ChatGPTやCopilot、Claudeといった生成AIが多く登場し、日常生活でも活用する場面が増えてきました。
多くの企業で生成AIの導入を推進する動きはあるものの、「どう使ってよいか分からない」というのが現状です。
本記事では、生成AIの基本的な知識やビジネスでの使い方について、事例を交えて詳しく解説していきます。
生成AIとは?
生成AIとは、人工知能(AI)の一種で、文章などで指示した内容からテキストや画像、動画といったデータを生成するAIです。
生成AIの基礎知識
生成AIが登場する前のAIの活用事例といえば、「過去のデータをもとに将来を予測する」「画像に映っているものを分析し、特定の条件に合致したものを検出する」といったように、特定分野かつ目的で利用するものがほとんどでした。
生成AIはこれまでのAIと同様、大量のデータをもとに新しいデータを出力するものですが、「テキストや画像など、人がつくったものと錯覚するようなデータを生成」します。
生成AIは、2022年にOpenAI社がリリースした「ChatGPT」を皮切りに人気が爆発し、各社が生成AIのサービスを提供したり、自社のサービスに生成AIを用いたアシスタント機能を追加したりしています。2024年現在、生成AIは生活に溶け込んでいるといっても過言ではありません。
生成AIの詳しい説明については、下記の記事を参照ください。
生成AIとは?ChatGPTの他や活用例を分かりやすく解説
生成AIの4つの種類
生成AIにはどのような種類があるのでしょうか。本章では生成AIの種類と、生成するデータの種類を紹介します。
テキスト生成
テキスト生成AIは、自然言語処理技術(文章を解析して単語に分離したり、人間が理解できるような形式に文章を形成したりする技術)を利用して、文章を生成します。
例えば、小説やニュース記事の作成、要約、チャットボットの会話生成などに用いられます。
画像生成
画像生成AIは、学習した多くの画像をもとに、新しい画像を生成します。学習に利用した画像に近い作風の画像生成や、写真に近いリアルな画像生成なども可能です。
また、大量の画像を生成できるのも画像生成AIの強みであり、似たような構図やシチュエーションの画像を大量に生成することで、よりニーズに合った画像を探しやすくなります。
動画生成
動画生成AIは、画像生成AIの技術をさらに進化させたもので、動画の各コマを生成して連結し、動画として成立させます。パラパラマンガを1枚ずつ生成して動画を作成すると考えるとよいでしょう。
1枚の画像から動画を生成することも可能で、アニメーション制作などに活用できます。
音声生成
音声生成AIは、テキストから音声を生成したり、既知の音声から新しい音声を生成したりすることが可能です。
音声の模倣が得意分野で、録音した音声データからその人の声に似た音声を生成できます。
生成AIのビジネス活用事例
生成AIはさまざまな分野での活用が期待されていますが、すでにいくつかの分野においては企業への導入が進んでいます。
ここでは、実際にビジネスで活用している事例を紹介します。
生成AIによるチャットボット
生成AIを活用したチャットボットは、顧客とのコミュニケーションを自動化し、24時間対応を可能にします。
従来のチャットボットは、特定の質問に対して定型文を返すのみでしたが、生成AIを使用することで、ユーザーの質問や要求に対してより自然で柔軟な対応ができるようになりました。生成AIは、より人間らしい会話を生成するため、利用者はチャットボットとの対話がスムーズに進みます。
また、利用者の曖昧な表現にも対応できるため、利用者が欲しい情報へたどり着ける可能性が高まります。とはいえ、生成AIだけでは回答しきれない場合もあります。その場合には人間のオペレータにつなぐことで、利用者の利便性を損なわずにサービスを提供できるのです。
生成AIによる会議の議事録作成
生成AIを活用することで、会議をより効率的に進められます。
生成AIは、会議の議事録作成においても大いに役立ちます。会議中の音声をリアルタイムで文字起こしし、その内容を自動的に要約して議事録を作成することが可能です。
会議中の音声をリアルタイムに文字起こしをすることで、議事を取る必要がなくなるため議題のディスカッションに集中できます。常に発言内容を記録できるので、聞き間違いや記載漏れのリスクを減らせる可能性が高まります。
また、文章を要約するのもAIの得意分野です。会議終了後に文字起こしの内容を読み込み、要約した上で議事録を生成することも容易に実現できます。
生成AIによるマーケティング活用
生成AIはマーケティング分野でも幅広く利用されています。これまでもAIを利用したターゲティングが広く利用されていましたが、生成AIを活用することでよりマーケティングの自動化が可能となりました。
広告コピーの自動生成、キャンペーンアイデアの創出、ターゲティング広告のパーソナライズなど、さまざまなマーケティング活動を支援します。
従来のAIで必要な商品をレコメンドし、ユーザーに伝えるメッセージを生成AIで作成することで、ユーザーの個人ごとにパーソナライズしたマーケティング活動が実現できます。短時間で大量のユーザーにリーチできる活動は、マーケティングにおいて非常に有用といえるでしょう。
生成AIによる企画立案
生成AIは、新しい商品やサービスの企画立案にも大きな影響を与えています。
市場調査データや顧客のフィードバックを分析し、新しいアイデアを生成するプロセスを支援します。特に、生成AIは大量のデータをもとに文章などを生成するので、一般的な思考やプロセスを考える上では非常に優秀です。
生成AIを活用して顧客の購買データやトレンド情報を分析し、新しいコレクションのデザインやマーケティング戦略を立案できます。このように、生成AIは企画の質を向上させるだけでなく、企画立案のスピードも高めています。
ただし、生成AIは新規ビジネスを考案することが難しいというデメリットがあります。
あくまでも、アイデア出しや情報収集のサポートに活用できる、と考えましょう。
生成AIをビジネスに活用するメリット
ここからは、生成AIをビジネスに活用する際のメリットについて解説します。
業務効率化
生成AIを活用することで、日常業務の多くを自動化し、作業時間を大幅に短縮できます。例えば、データ入力や分析、レポート作成など、繰り返し行われる作業を自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中できます。
同様に、業務効率化を目的としたツールとして、RPAやノーコード・ローコードツールが挙げられます。これらのツールは非エンジニアでも利用できるとはいえ、ある程度の技術的な知識が求められていました。
生成AIは、日本語の文章でやって欲しいことを伝えるだけで処理をしてくれます。そのため、技術的な知識や専門知識がなくても、「伝えること」さえできれば活用できます。
導入のハードルが非常に低いというのは、生成AIの大きなメリットといえるでしょう。
制作物の品質向上
生成AIは、大量のデータからパターンやトレンドを学習し、高品質な制作物を生成することが可能です。つまり、デザインや文章のクオリティが向上し、顧客満足度を高めることができる、ということです。
特に一般向けの制作物を作成する場合、万人が読みやすい文章に変換したり、分かりやすい内容に推敲したりとさまざまな利用方法で活用できます。
一方で、高度な専門知識については発展途上であるため、利用できる場所は限られます。特に、インターネット上に情報が少ない特定分野については学習量が足りず、誤った情報を出力する可能性があります。このように、生成AIが誤った情報を出力することを「ハルシネーション」と呼びます。
生成AIを利用する際には、ハルシネーションを起こさないようにうまく活用することで、品質の高い制作物が作成できる、と考えましょう。
アイデア出しのサポート
生成AIは、大量のデータをもとに回答することから「知識が豊富な人がいる」と同義であると考えることが可能です。
その豊富な知識を活用することで、新しいアイデアを生み出す際の強力なサポートツールとなります。過去のデータやトレンドをもとに、新しい視点や発想を提供し、クリエイティブな作業を支援します。
例えば、過去のフィードバックや市場トレンドを分析し、新しいユーザーストーリーの設定を提案してもらい、コンテンツの創造のヒントを得ることが可能です。
前述のとおり、生成AIはハルシネーションを発生させる場合がありますが、人間の持つ先入観や思い込みを排除した提案をしてくれる可能性が高いため、アイデア出しにおいては、その場にいるメンバーが思いつかないような内容を提案してくれることもあるでしょう。
ただし「イノベーションと呼べるような画期的なアイデア」の生成については苦手であるため、あくまでもサポートする存在、と考えるとよいでしょう。
生成AIをビジネスに活用するデメリットとリスク
生成AIの活用により多くのメリットが享受できる一方で、デメリットや注意すべきリスクも存在します。
ここでは、生成AIを活用する際に注意すべき事項を解説します。
著作権侵害の可能性がある
生成AIは、学習した大量の文章や画像から新しいコンテンツを生成します。そのため、生成AIが出力する内容は、少なからず何かしらに類似する可能性が高いといえます。
類似性が高いと判断された場合、著作権侵害にあたる可能性があるため、外部公開する際にはコピペチェックなどを徹底しましょう。
正しい情報であることをチェックする
前述のとおり、生成AIは必ず正しい情報を出力するとは限らず、誤った情報を出力する「ハルシネーション」を起こす可能性があります。
そのため、生成AIの出力内容を鵜呑みにせず、正当性をしっかりと確認することが重要です。特に、外部に公開する場合や重要な意思決定に利用する際には、その情報が正しいのかを人の目で確認し、正しく判断できるプロセスを確立した上で活用するようにしましょう。
得意な分野を正しく理解する
生成AIには生成できるコンテンツの種類があるように、特定の分野に強いAIと弱いAIが存在します。この考え方は、生成AIに限らずAI全般にいえることです。
AIは学習に利用したデータの特性や方向性によって知識量に偏りがでます。例えば、医療分野に特化したAIは、医療に関するデータのみを大量に学習しているため、そのAIを医療以外に適用しようとしてもうまく行きません。特に専門分野で生成AIを活用しようと考えた際には、その分野に特化したAIを選択し、利用するようにしましょう。
生成AIのビジネス活用|成功事例
ここからは、生成AIのビジネス活用における事例を紹介します。
フリマアプリの出品サポート
フリマアプリを展開するM社では、生成AIを活用した出品者サポート機能を提供しています。
例えば、傘を出品する際、生成AIがブランドや商品名をもとに検索で見つけやすく、かつ購入者の目に留まりやすいタイトルと本文を生成してくれます。これにより、購入してもらえる可能性が高まると期待されています。
また、すでに出品している商品がなかなか売れない場合もサポートしてくれます。売れやすい商品名に変更したり、より適切な説明文を提案したりすることで、商品が売れやすくなるよう改善してくれます。
分散した社内の情報を分析し、自社に特化したLLMを構築
自社で開発した大規模言語モデル(LLM)を用いたサービスを展開するS社では、自然言語処理と生成AIを組み合わせることで、より高精度な情報収集・分析ができるサービスを提供しています。
ビジネスニュース、論文、特許といった公開文書はもちろんのこと、社内の機密文書もAIに学習させることで、必要な情報を必要なときに取得できるようになります。
社内文章をAIに学習させることで、分野特化の情報が増えることからハルシネーションの起きにくい、カスタマイズされた便利な生成AIの利用が可能です。
生成AIを利用した音声基盤モデルを構築
K社は、音声基盤モデル技術の研究開発を実施しています。生成AIを活用した「音声基盤モデル」の構築により、日本語に対応した音声生成AIの生成を開発しています。
日本語は表現方法が非常に多く、AIにとっても難しい言語とされています。そのため、日本語の対応が進んでいないというのが現状でした。
同社では、日英両言語に対応できる音声基盤モデルの大規模開発を進めており、独自のアプローチで生成AI技術を開発することで、日本から世界へのAI活用の広がりを目指しています。
AIの軍事利用
生成AIは、一般企業だけでなく軍事分野でも利用されています。
米国のスタートアップ企業では、米国防衛省などでの軍事提供が進んでいます。軍事情報やSNSの分析による敵の位置情報把握、攻撃方法などの立案、センサーやドローンの画像をAI分析し異常検知や迎撃を可能とする、といったAIが構築され、実際に運用されています。
日本において期待されているのは、国防や災害対応といった自衛隊での活用です。災害の被害をリアルタイムに整理したり、避難所への支援物資のニーズを分析したりすることで、人命救助に役立てようとしています。
その他、画像AIを併用することで、要救助者の位置特定や、フェイク画像の検知による情報精度向上など、的確な救助活動への利用も期待されています。
日本語と英語に対応した国産言語モデル
言語モデルの研究・開発・販売を行う、P社では、日本語と英語に対応した国産LLMである「PLaMo-13B」を、研究・商用目的で利用できるOSS(オープンソース)として公開しています。
国産のAIということもあり、日本語にネイティブで対応していることから、より自然な日本語を出力するだけでなく、高い実行効率を持っています。同社のモデルは、効率だけでなく精度も高く、日本語・英語を対象としたLLMのベンチマーク評価としても、世界トップレベルの高い性能を示しています。
PLaMoを利用することで、より容易に日本語対応の高性能な生成AIが利用できるようになりました。
まとめ
生成AIをビジネスに利用するメリットや注意点について解説してきました。
ある程度のデメリットやリスクは存在するものの、うまく活用することで自社ビジネスの加速が可能であり、大規模なAIシステムと比較しても容易に導入できるサービスが多数存在します。
本記事の注意点を念頭に置いた上で、うまく活用してみてはいかがでしょうか。