近年、あらゆる企業において取り組みが加速している“デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)”、皆さんはその意味と取り組むメリットをご存知でしょうか?
デジタルトランスフォーメーションの概念が提唱され始めたのは2004年。スウェーデンのウメオ大学、Eric Stolterman教授が「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と述べています。ただし、この定義は抽象的なもので、世界全般の動きを示していますが、具体的に何をすべきかは分かりません。
本稿では、デジタルトランスフォーメーションの具体的な概要と、取り組む理由やメリットについてご紹介します。
デジタルトランスフォーメーションとは?
経済産業省がデジタルトランスフォーメーションを推進する目的として策定した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』では、具体的な概要について次のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”
デジタルトランスフォーメーションでは「第3のプラットフォーム」と呼ばれる、①クラウド、②モバイル、③ビッグデータアナリティクス、④ソーシャルという4つのデジタル基盤に対応することが重要だと考えられています。それぞれの基盤は、ITの発展に伴い急激な進化と市場拡大が起こったものであり、昨今変化の激しいビジネス時代において、対応が必須とも言われています。
①クラウド
クラウド(クラウドコンピューティング)とは、インターネット経由で提供されるソフトウェア・開発プラットフォーム・インフラストラクチャの総称です。
②モバイル
モバイル(スマートフォン・タブレット)の普及率はかつてないほど拡大し、年代を問わず誰もが利用しています。それに伴い、サービス提供時にモバイルを意識した設計が欠かせなくなっています。
③ビッグデータアナリティクス
長年の経営活動で蓄積したビッグデータを解析することにより、今まで見えなかった情報を発見し、ビジネスに取り入れることは競合優位性を手にするための手段となり、商品やサービスに変革を起こします。
④ソーシャル
日本では人口の約半数がSNSを利用しており、今や価値ある情報のほとんどはSNS上に流れているといいます。ソーシャルを視野に入れたビジネスを展開する重要性は広く理解されています。
これら第3のプラットフォームに加えて、近年ではAI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)といった新技術への対応も求められています。
そしてデジタルトランスフォーメーションで大切なのが、単にこれらのデジタル技術を活用するのではなく、商品やサービス、あるいはビジネスモデルを変革することに加えて、組織・プロセス・企業文化・風土まで変革することを意味しています。
デジタルトランスフォーメーションへ取り組むメリット
デジタルトランスフォーメーションは単なるバズワードではなく、政府が主体となって取り組みを推進する変革です。日本企業の多くにデジタル的な変革が求められており、そこにはさまざまなメリットがあります。
Merit1.レガシーシステムからの脱却
総務省が2018年9月に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』によると、2025年には21年以上レガシーシステムを運用している企業が全体の6割に達するとされています。そこには、システムがより複雑化しIT予算のうち9割がシステム維持費に費やされることや、古い技術を扱える人材が少なくなることでシステムがブラックボックス化するなどの問題が待ち受けています。
デジタルトランスフォーメーションを実現することは、こうしたレガシーシステムから脱却し、時代に即したシステム環境を構築するための基盤を整えることになります。
Merit2.収益逓増による利益率の拡大
収益逓増(しゅうえきていぞう)とは、スタンフォード大学はブライアン・アーサー教授が提唱した法則です。たとえば生産規模が2倍になった企業では、生産効率性が向上し、生産量は2倍以上に増加します。生産規模を拡大するとそれ以上の生産効率性が手に入れられるため、利益率の拡大が図れるというわけです。
収益逓増を実現するポイントは「デジタル化しているか否か」です。従って、デジタルトランスフォーメーションへ取り組むことで収益逓増を実現し、大きな利益を手にすることができます。
Merit3.変化するビジネスへの対応
市場ではさまざまなディスラプション(破壊的変化)が起きており、新しいプレイヤーが台頭していきます。宿泊業界にAirbnbが参入し市場を大きく変化させたように、これからはデジタル技術や革新的なマーケティング技術を搭載したベンチャー企業によって、あらゆる市場でディスラプションが起こると想定されています。
そうしたビジネス上の変化へ対応するためには、同じくデジタルトランスフォーメーションによってデジタル的な武装をして、来る変化へ柔軟に対応するためのシステム環境が必要です。
Merit4.新しい商品やサービス、ビジネスモデルの開発
デジタルトランスフォーメーションは単にデジタル的な対応をするのではなく、それによって新しい商品やサービス、あるいはビジネスモデルを開発することが目的です。クラウド、モバイル、ビッグデータアナリティクス、ソーシャル、それとAIやIoTを活用して従来にはなかった商品やサービス、ビジネスモデルはすでに誕生しています。
一部の企業では自社商品のあらゆる部分にセンサーを取り付け、それをクラウド基盤で収集し、ビッグデータアナリティクスとAIで分析して、そこから導き出された結果から定期メンテナンスレスのサービス等を提供しています。
デジタルトランスフォーメーションに取り組もう!
デジタルトランスフォーメーションに取り組むためには、さまざまなデジタル技術を導入する必要があります。そこには当然コストや労力がかかりますが、それ以上のメリットがデジタルトランスフォーメーションにはあります。新しいビジネス環境へ対応したり、革新的な商品やサービスを生み出すためにも、この機会にデジタルトランスフォーメーションへ取り組むための方法を模索してみましょう!