企業にとって、売上目標の設定や数値の把握が大切であることはいうまでもありませんが、それと同じくらい売上予測も重要です。高精度な売上予測ができれば、組織の利益最大化につながり、持続的な発展を目指せます。本記事では、売上予測の重要性や分析方法、おすすめのツールなどについて解説します。
売上予測とは
売上予測とは、特定期間における売上高や案件数、CV率などさまざまなデータを分析して、売上を予測することです。企業にとって、売上予測は今後の経営戦略を組み立てるうえで重要な指標となるため、客観的なデータに基づいた正確な予測が求められます。
精度の低い売上予測は、企業を窮地に立たせかねません。たとえば、十分な売上が見込めると予測し、金融機関から多額の融資を受けたとしましょう。予測通りの売上であれば問題ありませんが、予測の精度が低く、思い描いた通りの売上を得られなかった場合、多額の負債を抱えるおそれがあります。
また、精度の低い予測に基づき大量に商品を生産してしまう、必要以上の人材を採用してしまう、といった事態も考えられます。このように、精度の低い売上予測は企業を窮地に立たせるおそれがあることを理解しておきましょう。
売上予測と売上目標の違い
売上予測と売上目標は似ているようで異なります。売上予測は、客観的なデータに基づき導き出した指標です。一方、売上目標はデータから導き出すものでなく、企業が達成を目指して設定する数値です。
売上目標を設定するときもデータを使用しますが、それほど厳密なデータは用いません。あまりにも現実とかけ離れた数値設定にならないよう、あくまで目安としてデータを使用します。たとえば、「前年度の売上が1,000万円だったから1,200万円を目標にしよう」といったケースが多いでしょう。
データのみに基づく予測と違い、「希望」が含まれることが大きな違いです。「こうなればいいな」「なるように頑張ろう」といった要素が売上目標には含まれています。
なぜ売上予測をするのか?
売上予測をする理由は、健全な経営を続けるためです。また、適切な生産量や在庫を管理するためにも売上予測が必要です。さらに、資金の管理や資金調達の計画を立てるためにも行われます。
経営状態を健全にするため
企業にとって、資金の余りすぎや不足は好ましい状況とはいえません。資金に余裕があるのなら、新商品やサービスの開発、優秀な人材の獲得などに投入し、不足しているのなら資金調達の計画を立てる必要があります。
経営が健全な状態とは、資金の余りすぎや不足が生じていない状況です。限りあるリソースが不足しないよううまくコントロールしつつ、利益拡大に向けて資金を適切に使用できている状態を目指す必要があります。
上記のような状態にするには、精度の高い売上予測が欠かせません。正確に売上の予測ができれば、資金の余りすぎや不足を回避でき、健全な経営につながります。
的確に生産量や在庫を管理するため
一般的に、生産量や在庫数は生産・販売計画に基づき決定します。生産・販売計画がいい加減では、生産量や在庫数の余剰や不足を招くおそれがあるため、慎重に取り組まなくてはなりません。生産・販売計画を練るとき判断材料にするものこそ、売上予測なのです。
つまり、生産量や在庫数を決定づけるのが、売上予測といっても過言ではありません。予測の精度が低いと、在庫の不足を招くおそれがあるほか、減産しなくてはならなくなるケースもあります。適切な生産量・在庫を確保するには、高精度な予測が求められるのです。
今後の資金繰りを予測するため
資金繰りの悪化は企業を窮地に立たせ、経営を圧迫します。資金繰りに問題が生じないよう、将来的な売上予測を行ったうえで返済計画を立てなくてはなりません。
また、資金繰りの予測も必要です。予測により、資金が足りなくなる可能性があるのなら、金融期間から融資を受けることも検討しなくてはなりません。予測をしていなければ、気づいたときには資金がショート寸前、といったことになりかねないため注意が必要です。
資金繰り予測には、資金繰り表を作成し現金収支を分類・集計することから始めましょう。
売上予測・分析の方法
売上予測と分析に取り組むには、必要なデータを収集しなくてはなりません。分析の手法はいくつかありますが、一般的には過去の売上利益や営業パイプラインなどを用います。また近年では、高精度な予測が可能なAI分析を活用する企業も増えてきました。
必要なデータを収集する
売上予測に必要なデータは、業種や扱う製品、サービスなどにより異なります。必要データの例としては、商品・組織ごとの一定期間における売上高や、受注している案件数、CV率などが挙げられます。
サブスクリプションサービスを扱う企業なら、サービスの更新率や解約率、平均契約期間なども該当します。金融業であれば、世界情勢や経済の動向なども加味しなければならないでしょう。
データの収集で重要なのは、信頼性の高いデータをより多く集めることです。信頼できるデータに基づいた分析を行えば、精度の高い予測を実現できます。
過去の売上利益から分析する
過去の売上データを用いた予測も可能で、「昨年の売上利益×成長率」で算出できます。なお、成長率は年間平均成長率を指します。
数値を当てはめて計算してみましょう。仮に2年前の売上が500,000円、1年前が800,000円だった場合、成長率は60%となり「800,000×1.6=1,280,000円(新規売上予測)」です。
より高精度な予測を行うには、さらに複数の要素を組み合わせます。過去4~5年の売上利益や市場の動向なども考慮しつつ取り組めば、高精度な予測ができるでしょう。
営業パイプラインから分析する
営業パイプラインとは、案件獲得から受注にいたるまでのプロセスを指します。パイプライン管理を導入し、各プロセスを細分化・可視化した情報を活用すれば、精度の高い売上予測が可能です。
過去の実績から導き出した成約率と、営業パイプラインの合計金額を掛け合わせて算出します。たとえば、パイプラインの合計金額が1,000,000円、成約率が50%であれば、売上は500,000円と予測できます。
なお、これは相当簡略化した計算であるため、そこまで高精度な予測はできません。より精度の高い予測を行うには、見込み客が自社商品やサービスに興味を抱くまでの時間やリードタイム、契約期間といった要素も用いた複雑な計算が必要です。
AIを活用して分析する
少しでも正確な予測をするには、分析に関する知識やデータを扱う専門性、統計解析スキルなどが必要です。自社に専門人材がいれば問題ありませんが、そうでない場合には外部からの採用も検討しなければならないでしょう。
専門人材を採用せずとも、AI技術を搭載した予測ツールを活用すれば、精度の高い分析が可能です。製品によってはシンプルな操作性を採用したものもあり、コーディング不要で売上予測モデルの構築が可能なものもあります。
近年では、手軽に導入できるクラウドタイプの製品も増えています。クラウドツールであればオンラインで申し込みでき、導入から運用開始までの時間も大幅に短縮できるでしょう。
売上予測・分析におすすめのツール「Microsoft Dynamics 365」
「Microsoft Dynamics 365」はCRMやSFA、ERPなど幅広いビジネスの領域をカバーできるツールです。業務効率化や生産性の向上が期待できるツールとして人気があり、Office製品との連携や組織に合わせたカスタマイズも可能です。
ツールの導入により、営業実績や顧客情報などをリアルタイムに共有できます。また、目標達成に向けてチームが取り組んでいることや売上予算を把握でき、特定期間における売上予測を行う機能も利用できます。
まとめ
組織の経営を健全化し、適切な生産量や在庫を確保するためには売上予測が必要です。ただし、予測の精度が低いと、ビジネスに活かすどころか組織を窮地に立たせるおそれがあるため要注意です。専門人材がいない場合は、高度な予測を実現できるツールの導入を検討してみるとよいでしょう。