BPMはプロセスをモデル化し、可視化しながら改善していくための方法論です。慣習化された業務やビジネスは、属人的な知識や暗黙知に支えられていることがあります。これらはビジネスの成長を妨げるボトルネックになりえます。したがって、BPMによってボトルネック部分を可視化していくことがビジネスを成長させる足掛かりになるかもしれません。また、BPMを実践するためのツールとしてBPMSもおさえておきたいところです。ここでは、BPM実践のためのヒントを紹介しています。
BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは
まず、BPMの基礎知識を整理しておきましょう。BPMとは、ビジネスプロセスや業務プロセスをPDCAの中で磨いていくための方法論です。
仕事のやり方を造り、改善するBPM
BPMとは、PDCAを回しながら社内業務やビジネス全体のモデル化と改善を進めるための手法です。BPMがうまく機能すると、PDCAサイクルをスムーズにサイクルさせ、業務プロセスやビジネスプロセスの改善が進むとされています。
BPMの構成要素は以下4つです。
ビジネスプロセス(業務プロセス)の可視化と再設計(Planに相当)
まず、ビジネスプロセスや業務プロセスを誰もが理解できる形に変換します。よく使われるのはBPMNと呼ばれる記述法です。BPMNについては後ほど詳しく説明します。
共有と実行(Doに相当)
BPMNで記述したプロセスをシステム(BPMS)に落とし込み、プロセスの状態を共有しながら実行します。ビジネスや業務の流れがリアルタイムに可視化されるため、後述のCheck工程の精度が上がります。
モニタリングと課題発見(Checkに相当)
前の工程で実装したBPMSをモニタリングし、既存のプロセスの中でボトルネックになっている部分を見つけ出します。
分析と改善(Actionに相当)
発見したボトルネック部分の中で原因を探し出すためにデータ分析を行い、改善策を立案して実行します。
なぜBPMが必要なのか
BPMが必要とされる理由は、企業によってさまざまです。しかし、一般的には「コストの最適化」や「顧客満足度の向上」、「売上(利益率)向上」などを目的とすることが多いでしょう。これらを達成するためには、ビジネスや業務の効率性を高め、生産性を上げていくことが求められます。しかし、単に効率だけを追い求めても生産性は向上しません。歴史ある企業ほど目に見えない、もしくは言語化されていないノウハウ(=暗黙知)があるため、これを形式知に変えていく工程が必要なのです。
BPMは、この「暗黙知の形式知化」に対して強みを持っています。ビジネスや業務のプロセスをモデル化して図に起こし、さらにリアルタイムにモニタリングを行うことで誰もが理解しやすい形に整えるからです。BPMを実践することで、ビジネス/業務から属人性を排除しつつ、ノウハウの蓄積やスキルの継承が進むという効果が期待できます。これは、生産性を高めるための重要な要素です。
BPMをシステムに落とし込むBPMS
実際にBPMを進めるうえでキーとなる手法・ツールについても知っておきましょう。BPM自体は方法論であり、これを具体化するための手法としてBPMNがあります。さらにBPMNをシステム化するためのツールとしてBPMSも使用されています。
BPMN(Business Process Model & Notation)とは
BPMNとはBPMを実現するための手法です。基本となる4つの記号(イベント、アクティビティ、ゲートウェイ、シーケンスフロー)を用いながら、ビジネスや業務を一枚の図として表現します。また、プロセスをレベル1・レベル2という2つの段階に分けて記述することもBPMNの特徴です。
BPMNのレベル1では、実務担当者が既存の業務もしくは改善した後のあるべき姿を書き起こします。このとき、システムを構築する担当者に概要が伝わりやすいよう、少ない記号と注釈文で分かりやすさを重視します。
一方レベル2では、レベル1の注釈文をさらに具体化し、システム(BPMS)に落とし込むための設計情報として記述します。レベル1はプロセスを説明するための分かりやすさを重視し、レベル2は設計情報としての専門性を重視するという違いがあります。
BPMS(Business Process Management System)とは
BPMSとは、BPMNで記述されたフローに従ってBPMを実行するためのICTシステムです。前述のレベル1およびレベル2で記述されたプロセスを、実際の業務支援システムとして具体化したものがBPMSと考えると良いでしょう。BPMSにBPMNのフロー図を反映し、組織体制や人員を入力して実行することで、PDCAサイクルを肉眼で確認しながら実行できることがメリットです。
BPMのスムーズな実現を支援するPower Automate
BPMSはBPMの実践で広く使われるシステムです。しかし、実際にBPMSの構築に至るまでには、エンジニアリソースが必要になります。そのため、BPMNの記述までは進んだとしても、エンジニアリソースが無くBPMS実装に到達できない可能性もあるわけです。また、BPMNを作成した人物とBPMSを実装する担当者が異なるために、意図がうまく伝わらずBPMが進まない可能性もあるでしょう。こうした課題を解決するには、できるだけエンジニアリソースを使わず、実務担当者が迅速かつ手軽に構築できるBPMSが必要になるのです。
誰もがビジネスプロセスを自動化できるPower Automate
Microsoftが提供する自動化ツール「Power Automate」は、BPMSとしても使用することができます。BPMNの内容を直感的に実装できるUIを備えており、エンジニア以外の人材であってもビジネスや業務をシステムとして具体化することが可能です。
また、Power Automateでは、AIやビッグデータ分析機能を盛り込んだ新世代のBPMSであるという強みも持っています。「Process Advisor」という機能によりプロセスやタスクをマイニング(深堀り)し、ビジネスや業務の中でボトルネックになっている部分を自動的に抽出し、改善のヒントを提案します。
Process Advisor の活用により、BPMの要諦である「PDCAサイクルを円滑に回す」ことが可能になるでしょう。また、Check工程(モニタリングと課題発見)にかかる時間を減らしつつ、高精度な課題発見につながることもメリットです。
このようにPower Automateは、BPMSの構築だけではなくBPMの実践においても担当者を支援する機能を有しています。
まとめ
ここでは、BPMの基礎知識と実践方法、課題などについて解説しました。BPMは経営の攻守両面で活用できる手法です。しかし、BPMNをBPMSに実装する際の労力や、その後のPDCAで躓く例が多いという特徴があります。この点を解決するのが自動化・分析機能をもったBPMSです。より小さなリソースで確実にBPMを進めたいのであれば、Power Automateのような新世代のBPMSツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。