システムが増えるほど構成は複雑化し、運用や保守に時間を割かれがちです。この問題を解決するためには、アプリケーション基盤の標準化が欠かせません。また、運用や保守の効率化だけでなく、開発や管理なども容易になります。そこで本記事では、アプリケーション基盤の概要や、標準化のメリットについて解説していきます。
アプリケーション基盤とは
「アプリケーション基盤」とは、アプリケーションを稼働させるために必要な要素のことです。「フレームワーク」と置き換えることも可能で、業務アプリケーションの土台部分を指します。
しばしばアプリケーションを稼働するためのシステムインフラと誤解されがちですが、そうではありません。そもそもシステムにおいては、ハードウェアやOSなどのインフラ基盤があり、そのうえでミドルウェアや業務アプリケーションが稼働しています。
従来のシステムであれば、インフラからミドルウェアまでがセット化されており、業務アプリケーションのみの開発で済んでいました。しかし、現在のオープンシステムでは、さまざまなOSやハードウェア、ミドルウェアの組み合わせが可能となったため、選択肢が大きく広がった反面、複雑化しています。
そのため、従来のように業務アプリケーションさえあればいいというわけでなく、土台部分となるミドルウェアとフレームワークを整備することが重要になります。この部分が、アプリケーション基盤と呼ばれているものです。また、フレームワークを使いこなすための実装ガイドラインやサンプルプログラムなども、アプリケーション基盤に含まれます。
<アプリケーション基盤>
- ミドルウェア:サーバーやデータベースとのやり取りを担う
- フレームワーク:画面アプリケーションなど、各業務アプリケーションに共通する部品のようなもの
- 実装ガイドライン:フレームワークを使いこなすための決まり事
- サンプルプログラム:フレームワーク上で実際に稼働するプログラムのサンプル
では、このアプリケーション基盤が標準化されていないと、一体どのような問題があるのでしょうか。次項で詳しく見ていきましょう。
企業が抱えるアプリケーション基盤運用・保守の課題
アプリケーション基盤が標準化されていない中でのシステム運用には、さまざまな問題が発生するリスクがあります。
たとえば、プログラムが頻繁に不具合を起こしたり、データの不整合が起こったりするなどが考えられます。これらの不具合は、多くはアプリケーション基盤が標準化されていないことにより、アプリケーションの品質や保守性に問題が生じているために発生します。
また、このような不具合が起こった場合、トラブルの原因を特定するのに時間がかかり、その間の業務がストップしてしまうため、業務効率の低下を招くおそれがあります。そうなれば当然、保守にかかるコストも甚大となります。
さらに、新しいプログラムが必要になった場合、一から開発する手間が生じるため、多くの時間やコストがかかるという問題もあります。これらの問題を解決するには、やはりアプリケーション基盤の標準化が効果的でしょう。
アプリケーション基盤標準化の方法
アプリケーション基盤を標準化する目的は、ひとえにアプリケーションの品質や保守性を向上させることにあります。以下では、それらを可能にする技術について解説します。
MVCアーキテクチャの採用
「MVCアーキテクチャ」とは、アプリケーションを「Model(モデル)」「View(ビュー)」「Controller(コントローラー)」の3つに分けて処理する方法です。それぞれの詳細は以下の通りです。
- Model:登録や検索、データなど業務処理の根幹をなす部分
- View:画面やレイアウトなどのユーザーインターフェース
- Controller:業務処理(Model)と画面描画(View)をつなぐ役割
これら3つに分けて処理することで、次のようなメリットが得られます。
<MVCアーキテクチャのメリット>
- 機能の拡張や変更に対し、柔軟に対応できるようになる
- 各処理に適した人材に、業務を分担できる
- 障害が発生したときの問題箇所を特定しやすくなり、解決に要する時間とコストを削減できる
- 処理を共通化できるため、品質の保持やコスト削減につながる
- 複雑な処理やバグを起こしやすい処理を重点的にケアできる
つまるところ、機能を分散したほうが作業効率は向上し、トラブル発生時なども柔軟に対応しやすくなるというわけです。
DIの採用
「DI」とは「Dependency Injection」の略で、直訳すると「依存性の注入」を意味します。このままだとわかりにくいですが、Dependency(依存性)をオブジェクト成立の条件、Injection(注入)を外部からの設定と捉えると理解しやすいでしょう。
たとえば、機能Aと機能Bがつながっていた場合、機能Bを機能Cに変更しようとすると、機能Aまで仕様を変更しなければならず、アプリケーションの再配備が必要です。しかしDIを利用すれば、外部ファイルに切り替えを入力するだけで修正が完了します。
つまりDIとは、各機能の関係をソースコードで直接結ぶのではなく、機能を部品化して、つなぎ目を外部ファイルに設定することを指します。そうすることで、以下のようなメリットが得られます。
<DIのメリット>
- 各機能を小さく部品化することで、プログラムの変更箇所やトラブル発生時の原因箇所を特定しやすくなる
- テスト用の部品を自由に組み替えられるため、プログラムモジュールのテストが容易になる
- 部品単位で機能を強化でき、差し替えも容易になる
- 共通部分の再利用性が高まり、品質の保持につながる
このようにDIは、プログラムの変更時やトラブル発生時などに柔軟な対応を可能とし、アプリケーションの保守や品質向上に寄与します。
テスト自動化ツールの活用
「テスト自動化ツール」とは、システムやプログラムが正常に動いているかどうか、自動的にテストできるツールです。顧客やユーザーにプログラムを提供する前には、十分にテストする必要があります。しかし、手動ですべてのテストを行うとなると手間がかかるうえ、ミスも発生しやすいです。その点、テスト自動化ツールを使用することで、以下のようなメリットがあります。
<テスト自動化ツールのメリット>
- テストが容易に行えるため、時間がかからず効率もよい
- 人的ミスが発生しにくい
- 多くのテストが可能になるため、不具合を見つけやすい
- 手動のテストと比べてコストがかからない
- プログラム変更時などにも少ない工数でテストが可能
なお、テスト自動化ツールにはさまざまな種類があるため、プログラムに適したものを活用することが大切です。
アプリケーション基盤標準化のメリット
上記の技術を用いてアプリケーション基盤を標準化することで、システムの開発や運用、保守が容易となるうえ、不具合が起こった場合の対処もしやすくなります。具体的なメリットとしては、以下のものが挙げられます。
- 標準化されたアプリケーション基盤があれば、効率的にシステムの開発や運用ができ、コスト削減も見込める
- アプリケーションの仕様変更が容易となり、品質も高くなる
- トラブル発生時の問題箇所を特定しやすいため、解決にかかる時間やコストを削減できる
- 細やかな保守点検が可能になるため、品質の維持やトラブルの予防が可能になる
プログラムの不具合に割かれる時間やコストは、非常に大きなストレスとなります。アプリケーション基盤を標準化することにより、効率的でストレスフリーな開発や保守運用ができます。その結果、品質や作業効率が上がるだけでなく、余計なコストの発生も減るため、生産性の向上にもつながるでしょう。
まとめ
アプリケーション基盤を標準化すると、システムの開発や運用が効率化されるだけでなく、トラブル発生時にも対応が容易となります。余計な時間やコストがかからなくなり、作業効率も上がるため、企業全体の生産性を高めることにつながります。システム運用にストレスを感じている方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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