考えを持つのは、先進的な企業の多くが、顧客満足度向上によって劇的な成長を収めたためです。
例えば、世界の高級ホテルとして有名な「リッツカールトン」は、1983年に設立され、20年という短い期間の中でホテル業界の勢力図を一変させました。その要因になったのがまさに「顧客満足中心のビジネス」です。
このように、リッツカールトンをはじめ多数の企業が顧客満足によって成功を収めたことで、「顧客満足向上=利益拡大になる」と信じている会社が多く存在します。
「顧客を満足させるだけ」では、なぜダメなのか?
皆さんが有名シェフが運営するレストランに、ディナーに行ったとしてます。前々から「すごく美味しい」という口コミを聞いていなたので、期待大です。実際にそのレストランの料理は華やかなものばかりで、味も確かに美味しい。ただし、高級レストランということもあってか、客層によって接客態度がバラバラです。
そこで多くの人は、「確かに美味しいし、他じゃ食べられない味だけど、また行こうとは思わないよね」と考えます。このレストランは単に「顧客を満足させただけ」で、味の面で期待に応えただけでした。
一方、質素で街のパスタ屋さんという雰囲気にお店は、味は期待以上に美味しいし、ウェイターんの接客態度も気にならない。そうすると「美味しいし居心地もいいから、また来たいね。両親にもすすめてみよう」と考えます。
これは顧客の期待を越えたことで顧客満足度が非常に高く、顧客がお店の「ファン」になっています。このように顧客満足とは、お店や商品・サービスを利用した顧客が、リピーターになったり、口コミでその良さを広めてくれて初めて「本当の顧客満足」だと言えます。
ちなみに、顧客がファンになる状態を「ロイヤリティが高い」と言い、最近では顧客満足ではなく「顧客ロイヤリティ」という考えのもと、マーケティングや経営戦略へ取り組む企業が増えています。
顧客ロイヤリティを高めるためには何をすればいいか?
ここからは、「顧客満足」という言葉に替わって「顧客ロイヤリティ」という言葉を使用します。ちなみにロイヤリティには「忠誠心」という意味があります。「顧客のブランドに対する忠誠心が高い」という直訳が転じて、「顧客がブランドを愛している」という状態を「顧客ロイヤリティが高い」と言います。
では、この顧客ロイヤリティを高めるためには、何をすればいいのでしょうか?
商品も、サービスも、細部までこだわる
顧客ロイヤリティは、顧客の期待に応えるだけでなく、それを超えたときに生まれるものです。この「顧客の期待を超えること」を考えるとき、機能面・感情面という2つの側面から考えるといいでしょう。
機能面とは商品やサービス自体が持つ特徴です。例えばカメラなら1秒間に何連写できるかとか、自動車ならシートに本革を使用しているなどです。レストランなら味が美味しい、というのが機能面に該当するでしょう。
一方、感情面とは人やデザインに関わる部分を指します。ウェイターや販売員の接客態度、店内の雰囲気、清掃は行き届いているか、ファッションアイテムなら「カッコいい」と思えるかなど、人の感情に訴えかける要素です。
顧客ロイヤリティが高い商品やサービスは、こうした機能面・感情面の双方で細部までこだわっている、という共通の特徴があります。
例えばリッツカールトンは、豪華で清潔感のある客室を提供しているのはもちろん、従業員の接客も最高クラスで様々な逸話があります。日本企業の中で「神対応」として知られる任天堂も、提供する商品はもちろん、顧客対応に細部までこだわっていることで、顧客ロイヤリティを高めています。
クレームは、顧客ロイヤリティに変えるチャンス
高い顧客ロイヤリティを持つ日本企業の中には、クレーム対応で顧客ロイヤリティを高めたという事例も少なくありません。
クレームとはいわば、自社の商品やサービスに対するド直球な意見です。このため、アンケート調査よりも参考になる意見を吸収できるときがあります。さらに、クレーム対応によって自社商品やサービスに不満を持つ顧客のロイヤリティを、一気に高められることもあります。
もちろん、中にはクレーマーといって嫌がらせ・金銭目的でクレームを言う人もいるので、その辺の見極めは重要です。
まとめ
顧客満足並びに顧客ロイヤリティを高めるには、これまでにない、まったく新しい商品・サービスを生み出す必要はありません。今あるものの中で、機能面と感情面で細部まで、こだわれば、顧客ロイヤリティを高めることができます。
「顧客満足度の高い商品・サービスを開発するぞ」というのではなく、現状から顧客ロイヤリティを高める方法を、まずは見直してみてください。