業務効率化や生産性の向上などあらゆるメリットがあると考えられているスマートオフィス。本記事ではスマートオフィスとは何かという基礎知識から導入のメリット・デメリット、さらに成功へ導くポイントまで解説します。スマートオフィス化を検討されている方は内容を押さえて理解を深めてください。
スマートオフィスとは?
スマートオフィスとは、IT技術や高速ネットワーク、クラウドサービスを活用して社内のさまざまなシステムや設備、機器を連携させてIoT化を進めたオフィスのことを指します。スマートオフィス化の目的は、業務効率化や生産性の向上、また従業員の働きやすさを推進することです。
営業や会計など社内システムを連携させて業務を行いやすくすることもスマートオフィス化のひとつですが、職場環境の快適化などさらに視野を広げた取り組みがあります。例えば、これまで人の手で調節していたオフィスの空調や照明を人検知センサーで自動制御したり、社外からスマートフォンで操作したりする機能、オフィス内にフリーアドレスのスペースを設置し、かつスマートフォンから利用・予約状況が確認できるシステムなどが挙げられます。
市場規模は年々拡大傾向に
スマートオフィスは世界的に市場規模が拡大傾向にあります。IMARC Services Private Limitedが公表した「スマートオフィスの世界市場:業界動向、シェア、規模、成長、機会、予測(2022年~2027年)」によると、2021年には350億米ドルだった市場規模は、2027年には約2倍の738億米ドルに達すると予測しています。CAGR(年平均成長率)でみると、2022年から2027年の間に13.14%で成長すると見込まれています。
背景には、環境・経済の両面方から企業の電力消費量や総コストを最小限に抑える動きが、世界的に進んでいることが考えられます。それに合わせ、費用対効果に優れたよりよいソフトウェアソリューションの研究開発も加速しています。このような点から考えても、スマートオフィスは今後さらに成長していくでしょう。
スマートオフィス導入のメリット
スマートオフィス導入はさまざまなメリットをもたらします。ここでは代表的な5つを挙げます。
業務効率化
システムの連携などは、あらゆる業務を効率的に進められるだけではなくペーパーレス化や省人化にもつながり、書類の印刷や押印のためだけに出社するといった社員の負担が軽減できます。これにより、無駄な業務や作業にかかる時間を短縮でき、コア業務や必要な作業だけに集中できる環境が整います。
ABW(Activity Based Working)の実現
ABWとは、社外も含め仕事をする場所を自由に選べるワークスタイルのことです。スマートオフィス化によって社内外問わずいつでもどこでも働けるスタイルが確立でき、社員一人ひとりに合った働き方の提供が可能です。ワークライフバランスの実現や優秀な人材を取り込むための企業の魅力づくりのひとつとしても役立てられます。
固定費の削減
ペーパーレス化によって印刷費用を削減できる、また空調や照明などをIoTで適切に管理することで無駄な光熱費を減らせるなどの利点が生まれます。このほか、社員がオフィスに通勤する頻度が減ることで交通費を減らしたり、オフィスそのものを必要最低限の規模に縮小し賃料を抑えたりすることで企業活動に関わるあらゆる固定費を見直すことができると考えられます。
従業員満足度の向上
業務効率化やABWの実現は、働く環境の快適性に直結するため従業員満足度の向上に寄与します。従業員満足度が上がれば、離職・休職者を減らすだけでなく、企業の評価が上がることで優秀な人材を誘致する機会の増加にもつながるでしょう。
生産性の向上
スマートオフィス化によって部門や業務の連携が密になると、それだけ業務の効率や作業スピードが上がり生産性の向上をもたらします。また、社員の従業員満足度やモチベーションの向上・維持が実現できれば、仕事への集中力が高まるでしょう。加えて、社員がABWによって外部からの情報や知見を取り入れられるようになることで、従来のオフィス型勤務で机の上では出現しなかったアイデアが生まれ、新規事業につながるなどといった効果も期待できます。
スマートオフィス導入のデメリット
スマートオフィスの導入にはいくつかデメリットも存在します。3つの点について取り上げます。
セキュリティ面でのリスク
あらゆるものが高速ネットワーク等を通じてつながるのは便利である反面、情報漏洩や不正アクセスのリスクがあります。また、社員が社外でPCやタブレット端末を使用する際には盗難被害などにも気をつけなければなりません。これらの防ぐためには強固なセキュリティ対策に加え、社員一人ひとりのセキュリティに対する意識向上にも取り組む必要があります。
初期投資の費用がかかる
スマートオフィスは運用が進めば固定費といったランニングコストの削減が可能ですが、高速通信を実現するためのインターネット環境の整備、各種システムの連携など導入のための初期費用がかかります。想定外のコスト負担とならないためにも、予算を含めて検討していかなければなりません。
すべての従業員に歓迎されない可能性もある
スマートオフィスは業務を効率化し利便性を高めてくれますが、すべての従業員がそのシステムになじめるとは限りません。従来の方法に慣れている人も多く、デジタル化された作業はかえって時間がかかる場合もあります。一気にスマートオフィス化してしまうと、そうした従業員の反発を招いたり、現場が混乱したりする可能性もあります。
スマートオフィス導入を成功に導くポイント
スマートオフィスの導入を成功させるためのポイントをピックアップします。ポイントを押さえておけば、導入への検討事項が明確になります。
IT環境の現状把握
まず自社のIT環境の現状を把握することです。スマートオフィスは適切な通信環境があってこそ効果を発揮します。インターネット環境やセキュリティ対策は十分にそろっているのかなどを確認して現状の課題を洗い出し、その上でスマートオフィス導入に必要な設備は何かを決定します。
スマートオフィスはすべての設備、機器を一新しなければならないわけではなく、既存デバイスをどのように活用できるかを検討することも大切です。同時にファックスや固定電話といった既存のアナログツールを見直し、不要な部分はカットしていくと固定費を削減できます。
スモールスタート
スマートオフィス化を全社で一気に進めてしまうと、初期投資が莫大となる可能性があります。そのため優先順位をつけて、段階的に進めていくことが望ましいです。
優先順位は企業によってそれぞれ異なります。例えば、テレワークを推し進めている企業であれば仮想デスクトップを用いたテレワークシステムや社内の書類やデータのクラウド化、ペーパーレス・はんこレス化に向けた環境の整備を優先的に進める必要があるでしょう。これらもさまざまなツールを導入し業務方法を刷新してしまうのではなく、導入と検証を繰り返しながら社員が快適に働ける環境を模索していくことが重要です。
まとめ
スマートオフィスとはIoT化が進み業務効率化や職場環境の快適性が向上したオフィスです。生産性の向上などといったメリットがあるものの、導入には一定の初期費用が必要です。自社のIT環境や課題を洗い出した上で、優先的にスマートオフィス化したいことからスモールスタートで進めた方がよいでしょう。