SAPの2025年(2027年)問題が近付く中、基幹システムを「SAP S/4 HANA」へ移行したいと考えている企業も多いでしょう。しかし、移行中の生産性低下に不安を感じる企業も少なくありません。本記事では、SAP S/4 HANAの導入をサポートする「SAP S/4HANA構想策定支援サービス」について紹介します。
SAP S/4 HANAとは
「SAP S/4 HANA」とは、ドイツ西部に本社を構えるソフトウェア会社「SAP」が提供しているERP製品です。「ERP」とは「Enterprise Resources Planning」の略で、企業の情報戦略を支える基幹情報システムを指します。SAPの提供するERP製品は現在、多くの企業で取り入れられています。とくに「SAP ERP」と呼ばれるERP製品は、世界でもトップクラスのシェアを誇り、日本だけでも2,000社以上が導入しています。
しかし、このSAP ERPは2027年に保守サポートの終了が決定しました。そのため、多くの企業が新しいERP製品の導入を迫られ、大きな問題となっています。もともとは2025年に保守サポートが終了する予定だったため、この問題は「2025年(2027年)問題」と呼ばれています。
SAP ERPに続く次世代ERP製品として生まれたのが「SAP S/4 HANA」です。SAP S/4 HANAとこれまでのERP製品との大きな違いは、データをハードディスクではなく、半導体メモリに保有することです。ハードディスクでの読み書きは、メモリに比べて処理が遅くなってしまいます。そこでSAP S/4 HANAでは、プラットフォームに半導体メモリを使用し、データ処理の速度を高速化しています。
SAP S/4 HANA は2015年の販売開始以降、1年でおよそ3,200社、2019年7月時点でおよそ1万1,500社に導入されています。MicrosoftやGoogleなど名だたる世界的企業でも採用されており、今後も多くの企業で活躍が期待されます。
ERP導入プロジェクトによくある課題
SAP S/4 HANAは、企業の経営全体を支えるシステムです。これを導入することにより、業務の効率化や意思決定のスピードアップ、内部統制の強化などさまざまなメリットが得られます。しかし、いざ導入しようとすると、以下のような課題に直面することも少なくありません。
目的がずれてしまう
業務の効率化や意思決定のスピードアップなど、企業にとって重要な目的のためにERP導入を決定したにも関わらず、いつの間にかシステムの導入自体が目的になっていることがあります。この場合、たとえシステムを導入しても、実現したかったことが達成できない恐れもあるのです。
経営層に伝わらず、運用予算の確保に苦戦する
企業の成長のために、ERPを新しいものに移行したいと考えても、導入には決して少なくないコストがかかります。ERPのメリットが経営層にうまく伝わらなければ、予算を確保できず、なかなか導入が進まないことも考えられるでしょう。
現場社員の業務負担が増加する
新しいシステムを導入することで、システムの管理担当者に負担がかかったり、導入後に運用を行う現場社員の負担が増したりする恐れがあります。システム導入により予想される変化をあらかじめ周知しておき、使用目的や使用方法を共有しながら導入することが大切です。
S/4HANA移行の最適解を導く「SAP S/4HANA構想策定支援サービス」
上記のように、新しい基幹システムの導入には、さまざまな課題が生じ得ます。しかし、先述したとおりSAP ERPの保守サービスには期限が決められているため、早い段階でSAP S/4HANAへ移行する必要があります。そこで、システムの導入や移行をサポートし、諸々の課題を解決するサービスの活用がおすすめです。それが「SAP S/4HANA構想策定支援サービス」です。
「SAP S/4HANA構想策定支援サービス」は、三井情報株式会社(MKI)が提供するサービスです。同社はSAPについて、システムバージョンアップやSAP S/4HANAの対応経験、先行検証などのノウハウを持っています。その経験を活かして、現行システムでの課題などを明らかにし、SAP S/4HANAへの移行にかかる期間やコストを提示するサービスを提供していました。
しかし、まだ多くの企業においてSAP S/4HANAへの移行が進んでいないことを受け、「アセスメント」「システム化構想策定」「実行計画策定」の3ステップでSAP S/4HANAの導入をトータルサポートする本サービスの提供を開始しました。
S/4HANA移行のアプローチ
SAP S/4HANA構想策定支援サービスでは、いったいどのようにしてSAP S/4HANAへの移行を行うのでしょうか?ここでは、移行への2つのアプローチ方法を紹介します。
1つは、「システムコンバージョン方式」と呼ばれるアプローチ方法です。この方法では、現行のSAP ERPシステムの設定を、そのままSAP S/4HANAへと移行します。その後、SAP S/4HANAで利用できる新機能の活用を進めます。既存の設定を活用し、短期間かつ低コストで移行が行える点が大きなメリットです
もう1つは、「新規構築方式」と呼ばれるアプローチ方法です。その名の通り、新しくSAP S/4HANAをインストールし、一からシステム設定を行います。現行のSAP ERPからは必要なデータのみ移行しますが、基本的には一度すべて廃棄するのが特徴です。廃棄することにより、システムへの負荷を軽くします。
サービスの進め方とアウトプット
続いて「SAP S/4HANA構想策定支援サービス」の手順を見ていきましょう。大まか手順は、先ほど触れた「アセスメント」「システム化構想策定」「実行計画策定」の3ステップに分けられます。
1.アセスメント
現行システムの調査や分析に基づき、全体規模感を算出して、移行アプローチの方向性を決定します。要望に応じて、全体規模感の算出結果だけでなく、マイグレーション影響分析結果やアプリケーション方針案、インフラ方針案、ライセンス案なども提供します。アセスメントにかかる期間は、およそ2ヶ月です。
2.システム化構想策定
続いて、アセスメントの結果に基づき、各種方針およびロードマップを策定します。また方針稟議に向け、費用対効果も算出します。アセスメントで提供したアプリケーション方針案やインフラ方針案などを、方針として定め提供することも可能です。システム化構想策定にかかる期間は、およそ2ヶ月からそれ以上です。
3.実行計画策定
システム化構想策定の結果に基づき、SAP S/4HANA移行についての実行稟議に向け、プロジェクト計画を策定します。プロジェクト計画書だけでなく、PoCによるデータ移行・パフォーマンス測定結果も提出します。実行計画策定にかかる期間は、およそ2ヶ月からそれ以上です。
まとめ
SAP S/4HANA構想策定支援サービスは、三井情報株式会社がSAP S/4HANAへの移行について各種方針やプロジェクト計画を定め、移行のサポートを行うサービスです。これを活用することで、システム導入までの負担を軽減できます。SAPの導入に課題を感じている方は、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。