Azure OpenAIは、Microsoft Azureの厳しいセキュリティ基準のもとで運用されており、閉域網での利用にも対応する高い安全性を提供します。本記事では、Azure OpenAIの導入を検討している企業担当者に向けて、ChatGPTとの違いや具体的な活用方法を解説します。
Azure OpenAIの特徴
Azure OpenAI Serviceは、MicrosoftのAzureプラットフォーム上でOpenAIを利用できるサービスです。大規模言語モデルのGPTに加え、テキストから画像を生成するDALL-E（ダリ）や音声認識モデルのWhisperなど、OpenAIによって開発された生成AIモデルを活用できます。
Microsoft Azureの厳しいセキュリティ環境下で運用されていることに加え、Service Level Agreements（SLA）も整備されているので、安心してビジネスユースできます。クラウド上でAPIを通じて簡単にモデルへアクセスできるため、Azure上で提供されている他のサービスと組み合わせて活用することも可能です。
たとえば、Azure Cognitive ServicesやAzure Machine Learningと連携することで、より高度なAIソリューションを構築できます。
ChatGPTとどう違う? Azure OpenAIのセキュリティレベル・提供方式・モデルについて
ChatGPTは、OpenAIが開発した会話型AIアプリケーションです。テキスト生成能力が極めて高く、ユーザーとの自然な対話の実現が可能です。この技術の背後には、GPT（Generative Pre-trained Transformer）という大規模言語モデルが存在します。
Azure OpenAIのテキスト生成AIもこのGPTの使用により、ChatGPTと同等の高い精度を達成していますが、セキュリティ面に注目してみると、Azure OpenAIと通常のChatGPTでは以下のような違いがあります。
- セキュリティレベル
- 2.サービスの提供方式
1. セキュリティレベル
Azure OpenAIは、通常のChatGPTよりも高いセキュリティレベルを実現しているサービスです。通常のChatGPTはOpenAI社のセキュリティポリシーに準拠していますが、Azure OpenAIは業界標準を上回るMicrosoft Azureのセキュリティ基準に基づいて運用されているため、より高い安全性が確保されています。
また、ChatGPTはインターネットに接続して利用しますが、Azure OpenAIはインターネット接続に加えて閉域網でも利用可能です。そのため、より高いセキュリティ環境での運用が実現できます。
また、入力データの取り扱いにも異なる点があります。通常のChatGPTをWebブラウザで利用した場合、設定によっては入力されたデータがAIモデルの学習に使われる可能性があるため注意が必要です。APIを活用したり、設定を変更してオプトアウトをしたりすれば学習に利用される心配は無くなるものの、情報漏えいを懸念するビジネスユースでの利用には不安が残るかもしれません。
一方でAzure OpenAIでは、入力データをAIモデルの学習データとして使用しないことが明記されているため、企業の機密データを取り扱う際も安心して活用できます。
2. サービスの提供方式
通常、ChatGPTはOpenAIのサイト上で直接チャットインターフェースを使ってやり取りを行います。API経由で利用することも可能ですが、その際はAPIキーによる認証が必要となるため、各ユーザーにキーを配布したり管理したりするための手間を要します。
Azure OpenAI Serviceを使用する際は、Azureのインフラを通じてAPI経由で接続します。APIキーだけでなく、Microsoft Entra IDの認証にも対応しているため、これを活用すれば従業員はシングルサインオンでサービスにアクセスでき、セキュリティの面でも安心です。
生成AIのモデルに違いがあった時期も
2024年5月現在、通常のChatGPTとAzure OpenAIでは、GPT-4などの同じ生成AIモデルが利用可能です。以前は異なるモデルが使われることもありましたが、最新のアップデートにより統一されました。
GPT-4oは、OpenAIが開発した最新のAIモデルです。従来のモデルと比較して、精度と応答速度が改善されています。
Azure OpenAIの活用方法｜セキュアなAIヘルプデスクの構築に
Azure OpenAIの活用は、企業の業務効率を大きく向上させます。セキュリティに配慮したAIヘルプデスクの構築などが、その具体的な例です。Azure OpenAIの具体的な構築方法と、導入のメリットをあらかじめ理解しておきましょう。
構築方法：Azure OpenAIとAzure AI Searchを連携させる
Azure OpenAIを活用すれば、高精度なAIヘルプデスクを構築できます。たとえば、Azure AI Searchと連携させることで、社内マニュアルやドキュメントをもとにした回答を提供するAIヘルプデスクが構築可能です。この方法では、既存の資料を読み込ませるだけで、メンテナンスフリーのAIヘルプデスクを実現できます。
活用によるメリット：回答の正確性を確認できる
生成AIには、誤った情報を生成する「ハルシネーション」という問題があります。この課題を解消するには、回答の正確性や根拠の明示が重要です。Azure OpenAIとAzure AI Searchを連携させたAIヘルプデスクは、回答の根拠となる資料を「出典」として示してくれます。
このような機能によって、ユーザーは提示された情報の信頼性を確認できるため、生成AIの課題である「正確性の疑義」や「ファクトチェック」の問題を解決できます。
実際の使用例：Azure OpenAIとのチャットでの会話
使用例として、製品資料を読み込ませた状態でのAzure OpenAIの活用を紹介します。たとえば、PSC社の「Coo Kai」の製品資料を読み込ませると、ユーザーが「Coo Kai」の概要を質問した際に、AIはその概要を「出典」と共に提供します。
AIを活用したユーザーは、出典先を確認することにより、正確な情報を入手して回答が適切であるかどうかをチェックできます。このように、Azure OpenAIとAzure AI Searchを組み合わせると、情報の正確性と信頼性を担保しながらAIの活用が可能です。
セキュリティ面にも配慮しつつ、働き方改革や人手不足など、企業が抱える多様な課題に対応できます。
まとめ
Azure OpenAIの活用により、社内ナレッジに基づいた高精度な回答を提供するAIヘルプデスクを構築できます。優れた安全性を持つMicrosoft Azureで、メンテナンス不要の便利なチャットボットを利用できることは、AIを活用したい企業にとって大きな魅力です。
PSC社は、DX支援をメインに「Cloud」「Smart Work」「Customer Success」の3つの領域で多岐にわたるソリューションを提供しています。
「Cloud」ではクラウドネイティブなサービス、「Smart Work」では働き方改革支援や生産性向上に関わるサービスとエンドポイントソリューション、「Customer Success」ではITサポートを中心としたサービスを展開し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援します。
