組織を活性化させることは、企業にとって大きな課題であるといえます。今後、組織が活性化している企業はより成長が期待でき、活性化していない企業は衰退していくことが考えられるからです。そこで本記事では、組織活性化とはどのような状態を指すのかという点から、実際に組織活性化を起こすためのモデルや、取り組み事例について解説していきます。
組織活性化とはチーム内の個人がそれぞれ主体性を持って活動できる状態
企業などにおける「組織活性化」とは、チーム内の個人がそれぞれの主体性を持って活動できる状態を指しています。たとえば組織内の部署を飛び超えて、コミュニケーションが行われる、互いに協力してプロジェクトがスムーズに進んでいるなどが、理想的な状態です。
組織活性化が注目されている背景には「人手不足への対応」「業務のIT化による細分化」が挙げられます。
現在、そして今後、企業の労働力はさらに不足していくと予想されています。パーソル総合研究所が発表した「労働市場の未来推計 2030」によれば、日本では2030年に644万人の人手不足に陥ると試算しています。
そのため企業には、人手不足へ対応し持続的な成長を実現するために、従業員のパフォーマンスを発揮できる環境づくりが求められています。
また昨今では、ITに関わらない業務はないと言っても過言ではありません。業務のIT化は生産性が上がる一方で、チャットなどの連絡がコミュニケーションの主となってしまい、直接のコミュニケーションが減ってしまうという弊害もあります。
そのため組織よりも個で働いている意識が強くなってしまい、組織としての成長につながらないことも考えられます。
こうした背景から組織活性化への取り組みが注目を集めています。
組織活性化できている職場がおさえている、4つのポイントとは?
ここでは、実際に組織活性化が行えている職場でよく見受けられる4つのポイントについて紹介します。
1.組織全体に理念やビジョンが浸透している
組織全体に理念やビジョンがきちんと浸透している状態は、組織活性化には必須といえます。組織全体とは、経営層から実際に現場で業務を行う従業員までのことです。どれほど経営層が素晴らしい理念やビジョンを掲げていたとしても、従業員が同じ方向を向いていなければ絵に描いた餅になってしまいます。
「どのような理念で業務を行っているのか」「目標達成に向けてのビジョンはどのようになっているか」など、経営層が掲げた理念やビジョンを、従業員が共感し理解している状態が理想的です。
2.組織全体の良好なモチベーションが保たれている
組織を活性化させるためには、組織全体のモチベーションも重要な要素です。たとえば後ろ向きな発言が多い職場では、前向きな意見やアイデアは出てこず、従業員も仕事に対してのモチベーションが下がってしまいます。
良好なモチベーションを発生させるためには、従業員に対して使命感を持ってもらうことが大切です。具体的には「自分が行っている仕事は、世の中で価値のあることだ」と感じてもらうことです。このような実感ができれば、自分が仕事を行っている意味や自身の存在意義を見出すことになり、良好なモチベーションにつながります。
3.組織内で円滑なコミュニケーションができ空気感が良い
組織として仕事を行っていく中で、メンバー同士のコミュニケーションは必須です。組織が活性化している企業は、総じて円滑なコミュニケーションが行えています。
昨今ではリモートワークの推進などによって、従業員が直接コミュニケーションを取る機会が少なくなってきています。そのため仕事中も孤独感を感じてしまい、協力する意識や、組織への帰属意識が生まれにくい状態です。
組織活性化を起こすためには、意識的にコミュニケーションを増やす機会を設けることが大切です。
4.再現性の高い人材育成の仕組みが育っている
前章で解説した通り、日本では今後「人手不足」が予想されています。そのため質の高い従業員の確保が、どの企業にとっても大きな課題となります。
こうした課題解決の1つが「再現性の高い人材育成の仕組み」です。具体的には、従業員が成長する土壌を整え、成長していると実感してもらう環境をつくることです。たとえば新人教育の段階で、企業理念に対する教育やコミュニケーション促進の方法などを組み込むのも1つの方法です。
従業員が成長できる環境を整えれば、主体的に動くことにつながり、組織活性化への貢献になるでしょう。
組織を活性化させるためのSDモデル5つのステップ
本章では、組織活性化を促すSDモデルと呼ばれる5つのステップについて解説していきます。それぞれのステップで、どのような取り組みを行うのか参考にしてみてください。
①自分たちのことを理解する(Search)
まずは自分たちが「どのような状態なのか」「何を考え、何を大切にしながら働いているのか」「仕事を行うことで、どのようなことを達成したい、または実現したいと考えているのか」を理解していくことから始まります。
相手を知るためには、自分自身をきちんと認識することが大切です。また自分自身を理解することは、相手への理解にもつながります。なぜなら「自分はこうだけど、相手はどうだろう」という視点が生まれるからです。そのため、まずは自分たちを理解することから始めましょう。
②メンバーを認め受け入れる(Satisfaction)
自分自身を理解したら、次に行うことは他者への理解と受け入れです。自分と完全に同じ考えや価値観を持っている人間はいないと言っても過言ではありません。そのため、他者と自分は異なることを前提にコミュニケーションを取り、相手の考えや価値観を認め受け入れましょう。
このとき、他者の考えや価値観に対して評価を行う必要はありません。相手はこのように考えているのだと理解するフェーズであることを意識しましょう。何度もコミュニケーションを行うことで、相手への理解を深めていきます。
③組織としてのビジョンを共有する(Spin)
自分と相手についての理解を深めたら、組織としてどこに向かっていくか、どのような目標を達成したいのかといったビジョンを共有していきます。ビジョンの設定は、これまで自分が考えた達成したいことや、相手が掲げた達成したいことをまとめていくことで「自分達のビジョンである」という意識が生まれます。
この段階でこれまでの相互理解などを蔑ろにしてしまうビジョンを掲げてしまっては、従業員の主体的な行動にはつながっていかないため、注意が必要です。
④ビジョンを達成するための道を描き出す(計画する)(Design)
掲げたビジョンに対して、どのような手順を踏んで達成するかを具体的に落とし込んでいきます。ビジョンを理解していたとしても「今」自分が何をすべきかを理解していないと、ビジョン達成は難しくなります。ビジョンをどれくらいの期間で達成したいのか、どのような課題があるかなどを共有し、計画を立てていくことが大切です。
またビジョンを達成するためには、計画は1つとは限りません。ビジョン達成のためのミッションや、実行するためのチーム状態などについての計画もあります。これらを落とし込むことで、具体的な道筋になっていきます。
⑤個人や組織が成長を続けられる環境作り(Developmet)
計画を立てたとしても、理想通りに進んでいくことはまれです。どれほど綿密な計画を立てたとしても、想定外の事態や芳しくない結果につながってしまうことはめずらしくありません。そのため定期的に、計画についての振り返りと現状に合わせて修正を行っていくことが大切です。
ただ業務が行えているかどうかだけではなく、きちんと個々人の成長につながっているか、ビジョンを達成する目的から逸れていないかなどさまざまな視点から見ていくことが大切です。
組織を活性化するのに実際に行われている3つの取り組み事例
本章では、組織を活性化するために行われている取り組みを3つ紹介します。どの取り組みもすぐに取り入れられるものなので、ぜひ参考にしてみてください。
他部署の上司とのナナメ面談
直属の上司ではなく、他部署の上司とコミュニケーションを取るナナメ面談を取り入れることは、組織活性化に有効です。なぜなら、直属の上司とは異なる視点からのアドバイスや気付きが出てくるからです。
ナナメ面談の時間は30分程度でも有効です。面談内容の一例を紹介しましょう。
- タスク管理や仕事の相談
- 不満解消やメンタルチェック
- キャリア開発や成長に向けたPDCA
また、話す内容が仕事に関するものでなくてもかまいません。フランクに話せる環境であれば、さらに良いでしょう。大事なことは、他部署との交流によるコミュニケーション先の増加です。仕事や人間関係で悩んだときの相談先を増やせるため、組織の活性化につながります。
業務の無駄をあぶり出すミーティング
業務の無駄をあぶり出すことは、業務効率化や目標を最短で達成するためには欠かせません。具体的には、ミーティングに参加する従業員に対して、自分の業務を棚卸ししてもらい、他の従業員との共通の業務や無駄な業務が発生していないかを確認することです。
自分の業務を確認してもらうことで、第三者の視点から「やめた方が良い業務」や「効率化できる業務」などを判断できます。大事なことは、ビジョンを達成するためにどのように効率化を目指せばいいかという視点を持つことです。
定期的にミーティングを行い、業務改善をしていくことで、ビジョンの早期達成につながっていきます。
h3:1つの業務を複数人で担当するマルチ担当
マルチ担当も組織活性化には有効です。たとえば業務Aを「メイン担当」と「サブ担当」という2人体制にすることで、業務の属人化を防ぐことにつながります。
業務を属人化すると、担当者が休んだ場合に代わりを務める人がいないため業務が止まってしまいます。
複数人で担当すれば、業務に対する視点が増え、新しいアプローチ方法やアイデアも生まれやすくなります。そのため業務の円滑な進行が期待できるでしょう。
組織活性化を手助けする制度・ツールを紹介
実際に組織を活性化するときは、制度やツールを活用することが効果的です。本章では、どのような制度やツールが効果的か解説していきます。
組織でコミュニケーションを図る場を提供する
まずはコミュニケーションを図る場をきちんと提供することが大切です。たとえば、社内懇親会や期ごとのキックオフの開催などです。大切なことは、上長から一方的に話すような会にするのではなく、従業員が考えているビジョンを発表する場とするなど工夫を施すことです。また頻繁に行うのではなく、期間を空けて定期的に行うのが良いでしょう。
昨今ではテレワークが広まっているため、対面でのコミュニケーションを取る機会が減っています。対面が難しい場合は、始業前に雑談の時間を設ける、1on1で話す時間を設けるなどの工夫を行うと良いでしょう。
感謝や感動を共有し讃える
声に出して感謝を伝えることは、組織内で信頼関係を構築することに役立ちます。実際に組織活性化が実現している企業では「サンクスカードの導入」や「ピアボーナスの導入」などを行っています。
どちらも社内コミュニケーションの入口として使われており、従業員のモチベーション向上などにも貢献しています
サンクスカードの導入
サンクスカードとは、文字通り従業員が仕事中に「ありがとう」と感じた相手に対して、名刺サイズのカードに記載して送り合う制度です。対象は部下から上司、上司から部下だけでなく、同じ部署の同僚や他部署の従業員など制限はありません。
サンクスカードの活用は、従業員間のコミュニケーション活性化とともに、風通しの良い職場環境の構築にもつながります。初めは気恥ずかしさが勝ってしまうケースもありますが、時間をかけて定着させれば大きな効果が期待できます。
ピアボーナスの導入
ピアボーナス制度とは「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を組み合わせた造語で、従業員同士が互いにボーナスを送り合う制度のことです。従来では上司が部下の取り組みを評価し、給料などの報酬につながっていました。
ピアボーナスは、従業員同士が互いに評価し合うのが従来とは異なる点であり、報酬も小額であることが特徴です。この制度はコミュニケーションの活性化に貢献することはもちろんのこと、従業員のエンゲージメント向上にも役立ちます。同僚から仕事に対しての評価を、報酬という形で可視化できるため、自信や向上心につながっていきます。
業務を効率化できるITツールを導入する
ITツールを導入することも、組織活性化の手助けになります。ITツールを導入することによるメリットは、迅速な情報共有が可能なことです。チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用すれば、同じ情報を皆と同じタイミングで知ることが可能になります。
また組織内のITツールが苦手な従業員に対して、他の従業員がサポートする環境もできれば、コミュニケーションの促進にもつながります。ITツールは導入することが目的ではなく、どのような環境をつくりたいのかという視点から考えていくと良いでしょう。
組織活性化におすすめのITツール4選
ここでは組織活性化を促すITツールを4つ紹介します。組織活性化を達成するための手段の1つとして、ぜひ自社での導入を考えてみてください。
1.電話代行サービス
電話代行サービスの利用は多くの企業で進められています。なぜ組織活性化につながるかというと、電話代行サービスには顧客から受けた電話内容をチャットやメールで抜け漏れなく報告するサービスがあるからです。つまり前章で解説したように、同じ情報を同じタイミングで受け取ることが可能になります。また電話代行サービスは、業務効率化や人手不足の解消にも貢献するため、有効活用したいサービスといえます。
2.ビジネスチャット
ビジネスチャットは、いつでもどこでも気軽にコミュニケーションを取れることが最大の強みといえるITツールです。1対1のコミュニケーションはもちろんのこと、複数人と同時にコミュニケーションを取ることもできます。
またビジネスチャットのメリットは、テキストだけではなく、写真や画像、動画、オンライン通話など多様なコミュニケーションが取れることです。有効に利用すれば、組織の活性化に大きく貢献します。
3.名刺管理ツール
名刺管理ツールも組織活性化を促すツールとして利用できます。たとえば営業をかけたい企業があった場合、すでに他部門にその企業の人とつながりがある人材がいれば、営業活動が容易になります。また企業に対しての情報収集時に、実際につながりがある人とコミュニケーションも図れます。名刺管理ツールは、社内で一元管理することで大きな効果を発揮するでしょう。
4.プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールはその名の通り、あるプロジェクトに対してのメンバー間の情報共有やタスク管理が容易に行えるツールのことです。プロジェクトに関する情報は全てツールの中に存在しています。そのため、他者の状況や聞きたいことが出てきたときなどにツール内ですぐにコミュニケーションが取れる点が有効といえるでしょう。
まとめ
組織活性化の達成は、企業が持続的に成長していくためにも重要度が高い項目です。しかし、組織活性化は一朝一夕では達成できません。ポイントをきちんとおさえることはもちろん、制度や環境を整え、ときにはツールも活用していくことで達成に近づいていきます。
まずは自社や自分の状況をきちんと捉え、ステップを踏んで進めていくことが大切です。ぜひ本記事を参考に、組織活性化の達成を目指してみてはいかがでしょうか。